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ヒズボラ 米国の提案を拒否も戦争拡大回避に向け外交交渉には依然前向き

「ヒズボラは耳を傾ける用意がある」と、ヒズボラの考えに詳しいレバノン高官は述べるとともに、ヒズボラは交渉のベテランが提示したアイデアを検討していると強調。(ロイター)
「ヒズボラは耳を傾ける用意がある」と、ヒズボラの考えに詳しいレバノン高官は述べるとともに、ヒズボラは交渉のベテランが提示したアイデアを検討していると強調。(ロイター)
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19 Jan 2024 12:01:42 GMT9
19 Jan 2024 12:01:42 GMT9
  • レバノンの調停者、ヒズボラに米国の考えを伝える
  • 米特使がイスラエルとレバノンを訪問、沈静化を目指す

ベイルート:イランが支援するヒズボラは、隣国イスラエルに対する報復攻撃を沈静化させるために戦闘員を国境から退却させるなどといった米国の最初の案を拒否したが、破滅的な戦争を避けるための米国との外交交渉には依然前向きである、とレバノン当局者は述べた。

米国のアモス・ホッホシュタイン特使は、ガザ紛争に端を発した衝突がより広範な地域で大規模にエスカレートする瀬戸際にあるため、イスラエルとレバノンの国境の安全を回復するための外交的働きかけを主導している。

イランと同盟を結ぶイエメンのフーシ派による紅海での海上輸送への攻撃、それに対するアメリカの攻撃や、その他中東地域における戦闘も、そうした取り組みの緊急性を高めている。

「ヒズボラは耳を傾ける用意がある」と、ヒズボラの考えに詳しいレバノン政府高官は語る一方、ヒズボラは、交渉のベテランであるホッホシュタイン氏が先週ベイルートを訪問した際に提示した案を非現実的と見ていると強調した。

ヒズボラの立場は、ガザの完全な停戦が実現するまではイスラエルにロケット弾を撃ち込むというものだ。ただ、ヒズボラがホッホシュタイン氏の提案を拒否したという報道は今のところない。

米国の提案を拒否し、ガザ支援のためロケット弾を斉射したにもかかわらず、ヒズボラが外交的接触に前向きなのは、1月2日にイスラエルがベイルートを攻撃してハマスのリーダーを殺害した後でさえ、ヒズボラがより大規模な戦争を避けたいと考えていることの表れだ、とレバノン政府高官および安全保障筋は語った。

イスラエルも戦争を避けたいとしているが、双方は必要なら戦う用意があると述べている。また、イスラエルは、国境地帯の安全を回復する合意が成立しなければ、より攻撃的な対応を行うと警告している。

このような緊張の高まりは、当地域の紛争に重大な新局面をもたらす可能性がある。

ワシントンにテロ組織の烙印を押されたヒズボラは、会談に直接関与していない、と3人のレバノン政府高官と欧州の外交官は語った。そのため、ホッホシュタイン氏の案はレバノンの仲介者によって伝えられたという。ロイターは本記事執筆にあたり、レバノン、米国、イスラエル、欧州の11人の高官に取材を行った。

先週、イスラエルがガザでの作戦強度を下げ、それに合わせ国境での紛争も縮小させるという案が浮上した、と3人のレバノン情報筋と米国政府高官は語った。

レバノン政府高官3人のうちの2人によれば、ヒズボラには、戦闘員を国境から7キロ(4マイル)移動させるという提案も伝えられたという。この場合、2006年の国連決議で規定されたリタニ川までの30キロ(19マイル)の撤退というイスラエルの公式な要求よりもはるかに近い位置に戦闘員を残留させることになる。

レバノン政府高官と外交官によれば、ヒズボラはどちらの案も非現実的だとして退けているという。ヒズボラは長い間、武器の放棄や戦闘員の撤退を拒否してきた。戦闘員の多くは国境地帯の出身で、平時には社会に溶け込んでいる。

イスラエル首相府は、本記事のためのロイターの問い合わせに対し、「外交協議報告」についてのコメントを拒否した。ヒズボラとレバノン政府の報道官は、詳細なコメント依頼に対し、直ちに返答しなかった。

ホワイトハウスはロイターの報道についてのコメントを拒否した。

ただ、ヒズボラは、ガザ紛争が終結すれば、レバノンによる国境の紛争地域をめぐる仲介交渉を受け入れる可能性を示唆していると、3人のレバノン当局者は語った。これは今月、ヒズボラのリーダーが演説で示唆したものである。

「ガザでの戦争が終われば、我々は脅威をチャンスに変えるためにレバノンの交渉担当者を支援する用意がある」と、ヒズボラのある高官は匿名を条件にロイターに語った。ただ、具体的な提案については言及しなかった。

ヒズボラは、11月下旬の7日間のガザ停戦中には攻撃を中止していた。

イスラエル政府のエイロン・レヴィ報道官は、水曜日のメディア・ブリーフィングでロイターの質問に答え、ヒズボラを国境から遠ざけるための「外交的チャンスはまだある」と述べた。

