
ベイルート:レバノン南部の戦線でイスラエルとヒズボラとの間で続いている戦闘に前例のない展開があった。イスラエル軍は16日、「特殊部隊がレバノン南部に侵入し、アイタ・アル・シャーブ村の地雷を除去した」と発表した。
現在、ガザ地区ではイスラエルの軍事行動が始まって101日経ったが、紛争の著しい激化を意味することになりそうなこの件について、過激派組織ヒズボラは直ちに否定した。ヒズボラは「国境地帯に部隊が配置されており、いかなる試みにも対抗することができる」と述べた。
国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の関係者は、「レバノン国境を越境してイスラエル人が侵入したという報告は受けておらず、現在この件を調査している」と述べた。
地元メディアの国境地域からの報道によると、「イスラエル軍兵士3人が、レバノンとイスラエルを隔てる鉄条網を破り、レバノン領内に侵入しようとしたが、ヒズボラのメンバーに見つかり阻止されたため、引き上げた」という。
一方、イスラエルはクファルケラの町の上空から2度目となるビラを投下した。「レバノン南部の住民」に向けて、次のように語りかけた。「テロ組織のヒズボラが、この地域からミサイルを発射している。このようなテロ行為は、厳しい報復を受けることになるだろう。自身の安全のために、近くで行われているテロ行為には加担してはならない」
その地域からまだ避難していない住民の中には、SNS上でこのビラを一蹴する人もいれば、別の場所への避難を決めた人もいる。これまでに7万5000人以上が避難を強いられており、国境沿いの戦闘に巻き込まれるのを恐れて、レバノン南部の奥まった村や町から退避している。
16日、イスラエル軍による空爆は国境地帯でさらに激しくなった。フラ、ワディ・サルーキ、ワディ・フジェール、ラブ・タラティーンとタイベ間の道路、アイタ・アル・シャーブ周辺一帯を標的にした空爆が20回以上あり、建物が揺れ、住民の間で恐怖が広がった。
さらに、イスラエル軍はハマメスのムートランの丘(Moutran Hill in Hamames)、ワディ・アル・バヤド、メイズ・アル・ジャバルを標的に砲撃した。また伝えられたところによると、メルカバ戦車がクファルケラの町を白リン弾で砲撃したという。国境の町アッバシヤでは、戦車の攻撃を受けた家屋が炎に包まれた。
羊飼いのマフムード・ヤコブさんとその妹は、イスラエル軍がフラ村と周辺一帯を襲撃したときに行方不明で心配されていた。しかし数時間後、ヤコブさんは再び姿を現すと、妹と「山の下の洞窟に避難していた」というメッセージをSNSに投稿した。
16日の朝、イスラエル軍はレバノンからドローン攻撃があったとし、アッパーガリラヤのイスラエル入植地8カ所で警報のサイレンが鳴り響いた。その日の午後、国境近くの入植地、ラモット・ナフタリでもサイレンが鳴った。
イスラエル軍によると、「今回の衝突開始以来、ミサイルやドローンを発射しているレバノン南部のヒズボラの150部隊を標的にしている」という。
イスラエル公共放送協会は、「レバノン南部のワディ・サルーキでイスラエル軍による大規模な攻撃」があり、「数十の標的が一度に攻撃された」と報じた。
ヒズボラは、「エヴィン・メナヘム入植地の東にいるイスラエル兵の一団をミサイルで攻撃した」と発表した。
レバノンのアブダラ・ボウ・ハビブ暫定外務大臣はステファニー・マッコラム駐レバノン・カナダ大使との会談の中で、レバノン政府当局が先日、国連に書簡を送り、同国南部の国境地帯を安定させるための措置を講じ、本格的な構想作りに着手すると伝えたことを明らかにした。
「我が国は、地域の平和と安全を守り、中東において紛争のさらなる激化を防ぐために、関与する各国がこの取り組みを支持することを期待している」と同外相は述べた。
約1週間前に送付された書簡には、次のように記されていた。「この我々の地域で中途半端な解決策を模索すべきではありません。東エルサレムを首都とする独立したパレスチナ国家の建設を支持する国際決議の完全かつ包括的な履行による平和のチャンスをお与えください」
同書簡は、国連安全保障理事会に対し、安保理決議第1701号の完全な履行と国際的な保証を確保するよう求めた。この決議は、2006年にイスラエルとヒズボラとの間でおこった紛争解決を目的として、同年に安保理によって採択された。
同書簡はまた、「レバノン国家がUNIFILの協力を得て、国軍を強化してリタニ川南部への展開を強化することで、レバノン全領土に国の権限を拡大し、レバノン政府が承認しない武器が一掃されるようにする」取り組みへの支援を国連に強く要請した。