テルアビブ:米国は18日、壊滅的な状況にあるガザ地区への人道支援強化を訴えながらも、イスラエルによるハマスに対する軍事作戦の支持を継続すると明言した。
3カ月目に突入した凄惨なガザ戦争において激しい戦闘が続くなか、ハマスが運営する保健省の報告によると、ガザ市付近のジャバリアキャンプへの攻撃でさらに110人が殺害された。
ニューヨークで行われた国連安全保障理事会では、包囲を受けるガザ地区の停戦要請決議が再び行われる予定となっていた。これまでの決議は、イスラエルにとって重要な同盟国である米国が拒否権を発動してきたために採択には至っていない。
だが国連の外交関係筋がAFP通信に語ったところによると、文書の文言を巡って交渉が続いているため、決議は19日に延期となった。
イスラエルを訪問した米国のロイド・オースティン国防長官は、「ガザ地区で家を追われた約200万人に対する人道支援を強化し、支援の分配を改善しなければならない」と述べた。
オースティン氏は米国政府が「イスラエルの最高の友」であり、「重要な弾薬、戦術車両、防空システムの提供を続ける」ことを再確認した。
またオースティン氏は、自身のイスラエル訪問はこの戦争の「予定や期日を決定する」ことを目的としたものではないと補足した。
イランの支援を受けているイエメンのフーシ派反乱軍がハマスとの連帯を示す目的で紅海の国際貨物船を攻撃するなど、戦争拡大の懸念が高まる中東地域をオースティン氏は視察中だ。
フーシ派による攻撃は国際貿易に混乱をもたらしており、大手企業が相次いでスエズ運河へ繋がる重要ルートの利用を取りやめ、最新ではエネルギー大手のBP社がこの流れに続くなか、原油価格の高騰を招いている。
「紅海では、航行の自由という根本原則を守るため、我々が多国籍の海洋任務部隊を率いています」オースティン氏はそう述べ、フーシ派による攻撃の支援を止めるようイランに警告した。
今回のガザ戦争は、10月7日にイスラム教の統治組織ハマスが前代未聞の攻撃を実行し、イスラエルで約1140人を殺害したことが発端となった。犠牲者の大半は民間人で、ハマスはさらに250人を拉致した。この統計はイスラエルの公式発表を基に、AFP通信が裏付けを行ったものである。
ガザ保健省の発表によると、この攻撃を受けたイスラエル軍の報復により、1万9400人以上が殺害された。犠牲者の大半は女性および子どもで、同地区の膨大な地域が瓦礫の山と化している。
連日の爆撃、食料や水の不足、大規模な移動の強制など、240万人のガザ市民の窮状に対し国際社会からの懸念は高まっている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イスラエルが「民間人の飢餓を戦争の手段として利用している」と批難した。
「イスラエル軍は意図的に水、食料、燃料の供給を遮断し、人道支援を故意に妨げ、農作地を破壊しています」ニューヨークに拠点を置く同団体はそう述べた。
イスラエル外務省の報道官は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチには、ガザ地区で起きていることを語るに値する倫理的根拠がありません」と述べ、同団体が「イスラエル人の苦しみや人権」を無視してきたと批難した。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は以前に、「人々が飢餓、あるいは飢餓・病気・免疫力の低下の混合によって命を落とすことになっても驚きはありません」と述べている。
イスラエルはエジプトとのラファ検問所に加えてケレム・シャロム検問所経由でのガザ地区への支援供給を承認しており、AFP通信の記者によると、18日には数十台のトラックがケレム・シャロム検問所経由でガザ地区に入ったという。
18日、米国国務省のマシュー・ミラー報道官は報道陣に対し、国連が主導する支援に加え、戦争開始以降初めて商用トラックがガザ地区に入ったと述べた。
「ガザ地区のパレスチナの人々の生活改善に向けた重要な一歩」だとミラー氏は述べた。
ラファ検問所には、ようやく安全に国境を越えることが認められるという希望を胸に、多くの家族が集まっている。
「ここで1カ月ほど過ごしています」サファ・ファシ・ハマドさんはそう話す。「私たちは死んでしまいます。食料はとても少なく、守ってくれるものもありません」
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は17日、ハマスの壊滅と人質の解放を改めて宣言し、ガザ地区が二度と「テロの中心地」にならないようにすると述べた。
イスラエル軍によると、10月下旬の地上作戦開始以来、ガザ地区における同軍の犠牲者は129人となっている。
イスラエルは、ハマスが民間人に紛れ込み、病院、学校、モスク、その他民間インフラの地下トンネルに身を隠していることを批難してきた。
同軍は17日、広大なハマスのトンネル網の一部に関する報告書を公開した。このトンネル網は車両が通れるほどの広さで、線路、送電線、排水路、通信ネットワークが設置されているという。
レバノンのハマス政府関係者はイスラエルの発見は重要なことではないとし、トンネルは既にその役目を果たしたと述べた。
イスラエルに対しては、戦争の規模縮小、一時中断、停止のいずれかを実行するよう世界からの圧力が高まっている。
ガザ地区に捕らわれていると見られる残り129人の人質の家族からも、そのような声が上がっている。ハマスから逃亡した人質3人をイスラエル軍が誤って射殺したことを受け、人質家族の怒りと恐怖は高まっている。
報道によると、この人質3人は白旗を振り、残飯で白いシートにヘブライ語でメッセージを書いたが射殺されたという。
18日、テルアビブ中心部でイスラエル人が抗議を行い、残りの人質解放に向けた速やかな行動を訴えた。
ハマスの軍部は、人質3人のものとする映像を公開した。この映像には、所在地不明の場所で髭を生やした男性3人が椅子に座り、解放を求める様子が映っている。
先月の1週間にわたる停戦および人質と囚人の交換を仲介したカタールは、「新たな人道的停戦を実現させるため、外交努力が行われている」と発表した。
米国のニュースプラットフォームAxiosは18日、イスラエル諜報特務庁のデイビッド・バルネア長官、米国中央情報局のウィリアム・バーンズ長官、カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相がワルシャワで会談を行ったと報じた。
戦争が続くなか、とりわけ病院への懸念が高まっている。病院の大半は機能を停止しており、いくつかの病院では大規模な戦闘が起きている。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、「戦争が続き衛生に関するニーズが高まるなか、ガザ地区全土の病院をただちに復旧させることが極めて重要だ」と声明を発表した。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、WHOはガザ地区北部のカマル・アドワン病院の「事実上の崩壊に愕然としている」と述べた。
同病院の外、ぬかるんだ地面には戦車やブルドーザーの轍が残り、息子を捜すアブ・モハメドさんは立ったまま涙を流した。
「どうやってあの子を探せばいいのかわかりません」モハメドさんは瓦礫の山を指差してそう言った。
AFP