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イスラエル、ガザ地区内に市民を犠牲にした一方的な緩衝地帯の設置を試みる:専門家が指摘

イスラエルとパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの間で衝突が続くなか、ガザ地区の瓦礫のなかに建つ損壊した建物。イスラエルのスデロットより撮影、2024年2月3日。(REUTERS)
イスラエルとパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの間で衝突が続くなか、ガザ地区の瓦礫のなかに建つ損壊した建物。イスラエルのスデロットより撮影、2024年2月3日。(REUTERS)
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04 Feb 2024 11:02:17 GMT9
04 Feb 2024 11:02:17 GMT9
  • イスラエルによる苛烈な攻撃により少なくとも2万7238人が死亡し、ほとんどは女性や子どもであったと、ハマスが支配するガザ地区の保健省は発表している

ナハル・オズ、イスラエル:ガザ地区のイスラエル軍は建造物を組織的に破壊し、パレスチナ領内に緩衝地帯を設置しようとしていると、専門家と人権団体はAFPに語り、市民の犠牲に懸念を示した。

イスラエルが公に認めていないこの計画により、ハマスが支配するもとより狭小なガザ地区のかなりの面積が奪われており、専門家やイスラエルの同盟国はイスラエルに警告を発している。

ハマス戦闘員が10月7日に越境攻撃を仕掛けて以来、イスラエル軍は国境から1km以内のガザ地区の建物を標的にしていると、衛星画像解析をおこなったエルサレムのヘブライ大学のアディ・ベン・ヌン教授は指摘する。

この地域のすべての建物のうち、30%が戦争によって損傷ないし破壊されたと、彼は言う。

先月、イスラエル軍が10月下旬に地上侵攻を開始して以来、同軍にもっとも多くの死傷者が出た日に、国境地帯を無人化しようとする彼らの戦術の一端が垣間見えた。

この日、イスラエル軍のヘルジ・ハレヴィ参謀総長は、21人の予備兵が「イスラエル人コミュニティをガザ地区と分離する防衛作戦中」に死亡したと発表し、作戦は「住民の安全な帰還を実現する」ためのものであるとした。

兵士たちは建物を爆破するための爆発物を設置していた際、ハマス戦闘員から攻撃を受けたと、軍は発表した。

国境地帯を含むガザ地区の住民の強制退去は戦時国際法違反の可能性があると、専門家は語る。

「イスラエルがガザ地区の広大な面積を居住不可能にしていることを示す証拠は山ほどあります」と、難民の権利の専門家であるヒューマン・ライツ・ウォッチのナディア・ハードマン氏は言う。

「明白な事例のひとつが緩衝地帯です。戦争犯罪にあたるかもしれません」

AFPの取材に対し、イスラエル軍は緩衝地帯に関するコメントを拒否した。

ノルウェー国際法アカデミーのセシリー・ヘレストヴェイト氏は、「民族浄化の懸念、移住、あるいは再建の見込みの乏しさから、いずれパレスチナ人はこの地域から完全に排除されるでしょう」と警鐘を鳴らす。

ガザ地区でのイスラエルの軍事行動に対する監視の目は、イスラエルにジェノサイド行為の回避を要請した先月の国際司法裁判所の裁定を受け、厳しさを増すだろう。

イスラエルの最大の同盟国であり、軍事支援提供国である米国は、ガザ地区の領土を変更すべきでないこと、緩衝地帯の設置はこの原則に反するものであることを、繰り返し主張してきた。

「ガザ地区の恒常的状態に関して……領土への侵入を認めないという米国の立場は明確だ」と、アントニー・ブリンケン米国務長官は述べた。

「イスラエル政府が緩衝地帯を求めているなら、はるかに広いイスラエル領内に建設する権利は完全に保証されている。だが、ガザ地区の土地を収奪する権利はない」と、人権専門家であるプリンストン大学のケン・ロス教授はソーシャルメディアに投稿した。

国境警備は多くのイスラエル人にとって優先課題であり、ガザ地区との境界付近のコミュニティへの帰還は、ハマスがもはや脅威でないことを示す証拠とみなされるだろうと、専門家は語る。

ガザ地区から約1kmしか離れていないナハル・オズは、10月7日の襲撃の標的となったキブツのひとつだ。ここからはパレスチナ領内の銃撃音が聞こえ、煙があがる様子が確認できる。

越境攻撃の前に国境付近に暮らしていた多くのイスラエル人と同様、このキブツの400人の住民たちはほぼ全員が避難し、帰還の目処は立っていない。

「まだ子どもを連れて戻れる場所ではありません。残念ながら」と、63歳のエラン・ブレイバーマンさんはAFPの取材に語った。

「そういう(緩衝)地帯があればとても助かります。そうなってほしいですね」

公式統計に基づくAFPの集計によれば、イスラエルに対するハマスの越境攻撃では約1160人が亡くなり、ほとんどは民間人だった。さらに戦闘員は多くの人質を拉致し、イスラエルによればまだ数十人がガザ地区に取り残されている。

イスラエルは報復として苛烈な攻撃を開始した。ガザ地区ではこれまでに少なくとも2万7238人が死亡し、そのほとんどは女性と子どもであったと、ハマスが支配する同地区の保健省は発表している。

イスラエルは2005年、ガザ地区から軍と入植者を一方的に撤退させ、1967年以来の同地区への駐留に終止符を打ったが、依然として沿岸にあるこの地区との境界をほぼ完全にコントロールしている。

幅のまちまちな狭い無人地帯が、イスラエルとガザの境界全体にわたって維持されており、無人地帯のすぐ先のパレスチナ側の土地は農地だけに制限されている。

2007年にハマスが実験を握って以来の過酷な封鎖は、10月7日の越境攻撃の直後、イスラエルによるガザ地区の完全包囲へと強化された。

エジプトはパレスチナ領のガザ地区と接する自国の領内に緩衝地帯を設けている。

イスラエルは2000年代前半に緩衝地帯を設置しない決定を下したが、20年の時を経てこの案が復活したと、ヘレストヴェイト氏は指摘する。

「戦争とガザの再占領により、イスラエルがガザ地区を軍事的に支配していた時代の計画が再び選択肢になったのです」と、彼女は述べた。

AFP

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