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ガザ戦争で地域の数百万人が貧困に陥いる可能性について国連が警鐘

11月初旬に発表された別の国連の分析によると、ヨルダン川西岸地域とガザ地区のGDPは、戦争開始から最初の1か月で4%縮小し、40万人以上が貧困に陥ったという。ロイター通信
11月初旬に発表された別の国連の分析によると、ヨルダン川西岸地域とガザ地区のGDPは、戦争開始から最初の1か月で4%縮小し、40万人以上が貧困に陥ったという。ロイター通信
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26 Dec 2023 02:12:52 GMT9
26 Dec 2023 02:12:52 GMT9

レベッカ・アン・プロクター

ドバイ:国連主導で行われた評価によると、この戦争の影響が地域全体に波及し、パレスチナとイスラエルの近隣諸国で23万人以上が貧困に陥る可能性がある。

国連開発計画(UNDP)と国連西アジア経済社会委員会が実施した調査によると、アラブ地域の国々、特にイスラエルとパレスチナの周囲で「炎の輪」を形成している国々は、ガザ地区で続く戦争の影響で深刻な経済低迷に直面している。

「アラブ諸国地域におけるガザ危機の近隣諸国に対する社会経済的影響の予測(Expected socio-economic impacts of the Gaza Crisis on neighboring countries in the Arab states region)」と題されたこの報告書では、エジプト、ヨルダン、レバノンが戦争の影響で経済が少なくとも2~3年後退する可能性があると述べられている。 

この分析では、2003年のイラク侵攻、2008年から2009年のガザ地区における戦争、2011年から続いているシリア危機など、この地域における過去の紛争から学んだ教訓に基づき、地域に波及する影響について、複数の可能性を検証している。

これらすべての紛争は、石油価格の変動、公的債務への圧力、難民の流入、観光や貿易への影響などをもたらしてきた。

このような影響は現時点ではそれほど波及していないかもしれないが、監視すべきさまざまなリスク要因が存在するとUNDPの報告書では述べられている。

「イスラエル・ハマス戦争の影響は、紛争の長さと深さによって決まるだろう。さらに、より広い地域へと波及した際には、他の当事者を巻き込んで国際的な影響を招き、グローバルサプライチェーンに打撃を与えるだろう」と、元レバノン経済貿易大臣で、経済・ビジネス顧問コンサルティング会社Nasser Saidi & Associatesの創業者であるナセル・サイディ氏は、11月末にアラブニュースに語った。

世界銀行によると、この戦争でガザ地区の経済はほぼ停滞し、労働者の約85%が職を失っているという。

ワシントンに本拠を置く開発組織は、この紛争の経済的影響に関する最近の分析で、パレスチナ自治区の生産能力はわずか16パーセントまで落ち込んでおり、「深刻な不況」に陥っていると伝えた。

この調査によると、ガザ地区におけるイスラエル・ハマス戦争が、国内総生産の損失という点で、近隣諸国のエジプト、ヨルダン、レバノンに及ぼす経済コストは、今年少なくとも103億ドルに達し、23万人以上が貧困に陥る可能性がある。

UNDPの報告書では、紛争がさらに6か月続いた場合、この額は2倍になる可能性があると伝えている。

「今回の危機は、すでに脆弱な地域情勢に爆弾を投じた…何が起こるのか、事態はどうなるのかという恐怖で幻滅感が支配した」と、この調査を主導し、国連事務次長補兼UNDPアラブ地域局長を務めるアブドラ・アル・ダルダリ氏はロイター通信に語った。

シリア政府で経済担当大臣を務めたアル・ダルダリ氏は、これほど短期間で、ガザ地区がこれだけ破壊されたことは、第二次世界大戦以降例がないと指摘した。

「1か月の戦闘で全住宅の45~50パーセントが失われるとは…このような事態は見たことがない…破壊レベルと時間の関係は異様だ」と同氏はロイター通信に語った。

11月初旬に発表された別の国連の分析によると、ヨルダン川西岸地域とガザ地区のGDPは、戦争開始から最初の1か月で4%縮小し、40万人以上が貧困に陥ったという。これはシリアやウクライナにおける紛争やこれまでのイスラエルとハマスの間の戦争では見られなかった経済的影響だ。

アル・ダルダリ氏は11月の報告書発表記者会見で、年末までにパレスチナ人の国内総生産(GDP)の12%が失われ、「巨額かつ前例のない」損失となるだろうと述べた。

同氏はさらに、これと比較して、シリア経済は内戦のピークに1か月当たりGDPの1%を失い、ウクライナではGDPの30%が失われるまでに1年半の戦闘を要し、これは月平均で約1.6%に相当すると話した。

この戦争は、エジプト、レバノン、ヨルダンがすでに高失業率、財政的圧力、悪影響を受けた投資の流れ、低成長による深刻かつ積み重なる苦境に直面しているところで勃発した。 

これら国々は、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復に苦しむ真っ只中におり、特にレバノンは最悪レベルの経済危機と2020年8月4日のベイルート爆発事故の余波により、悲惨な状況から抜け出せないでいる。

今月初めのアラブニュースとのインタビューで、大企業アル・ハブトゥール・グループの会長は、レバノン経済の将来をめぐる懸念から、レバノンから完全に撤退する用意があることを認めた。

ハラフ・アル・ハブトゥール氏は、同グループがレバノンに対して行った直接・間接投資15億ドルの価値は、景気低迷により現在ゼロに近づいていると語った。

同国はすでに進行中の金融危機と深刻な政情不安に陥っており、国境での紛争は経済をさらに不安定にする恐れがある。 

ヨルダンとエジプトでは、すでに戦争の影響を受けている分野のひとつが観光産業となっており、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の時期を彷彿とさせる低迷が見られている。

ヨルダンでは観光産業がGDPの10%を占めているが、戦争が始まってから、ホテルや文化ツアーはあっという間にキャンセルが相次ぐようになった。

エジプトでは、旅行業界のGDP寄与度は2019年の8.5%に対し、2022年は7.7%となっており、依然としてパンデミック前の数字を下回っている。

今回の戦争でこの分野はさらなる打撃を受けており、タバ、ヌウェイバ、ダハブ、シャルム・エル・シェイクなど、ガザ地区と国境を接するシナイ半島の人気観光地への旅行の予約が多数キャンセルされている。

ベイルートを拠点とするレバノンのある実業家は、この地域全体にとって未来は悲惨な見通しのままだと、匿名を条件にアラブニュースに語った。

「私たちは長い間、ギリギリのところに立っていた」とこの実業家は話し、「現在の戦争、あるいは国内での戦争の拡大は、状況を悪化させるだけだ。私たちは過去4年間、崩壊状態の中で暮らしてきた。そして、それに慣れてしまった。金融部門も政府も存在せず、創業まもないスタートアップ企業には希望などない」と付け加えた。

この実業家はさらに、「イスラエルがヒズボラと戦い、戦争の範囲が広がれば、イスラエルにとっての経済的代償はさらに悪化するだろう。私たちはすでに経済的、社会的絶望の中で生きている」と語った。

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