
ドバイ:1ヶ月前にイスラエルとパレスチナ過激派組織ハマスの間で戦争が始まって以降、戦場となっているガザ地区には不可欠な医療物資がほんの少しずつしか供給されておらず、病院、診療所、遺体安置所は対応不可能になっている。
人道アクセスの困難にもかかわらず、サウジアラビア、UAE、ヨルダン、エジプトの各国政府は数百万ドルの支援を確約し、援助供給を交渉し、民間人負傷者の治療のための医療施設を設置している。
ガザ出身のパレスチナ系米国人著述家・ジャーナリストで、パレスチナ・クロニクル紙の編集者を務めるラムジー・バロード氏はアラブニュースに対し次のように語る。「アラブ諸国とその国民の方では、少なくとも人道支援を通してパレスチナの人々を助けたいという善意は欠けていない」
「次の段階は、今も続くイスラエルによるジェノサイドの犠牲者のもとにその支援が確実に届くようにすることだ」
9日、西側諸国、アラブ諸国、国連、非政府組織の関係者がパリで会議を開き、海上人道回廊案や水上野戦病院案を含め、ガザ地区の民間人に援助を提供する方法について話し合った。
パリで開かれたこの会議にはヨルダン、エジプト、湾岸諸国の代表も出席したが、イスラエル当局は参加しなかった。
サウジアラビアは11日、アラブ諸国の首脳らを迎えてアラブ連盟の緊急会議を開催する。続く12日には57ヶ国で構成されるイスラム協力機構(OIC)の会議を開く。後者にはイランのイブラヒム・ライシ大統領が出席する予定となっている。
バロード氏は次のように語る。「影響力のあるアラブ諸国が国連での政治的主張を通して、また米国を通して直接、イスラエルに圧力をかけない限り、援助の提供も、将来のガザ建設も許可されないだろう」
10月7日、ハマスはイスラエル南部に対し越境攻撃を行って1400人を殺害し、少なくとも240人を拉致した。イスラエルはそれ以降、地球上で最も人口が密集した場所の一つであるガザ地区に対し激しい攻撃を行っている。
その結果、この過密で貧しい細長い土地に閉じ込められている人々のうち、少なくとも1万500人がイスラエルによる空爆で死亡し、家を破壊された数千人が学校や病院への避難を余儀なくされている。
エジプトのラファ検問所経由でガザ地区に搬入することが許可されている人道支援物資は少量に過ぎず、同地区からの脱出を許可される人も僅かだ。国連のアントニオ・グテーレス事務総長はこの状況を受け、同地区は「子供の墓場」だと述べた。
実際、ハマスが運営する保健省によると、紛争開始以降ガザ地区では約4000人の子供が死亡している。
バロード氏は語る。「明らかな課題は、イスラエルがラファ国境検問所経由の人道支援物資供給を許可していないこと、そして国連事務総長が要請しているカルム・アブ・サレム(カレム・シャローム)検問所の開通を拒否していることだ」
「イスラエルはラファ検問所のパレスチナ側を繰り返し空爆している。移動も援助も許さないというメッセージを送るためだ。実際7日には、ガザ地区への緊急支援物資を運んでいた赤十字の人道支援車列が空爆された」
国連によると、現在の戦闘が始まる前から、イスラエルによる17年におよぶガザ地区封鎖によって同地区の経済は大きく損なわれ、住民の約80%が外部からの人道援助に依存している。
サウジアラビアは募金ポータル「サヘム」を通してパレスチナ民間人を支援している。サヘムには開始後5日間で56万9000人以上から1億800万ドルを超える寄付があった。
イスラエルによる攻撃で苦しんでいるパレスチナ人を支援するために、サルマン国王人道援助救援センター(KSrelief)との提携のもと、「ガザのパレスチナ人のための公的救援キャンペーン」が特別に開始された。
サウジ通信が公開した声明によると、KSreliefの統括責任者であるアブドゥラー・アル・ラビーア氏はこのキャンペーンについて、「様々な危機の中で兄弟たるパレスチナ人に寄り添ってきたサウジアラビアの歴史的役割」を反映するものだと述べた。
KSreliefのチームは今週、オサマ・ヌガリ駐エジプト・サウジ大使と共に、ラファ国境検問所経由でのシェルター資材、食料、医療物資の輸送を加速する方法を見出すための話し合いを行った。
また10月15日には、ナーイフ・ビン・バンダル・アル・スダイリ駐ヨルダン・サウジ大使が、サウジアラビアから国連近東パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への年間200万ドルの拠出を発表した。
この資金支援により、UNRWAは食料、医薬品、人道支援などの不可欠な救援サービスを包囲下のパレスチナの人々に提供し続けることが可能になる。