ホッホシュタイン氏はレバノンとイスラエル間の調停に成功した実績を持つ。2022年には、ヒズボラの水面下での承認を得て、レバノンとイスラエルが争っていた海上境界線を画定する合意を仲介した。

ヒズボラが閣僚を務めるレバノンのナジーブ・ミカティ首相は、国境地域の長期的な安定に関する協議を行う用意があると述べた。

ホッホシュタイン氏は、1月11日のベイルート訪問でミカティ国民議会議長兼陸軍司令官と会見した。同氏はその際、米国、イスラエル、レバノンのすべてが外交的解決を望んでいると公言した。

ホッホシュタイン氏は、レバノンとイスラエルが確固たる安全保障のもとで共存できるような解決策を「国境の両側の我々全員が」見いだせるよう期待している、と記者団に語った。

イランと連携する「抵抗の枢軸」の急先鋒であるヒズボラは、パレスチナの盟友ハマスが10月7日にイスラエルを急襲した際、予想外の戦いに巻き込まれ、紅海にも波及した紛争の契機となった。紅海では船舶を攻撃するイエメンのフーシ派を米国が標的にしている。

ヒズボラは、自らの軍事行動によってイスラエル軍を疲弊させ、数万人ものイスラエル人を家から追い出すことによってパレスチナ人を助けたと述べている。

犠牲者はヒズボラ戦闘員約140人と少なくとも25人のレバノン市民、さらには少なくとも9人のイスラエル軍兵士と民間人が死亡した。ここ数週間、その激しさは増している。

1982年にイランの革命防衛隊によって創設されたヒズボラは、イランが支援するグループの中で最も強力で影響力のある組織である。ヒズボラはイランの広範な外交政策において大きな役割を果たしている。

ヒズボラの考えに詳しい情報筋によれば、ヒズボラは長年の金融・政治危機ですでに不安定化したレバノンにとって全面戦争が破滅的な結果になることを知っているという。また、レバノンにおけるヒズボラの膨大な兵器は、長い間議論の的となってきた。専門家によれば、その中には10万発以上のロケット弾が含まれているという。

ベイルートを拠点とするシンクタンク、カーネギー中東センターのモハナド・ハゲ・アリ副所長は、「イランと連携する戦闘員が当地域のどこか別の場所で米国の攻撃を招き、イランがシリアやイラクで攻撃を開始したとしても、イランはヒズボラとレバノンが大規模な破壊を受けるのを避けたいだろう。その一番の理由は、過去に復興費用を負担しなければならなかったからだ」と述べる。

イランの外相は17日、ガザ紛争が終結すれば、イスラエルやその権益に対する「抵抗の枢軸」の攻撃は止まるだろうと述べた。

ハゲ・アリ氏は、ヒズボラが全面的な衝突を避けたいのは明らかだと述べた。ガザ紛争が終結あるいはその規模が大幅に縮小した後にイスラエルによるレバノン攻撃が継続、あるいは激化するような事態は避けたかったのだ、と彼は言う。

「ヒズボラがレバノンを交渉者とする、あるいはレバノンの交渉を支援するプロセスは、緊張緩和というメリットをもたらすだろう。」

外交交渉は大きな困難に直面しており、多くの観測筋は戦闘がエスカレートする深刻なリスクがあると見ている。イスラエルは、外交でイスラエル北部の安全を回復できない場合、軍が行動すると述べている。

ヒズボラの指導者サイード・ハッサン・ナスララ師は、同グループが「脅迫と誘い」を受けたと述べた。

ナスララ師は1月15日の演説で、その脅迫というのは、イスラエルがガザ紛争の次の段階に移行する際、北の国境に軍を移動させるという警告であると述べた。ヒズボラは戦争の準備ができており、「いかなる制限、規則、限界」も設けずに戦うだろうと彼は言う。

しかし、彼は外交による可能性についても示唆しており、1月5日の演説では、ガザ紛争が終われば、レバノンは領土解放という「歴史的な機会」を得ると述べた。

この発言は、国境紛争地域の状況を交渉を通じた取り決めで解決できる可能性を反映したものだと広く受け止められた。

この件について報告を受けたレバノン政府高官4人によると、ホッホシュタイン氏はこのような取り決めを実現するためのアイデアについて話し合ったが、草案は提示しなかったという。政府高官はアイデアの詳細については明らかにしなかった。

あるイスラエル政府関係者はロイターに対し、イスラエル政府は「多くの要求を伝えた」と、詳細は伏せたまま語った。「我が国の8万人の北部住民はどうにかして家に帰れるだろう。」

フランスもまた、緊張緩和に取り組んでいる。フランスの考えに詳しい情報筋によれば、国境に関する取り決めの可能性を示唆するナスララ師の公式発言は、「米国やフランスへの直接的なメッセージ」だという。

「彼は我々に『ドアは開いている』と言っているのだ。」

ロイター

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