ラマッラー:著しく不人気なパレスチナ大統領マフムード・アッバース氏は、イスラエルがガザのハマスと戦争を行う中、占領下のヨルダン川西岸地区の路上で高まる怒りに直面している。
同氏はパレスチナの人々の募る絶望に無関心だと見なされており、10月7日のハマスの攻撃に対するイスラエルの猛烈な応戦により、人々の不満を高めるばかりだ。
先週のガザの病院へのロケット弾攻撃が新たな怒りを巻き起こした後、数百人のパレスチナ人が路上で異例のデモを行い、「アッバースは辞めろ!」と叫び、その後治安部隊によって解散させられた。
アッバース氏は、18年間にわたってパレスチナ自治政府を率いてきたが、ヨルダン川西岸地区に対する同氏の権力は限られたものでしかなく、2007年にハマスによって武力で追放された自治政府はガザに対しては、なんの権力も有していない。
世界の舞台では、アッバース氏は1993年のオスロ合意の実現されない約束にしがみついてきた。
パレスチナ自治政府は、パレスチナ独立国家に向けた最初の一歩となるはずだったが、交渉は10年以上にわたって行き詰まっている。
共に1967年から占領され、連続したパレスチナ領土となるはずだったが分断されたヨルダン川西岸地区と併合された東エルサレムにおける、イスラエルの入植地と軍事支配の急拡大に対して、アッバース氏は無力だった。
イスラエルの入植者たちによるパレスチナ市民への暴力と、イスラエル軍とパレスチナ武装組織の間の衝突は増加してきた。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相のもとで、12月にイスラエル史上最極右の内閣が発足した後、状況は悪化の一途をたどってきた。
「アッバース氏は、国際社会がパレスチナ人に国家を与えるため、イスラエルに占領地域からの撤退を強いると信じて、国際社会に賭けた」と、ラマッラーを拠点とするシンクタンクであるビサン研究開発センターのウバイ・アル・アボウディ理事長は述べた。
「しかしながら、国際社会はパレスチナ人の血が流れることや彼らの苦難についてほとんど関心がないことを示してきており、それゆえ、民衆の怒りが高まった」と、アボウディ氏は語った。
アッバース氏は、1948年のイスラエル独立以降で最悪の攻撃となった10月7日のハマスの襲撃以来、傍観の姿勢を保っている。
政治的立場に関係なく、多くのパレスチナ人がソーシャルメディア上でハマスへの支持を表明している。
アッバース氏は先週、パレスチナの公式通信社が報じた「ハマスの政策と行動はパレスチナの人々を代表するものではない」というコメントで人々の怒りを買った。この発言は撤回されている。
現在の戦争以前にも、アッバース氏の人気はかなり低く、平和的な交渉への支持は低下していた。
9月にパレスチナ政策調査研究所(Palestinian Center for Policy and Survey Research)が発表した世論調査によると、パレスチナ人の78パーセントは、アッバース氏の退任を望んでいた。
およそ58パーセントがイスラエルによる占領を終わらせるための「武装闘争」を支持するとしており、交渉による解決への支持は20パーセント、「平和的な抵抗」への支持は24パーセントとなっていた。
アッバース氏に反対する人々は、「パレスチナ自治政府は、不作為や安全保障協力によって、ますますイスラエルの政策に同化してきている」と感じていると、パレスチナ自治区を専門とする政治学者のXavier Guignard氏は述べた。
「アッバース氏はガザで起こっていたことに対応できなかった」という実感があったと、パリを拠点とするNoria Researchに所属するGuignard氏は語った。
欧州外交評議会のアナリストであるヒュー・ロバット氏は、パレスチナ自治政府が世論を無視し続けるならば、「武装抵抗を支持するパレスチナの民衆感情が強固となる中で、パレスチナ自治政府は一掃される危険がある」と述べた。
「米国とイスラエルがパレスチナ自治政府に、ハマスやヨルダン川西岸地区の他の武装組織への弾圧を強めるよう求め、それが民衆からの評価をさらに損なうことになるため」アッバース氏はさらに弱体化するだろうと、同氏は述べている。
ガザのパレスチナ人を支援して20日にラマッラーのデモに参加したオマル・カティブ氏は、パレスチナ自治政府に対して手厳しい評価を下した。「抵抗組織がガザでイスラエルに立ち向かい、私たちはここで自治政府に立ち向かっている。自治政府は、ヨルダン川西岸地区で私たちを抑圧するための占領者の手中の道具でしかないからだ」と、同氏は語った。
AFP