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は、ガザ地区の民間人に対する攻撃は「憎むべき」ものだとしたうえで、地域的なエスカレーションに発展した場合の「危険な影響」を警告した。
複数のサウジ政府関係者が即時停戦を呼びかけている。
解決が見えないまま爆撃が続く中、ガザ地区の医療システムは急速に悪化しており、何千人もの患者が不可欠な治療を受けられずにいる。
パレスチナ赤新月社は11月6日、アル・クッズ病院の燃料が48時間以内に底を突くと警告を発した。一方、アル・アウダ病院の関係者は、同病院は深刻な燃料不足により閉鎖の瀬戸際にあると訴えた。
ガザ地区最大の病院であるアル・シファ病院では、先日のイスラエルによる空爆で施設の太陽光発電パネルが破壊された。既に崩壊寸前だった同病院は現在、深刻な燃料不足に直面しながら、搬送され続ける負傷者を受け入れている。
バロード氏は次のように指摘する。「パレスチナ保健省による最新の声明によると、ガザ地区の主要な病院の半数と医療施設の60%が既に閉鎖している」
「まだ機能している病院も、最低限必要な量よりずっと少ない設備、燃料、医療用品で運営している」
「過去のイスラエルのガザ地区に対する戦争では、いや、パレスチナの他の場所でも、これほどの規模の危機が発生したことはなかった。この状況は悲惨以上だ」
10月7日以降、ガザ地区の病院35ヶ所のうち少なくとも16ヶ所は操業していないままである。さらに、一次医療診療所72ヶ所のうち51ヶ所が操業を停止しており、同地区の医療システムが直面する危機的な困難を物語っている。
バロード氏は、ガザ地区南部で医師をしている同氏の姉(または妹)から、医師らは誰を治療し誰を無視するかという極めて難しい選択を迫られているという話を聞いた。
彼女は同氏にこう話したという。「手術は病院の床で行われている。子供たちは麻酔なしで体の一部を切断されている」
「パレスチナ人の集団的な苦しみは言葉では言い表せない。即死する人々はまだ幸運です」
UAEの国営通信WAMによると、同国のシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領はこのような悲惨な状況を受け、人道支援作戦「ギャラント・ナイト3」の一環として新しい野戦病院を設営する計画を発表した。
6日、150床の野戦病院のための設備と物資を積んだ貨物機5機がUAEの首都アブダビを出発し、エジプトのシナイ半島のアリーシュに向かった。
この野生病院には、一般外科、整形外科、小児科、婦人科、麻酔科、集中治療室が設置される。大人と子供の両方を対象としており、内科、歯科、精神科、家庭医学の診療も提供される。
UAEはそれに加え、自国の病院にガザ地区からパレスチナの子供約1000人とその家族を治療のために受け入れる計画を発表した。
エジプト赤新月社、市民と開発行動のための国民同盟、ハヤ・カリマ基金、そして世界保健機関(WHO)やUNRWAを含む様々な国際プログラムが関わる協力的な取り組みにより、これまでに約7950トンの支援物資が届けられた。
トルコ、UAE、カタール、ヨルダン、チュニジアからの支援物資を積んだ航空便がアリーシュに着陸している。一方、イラクはガザ地区の病院に1000万リットルの石油を寄付したと伝えられている。
ヨルダンのアブドッラー2世国王は6日、即時の支援を提供するために同国空軍がガザ地区の野戦病院に「緊急医療援助物資」を投下したことを明らかにした。
同国王はXで次のように述べた。「ガザの戦争で負傷した兄弟姉妹を援助するのは我々の義務だ。パレスチナの同胞のためなら我々はいつでも助けになる」
約1000台の援助トラックが2回に分けてガザ地区に入る準備をしている。
しかし、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、これまでにガザ地区に搬入されている支援物資の量は、戦闘開始前の1日の平均必要量の僅か4%であり、食料、水、医薬品、燃料の備蓄が枯渇する中で必要とされる量のほんの一部に過ぎない。
バロード氏は語る。「人道的な即時停戦が極めて重要であることは言うまでもない」
「停戦になれば、より多くの支援物資を安全に届けることができるようになる。医療施設は状況を把握できるし、亡くなった人々はある程度の尊厳と共に埋葬されることができるし、民間防衛隊は瓦礫の下に閉じ込められた遺体の少なくとも一部を回収できる」
「本当はそうできなければならないのだが、もしアラブ人たちがパレスチナを他の方法で助けることができないのであれば、彼らにできる最低限のことは、イスラエルに対し人道停戦に応じるよう、政治力や経済力や影響力を使って圧力をかけることだ」