
国連:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、30日の国連緊急会合で、「即時の人道的停戦は、数百万人もの生死に関わる重大な問題となっている」と訴え、イスラエルに対して、パレスチナ人への「集団的懲罰」と民間人の強制移動を非難した。
ラザリーニ氏は食料などの支援物資を求めるパレスチナ人が国連の倉庫で略奪行為を行い、今後、市民のさらなる秩序崩壊があれば、「ガザ最大の国連機関が活動を続けることが不可能ではないにしても、極めて困難になるだろう」と警告した。
国連の児童機関ユニセフの事務局長であり、人道支援担当高官でもあるラザリーニ氏が安全保障理事会で行った報告で、ハマスによる10月7日のイスラエルへの奇襲攻撃から23日経った、ガザでの壊滅的な人道状況や、ガザを支配する過激派組織の「殲滅」を目的とした現在進行中の報復の軍事行動について、悲惨な状況を説明した。
ガザ保健省の最新統計によれば、8300人以上が死亡、そのうち66%が女性と子供であり、数万人が負傷していると、国連の人道事務所が発表した。
ユニセフ事務局長キャサリン・ラッセル氏によると、そのうち子供の死亡者が3,400人以上、負傷者が6,300人以上含まれているという。「ガザでは毎日420人以上の子供が死亡または負傷している計算になり、私たち一人ひとりを根底から揺さぶるような人数」と語った。
ラザリーニ氏は、「2019年以降、世界中の紛争地域で殺される子供の年間死亡者数を上回る人数」と指摘し、次のように強調した。「これは、『巻き添えによる犠牲』とはいえない」
安保理会合の発言者の多くが、1400人以上を殺害したハマスによる10月7日のイスラエルへの奇襲攻撃を非難し、ハマスがガザ地区に連れて行った人質約230人の解放を求めた。しかし同時に、ほとんどすべての発言者が、イスラエルは国際人道法の下で、一般市民、病院や学校などのインフラを含む生活必需の物資や機関を守る義務があることを強調し、イスラエルがガザ地区への食料、水、燃料、医薬品を止め、数日にわたり通信網を遮断していることを批判した。
ラザリーニ氏は、支援物資を運ぶ「わずかな台数のトラック」が、ここ数日エジプトからラファ検問所を通ってガザに入ることができたが、「ガザに閉じ込められている200万人以上の人々が必要としている量に比べれば、取るに足らない」と語った。
また、「前例のない人道的ニーズに見合った、意味のある支援物資の量を流通させる政治意志がない限り、ガザへの支援を可能にするシステムはいずれ失敗に期するだろう」とも述べた。
同氏は、ガザにはどこにも安全な場所はないと述べ、基本的サービスが崩壊し、医薬品、食料、水、燃料が尽きようとしており、ガザの通りには「汚水があふれ始めていて、まもなく大規模な健康被害を引き起こすだろう」と警告した。
ユニセフは国連のために水と衛生の問題を監督しており、ラッセル氏は「清潔な水と安全な衛生環境がなく、大惨事の瀬戸際にある」と警告した。
リンダ・トーマス=グリーンフィールド米国連大使は、10月7日のハマスによる攻撃と現在進行中の紛争に対する4つの決議案を否決した、分断状態の安全保障理事会に結束を促し、「ガザの人道危機は、日を追うごとにますます悲惨になっている」と述べた。
トーマス=グリーンフィールド氏はすべての罪のない市民が保護されなければならないと強調し、安保理が「人質全員の即時かつ無条件の解放を求め、ガザ地区のパレスチナ市民の莫大な人道的ニーズに対処し、テロリズムから自国を守るイスラエルの自衛権を確認し、国際人道法を尊重せねばならないことをすべての関係者に喚起する」必要があると述べた。同氏は、バイデン米大統領が、人質の解放、支援の受け入れ、民間人の安全な移動のために人道的な一時停戦を求めていることを繰り返した。
「つまり、ハマスはパレスチナ人を人間の盾として利用してはならない。人間の盾というのは想像を絶する残虐行為であり、戦争法に違反している」と同氏は述べ、「イスラエルは民間人への被害を避けるために、あらゆる予防措置を講じなければならない」と釘をさした。
米国ではパレスチナ人の死者数増加に対する懸念が高まる兆候があり、同氏は安保理会合において、バイデン大統領は29日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して「イスラエルには国民をテロから守る権利と責務があるが、同時に国際人道法に則った形で実行せねばならない」と繰り返したことを述べた。
「ハマスが民間人の居住区域内で隠れて活動しているという事実は、イスラエルにとってさらなる負担となっているが、だからといって、テロリストと無実の民間人を区別する責任が軽減されるわけではない」と同氏は強調した。
15カ国からなる安全保障理事会で、米国による拒否権発動が1回、ロシアと中国による拒否権発動が1回、決議採択に必要な最低9カ国の「賛成」を得られなかったが2回の計4回、決議案がすべて否決された後の27日、アラブ諸国は拒否権のない国連総会に出席した。
193カ国からなる国連総会は、賛成120カ国、反対14カ国、棄権45カ国で、敵対行為の停止につながる人道的休戦を求める決議案を採択した。現在、安保理15カ国から選出された10カ国は再び、否決されない決議案の交渉を行っているところだ。安保理決議には法的拘束力がある一方で、総会決議には法的拘束力はないが、国際世論の重要なバロメーターとなる。
AP