
防衛装備品の輸出ルール緩和に関する自民、公明両党の実務者協議が23日、再開した。政府は殺傷能力のある武器について、輸出を一部容認する見解を提示。国際共同開発した装備品の第三国への移転も可能にすべきだとの立場を示した。政府見解を踏まえ、与党は防衛装備移転三原則の運用指針見直しの議論を進める。
政府は、運用指針が輸出を認める「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の「5類型」に該当する目的であれば、武器を搭載した装備品の輸出を認める方向性を示した。掃海活動で機雷処理に使用する機関砲を搭載した掃海艇などが想定される。自己防護のための搭載も可能とした。
5類型に武器の位置付けを示す規定はなく、輸出の実例もない。このため、政府はこれまで立場を明確にしてこなかった。
共同開発品の移転は、英国、イタリアとの次期戦闘機開発が念頭にある。技術の高度化で装備品の単独開発は困難で、日本だけが他国への輸出を認めない場合、共同開発の枠組みに悪影響が出ると指摘。検討課題として、輸出先の紛争助長や転売を防ぐ適正管理の在り方を挙げた。
部品そのものに殺傷能力がなければ武器とは位置付けないとの考え方も示した。今後退役する航空自衛隊のF15戦闘機のエンジン輸出が念頭にあるとみられる。
与党協議は7月上旬、論点整理を公表して中断。共同開発品の輸出容認で一致した一方、5類型規定は、自民が撤廃を、公明が項目追加にとどめるよう求め、両論併記された。秋再開の予定だったが、岸田文雄首相が議論の加速を指示し、前倒しとなった。
首相が急ぐ背景には、次期戦闘機の開発体制を調整する上で、英伊と足並みをそろえたいとの狙いがある。秋の一連の国際会議に向けて、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援強化を示したいとの思惑もあるとみられる。
◇政府見解のポイント
一、殺傷武器、「5類型」なら輸出可能
一、自己防護の武器搭載も可能
一、国際共同開発品の第三国移転容認を
一、部品は武器と位置付けず
時事通信