参院本会議で31日に可決、成立した「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」は、東京電力福島第1原発事故を契機に定められた「60年運転」ルールを基本に、原子力規制委員会の審査などに伴う停止期間を除外することで、事実上「60年超」運転を可能にした。
しかし、電力会社側のミスで審査が中断し、長期化するケースも多く、「長引くほど運転期間が延びていくのは問題だ」(規制委の石渡明委員)との声も上がる。
政府が示した方針では、規制委の審査や行政指導などによる停止期間は、運転期間から除外する一方、「事業者の不適切な行為」によるものは含めないとしている。ただ、具体的にどのような行為が該当するかは不透明だ。
日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査では2020年、敷地内の地質情報を記した資料の書き換えが発覚。2年以上審査が中断した上、昨年の再開後にも資料の誤りが多数判明し、再び中断した。建設中の電源開発大間原発(青森県)でも昨年、地震動の計算に用いるデータ入力で初歩的なミスがあり、審査が止まっている。
規制委は2月、「60年超」運転を容認する規制の対応方針を4対1の賛成多数で決定。反対した石渡委員は「事業者側の責任で、そういうこと(中断)が起きても、後で運転期間を延ばしてもいいという話。そういう制度になるのであれば、審査をしている人間として耐えられない」と批判した。
時事通信