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エジプト、イスラエルの避難勧告によるパレスチナ難民の自国領内への大量流入を危惧

イスラエル軍がガザ地区北部とガザシティの100万人以上の住民に対して、今後見込まれる同軍による地上侵攻に先立って、南部に避難するよう前例の無い避難勧告を発した後、ガザ地区北部から南部に退避するパレスチナ人。2023年10月13日。(AP通信)
イスラエル軍がガザ地区北部とガザシティの100万人以上の住民に対して、今後見込まれる同軍による地上侵攻に先立って、南部に避難するよう前例の無い避難勧告を発した後、ガザ地区北部から南部に退避するパレスチナ人。2023年10月13日。(AP通信)
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14 Oct 2023 07:10:28 GMT9
14 Oct 2023 07:10:28 GMT9

カイロ:イスラエルが、10月13日、ガザ地区の人口の半数の同地区南部への避難を勧告したことを受け、エジプトは難民が厳重に要塞化された国境を越えて自国領内に大量流入することを危惧している。

ハマスのイスラエルへの残忍な攻撃がガザ地区に対する大規模な報復を引き起こして以来、エジプト首脳部はパレスチ側への国境越えによる人道支援物資の移送を懸命に交渉してきた。エジプト当局者によると、この取り組みに対してイスラエルからの反応は皆無だという。

アントニー・ブリンケン米国国務長官は、カイロを今週末に訪問する予定で、エジプト政府の関係者が援助物資の移送について協議するものと見られている。

イスラエルはガザ地区を封鎖し、230万人の住民への食糧や水、医薬品、燃料の供給を停止し、都市の一部を砲撃により完全に破壊した。そのため、エジプトのラファ検問所がガザ地区への唯一の出入口となっている。しかし、エジプト外務省によると、国境のパレスチナ側へのイスラエル軍の度々の空爆により、ラファ検問所は運営を停止せざるを得なくなり、エジプト側には援助物資を積載したトラックが待機したままになっているという。

エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、10月12日の演説で、ラファ検問所を通じてのガザ地区へのアクセス容認を求めた。エルシーシ大統領は、また、多数のパレスチナ人の受け入れについては反対の意向を表明した。

「この脅威は、この(パレスチナの)大義の一掃を意味しており、重大なものです」と、エルシーシ大統領はカイロの陸軍大学の卒業式で述べた。「国民が毅然とし、自国の土地に在り続けることが重要なのです」 エルシーシ大統領は、また、エジプトが既に約900万人の難民を受け入れていることを指摘した。今年、既に経済的苦境に立っていたエジプトに、30万人のスーダン人が自国での戦争から退避してきたため、エジプト国内の難民人口は急増した。

10月13日、エジプト外務省は、さらに一歩踏み込み、避難勧告を国際法の「重大な違反」と公に批難した。

中東研究所の上級研究員であるハーレド・ジェンディ氏は、エジプトの最大の懸念は、数十万人もの難民が永続的な現実となってしまうことなのだと語った。「パレスチナからの難民が帰国するという保障はあり得るのでしょうか?」と、ジェンディ氏は指摘した。

イスラエル建国をめぐる1948年の戦争により近隣諸国に退避したり追放されたりしたパレスチナ人らが、その後、帰国を許されていないことが、パレスチナ人とアラブ諸国はにとって忘れられない経験となっている。これは、長引き機能停止となったパレスチナの和平プロセスの行き詰まりの主要な原因の1つとなっている。

ブリンケン米国国務長官と共にヨルダンからカタールへ移動中の米国国務省高官は、民間人が人道支援を受けられる安全地帯をガザ地区内に設置することを、イスラエルや国連機関、赤十字国際委員会と協議していると語った。援助がイスラエル側から移送されるのか、エジプト側からとなるのかについては明らかではない。

同米国国務省高官は、すでに状勢が不安定なシナイ半島への影響や経済的負担を勘案すると、エジプトへ自由に国境を越えて入国することを望む者はほぼ皆無で、すでに難民化しているパレスチナ人を2重の難民として受け入れることをエジプト側も望んでいないと述べた。米国がエジプトに対して期待している点は、2重国籍を持つパレスチナ人が希望した場合にラファ検問所経由で出国できるようにすることだという。同高官は、匿名を条件として、現在進んでいる外交的または私的な話し合いについて語った。

エジプト政府当局者らは、1948年から1967年の中東戦争の間、エジプトが統治していたガザ地区のパレスチナ人について、イスラエルがエジプトに責任を負わせようとしているのではないかと長い間懸念し続けてきた。エジプトは、ハマスが実効支配を開始して以来、イスラエルと共にガザ地区を封鎖し、物資のガザ地区への移送とパレスチナ人のガザ地区からのエジプト入国を厳しく管理している。

イスラエルによる避難勧告は、パレスチナ人らにガザ南部への移動を促しており、地上攻撃の見込みが高まっている。イスラエル軍の広報担当者は、戦争が終結すれば帰還は許可されることになるだろうと述べた。しかし、ガザ地区南部では砲撃が継続しており、多数の人々が避難した場合、エジプト国境への圧力が高まることが予想される。

イスラエルは、2007年以来ガザ地区を実効支配してきたハマスの鎮圧以降の長期的な計画を詳述していない。もし仮に避難民の帰還が認められた場合でも、そうした人々の住居やガザ地区の経済がどうなるのかについては不明である。

エジプトの治安当局の高官は、AP通信に対して、エジプトはガザ地区からの国境侵犯を防止するために「前例の無い措置」を講じたと語った。同高官によると、国境には、数千人に及ぶ治安部隊員が配置されているという。

2008年、武装勢力ハマスがエジプトとの国境フェンスを爆破し、数十万人がシナイ地域に流入した。エジプトの国営日刊紙アルアハラムは、エジプト政府当局が、最近数日中に、ハマスの指導者に対して同様の侵入を繰り返さないよう警告したと報じた。

エジプト治安当局の同高官は、エジプト政府当局者らは、イスラエルやハマス、米国、欧州諸国と「24時間態勢」でコミュニケーションを取り続け、停戦やラファ検問所経由の援助物資輸送、ガザ地区内に「安全地帯」を作ることなどの提案を行っていると述べた。同高官によると、イスラエル側からの反応はこれまでのところ無いという。報道機関への情報提供を許可されていないため、同高官は匿名を条件に語った。

イスラエル外務省は、停戦や人道支援関連でのエジプト側との接触は無いが、そうした接触は治安当局者間で頻繁に行われ得ると語った。

エジプトはイスラエルと平和条約を締結し、安全保障面でも緊密な協力関係にあり、ハマスとも接触している。また、エジプトは、過去に、イスラエルとハマスの間の紛争において、停戦仲介を支援した。

欧州連合(EU)の首席外交官であるジョセフ・ボレル氏は、10月12日、ラファ検問所経由で国際援助を移送するというエジプトの提案を支持した。エジプトは、関係諸国や援助団体に対して、シナイ地域北部、ラファ検問所近傍のエルアリーシュ空港に援助物資を送付するよう呼びかけている。ヨルダンとトルコは既に援助物資を送付している。エジプト赤新月社を含むエジプト国内の援助団体も援助物資や寄付金を募り始めた。

ハマスの襲撃に対する報復として、イスラエルは、10月14日、ガザ地区の包囲を開始した。武装勢力ハマスは、イスラエル南部に侵入し数百人の民間人と兵士を虐殺しており、約150人を人質として拘束している。双方の死者数は、合計で3,000人以上に達している。

AP

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