
岸田文雄首相は21日、栃木県足利市を訪れ、障害者支援施設の利用者が作業に従事するワイナリー(ワイン醸造所)を視察した。6月の記者会見で打ち出した「夏の全国行脚」の第1弾で、障害者や事業者らと車座対話に臨んだ。内閣支持率が落ち込む中、各地を回って「聞く力」を改めてアピールし、政権を立て直したい考えだ。
首相は施設の越知真智子統括管理者(67)から説明を受けながら、ブドウ畑での作業の様子を眺めた。障害者や保護者、就労を支援する事業者と意見交換し、「大変なのは(障害について)理解されないこと」「障害があっても力を発揮できる場がある」といった声に耳を傾けた。
この後、首相は記者団に「障害をお持ちの皆さんが働く喜びを実感しながら、力を合わせて地域に貢献し、世界のワイン通をうならせるほどのワインを生み出している」と評価。「多様性が尊重される社会、全ての方が力を発揮できる社会を目指していかなければならない」と話し、障害者支援や、福祉と雇用の連携強化に努める考えを示した。
足利市は自民党の茂木敏充幹事長の選挙区。首相は視察に先立ち、首相官邸で茂木氏と会い、施設の説明を受けた。
首相は8月下旬までに富山、鳥取、島根、福岡各県などに足を運ぶ予定。記者団に「子ども・子育て、デジタル、認知症関係の現場を訪問したい」と述べた。全国行脚とは別に大雨被害の被災地を視察する意向も示した。
マイナンバーを巡るトラブル続出で政権に対する国民の評価は厳しさを増している。今秋の衆院解散・総選挙の可能性も取り沙汰される中、内閣支持率が再び上向くかが焦点。首相は「これまでも『聞く力』を強調して政策に取り組んできた。(今年10月の首相就任)2年の節目を前にして、引き続き政権発足の原点の姿勢を大事にしていく」と強調した。
時事通信