ジュニーエ(レバノン):
レバノンは新型コロナウイルスによるロックダウン下にあるが、レバノンのトラップ射撃手であるライ・バッシルは今夏のオリンピックへ向けて練習することをやめなかった。——彼女の地下ガレージには2台の車が駐車されているが、その中で彼女は練習を行っている。
パンデミック下においても体力を保とうと決心し、32歳の彼女は、ベイルート北部にある彼女のアパートの地下駐車場を射撃場に見立てた。——1発も射撃することはない。
レバノンは、冬期休暇中における人の集まりに端を発した、新型コロナウイルスの急激な感染拡大をうけて、1月中旬に全面的なロックダウンに突入した。
バッシル自身もCovid-19に感染したが、終日の外出禁止令にもかかわらず、練習に戻ってきた。
「射撃クラブは閉鎖に追い込まれていた…私はガレージで練習する他なかったの」、彼女は述べた。
「身体的、精神的、そして技術的にも良いコンディションを保たなくてはならない」。
バッシルは現時点で東京大会への出場権をもつ唯一のレバノン人であり、オリンピックメダル獲得への期待は高い。——こうした快挙は、1980年のモスクワ大会での、グレコローマンスタイルレスリングにおける銅メダル獲得以来、果たされていない。
「オリンピックメダルを獲得するということは、単なる私の夢ではなくて、私の国の夢でもある」、と3度目のオリンピックに臨む彼女は言った。
リオ大会では、彼女は14位に終わった。
ジュニーエ付近にある500平方メートル(5,400平方フィート)のガレージの中で、バッシルはライフルを薄灰色の壁に向けるが、宙を舞うクレーをイメージするだけであった。
彼女は駐車された黒い車と赤色のモペットの近くに片脚で立ち、彼女のいとこで臨時のトレーナーであるナヒの指示に従って、ライフルを左右に向けた。
別の訓練では、彼は彼女の背中を叩くことで彼女を揺さぶり、彼女のバランス感覚を養った。
2月22日から3月5日にカイロで行われるショットガン・ワールドカップに参加する前、最近では彼女は練習を続けるためにイタリアを訪問した。
Covid-19がなくとも、レバノンにとっては厳しい年であった。
レバノンは高騰し続ける物価に対処するのに苦慮していた。レバノンは何十年にもわたり最悪の経済危機に見舞われていたのである。
そして、8月のベイルート港での大爆発により、200人以上の人々が亡くなり、首都は荒廃した。
しかし、バッシルは自信をなくさない。
「こうした困難は私のやる気を削がない」、とバレーボール選手を父にもつ彼女は言った。
「私は大変なスポーツ一家に育ったから、困難に立ち向かう用意はできているわ」。
AFP