
ラマッラー:ムラド・カリドさん(27)はヨルダン川西岸地区に住んでいるにもかかわらず、エルサレムにある近所の職場に定時で到着するためには、午前3時にイスラエル軍の検問所に着かなければならない。ガザ戦争により、日々続く困難は悪化の一方をたどる。
イスラエル支配下の東エルサレム、ヨルダン川西岸地区側の壁に面しているカフル・アカブ地区では、カランディアの検問所で「車1台に1時間かかることもあるセキュリティチェック」を受けると、カリドさんや他の住民たちは述べる。
イスラエルが課した移動制限で、西岸地区に住む300万人のパレスチナ人は長い間生活上の不便を強いられてきた。
しかしパレスチナ自治政府のアブドゥラ・アブ・ラフマ氏によると、イスラエル・ハマス戦争の勃発以来、交通は「麻痺」状態にあるという。
10月7日以降、パレスチナ自治区の検問所と分離壁の数は大幅に増加しており、これまでも長かった通勤時間がさらに何時間も増え、住民は検問所で待つか大きく迂回することを余儀なくされている。
ほとんど影響を受けていないのは西岸地区の入植地(国際法では違法とみなされている)に住む49万人のイスラエル人である。彼らは専用に作られた道路でパレスチナ人コミュニティを通過することができる。
会計士のアメル・アル・サラメーンさん(47)によると、かつてはラマッラー市内の自宅から両親の住むアル・サモウ村まで、車でわずか30分だったという。
しかし新たな制限で所要時間は4時間になり、「疲労困憊し、不便極まりない」と語る。
「これまでは妻と子どもたちを連れて毎週両親を訪れていました。でも今は、道中何か起こりそうで怖いです」
1967年以来ヨルダン川西岸地区を支配してきたイスラエルは、10月7日のハマスの攻撃後、パレスチナ人コミュニティへの強制捜索を強化している。公式の数字に基づく集計によると、ハマスの攻撃によってイスラエルでは1,160人が死亡し、その大半は民間人だった。
イスラエルはハマス殲滅を誓い、ガザ地区に容赦ない軍事攻撃を仕掛けた。ハマスが運営する保健省によると、攻撃で少なくとも27,947人が死亡し、その大半が女性と子どもだったという。
またラマッラーに拠点を置く同保健省によると、同時期にヨルダン川西岸地区で、380人以上のパレスチナ人がイスラエル軍兵士や入植者に殺害された。
逮捕された人の数はさらに多い。
イスラエル軍によると、分離壁の追加は「状況に鑑みて地区住民全員の安全を保証するため」必要な措置だったという。
最近、ジャーナリストのチームはエルサレムを午前8時に出発し、西岸地区北部の町トルカレムに午後1時半に到着する。通常なら2時間の道のりだが、分離壁を迂回するために未舗装の道を通って村々を経由しなければならないのだ。
同じく北部にあるジェニンまでは、イスラエルから2時間だったところが5時間かかるようになってしまった。10月7日の攻撃後すぐに、イスラエル軍はハワラとパレスチナ北部の主要都市ナブルス間の道路を封鎖した。
ある新聞カメラマンによると、イスラエル軍は西岸地区南部のヘブロン周辺にあるほとんどの村のゲートを封鎖した。そのため住民は、市街地に行くために未舗装の道路を通って他の村を経由せざるを得なくなっている。
ビルゼイト大学に通う学生のリン・アフメドさんによると、普段はトルカレムからラマッラー北部の大学まで車で1時間の道のりだが、今は「数本の道路が封鎖されたり破壊されたりしているため」3時間以上かかるという。
困難な状況のため、ビルゼイトをはじめとする西岸地区の大学ではリモート学習を再導入している。
1987年のパレスチナ人民衆蜂起(第一次インティファーダ)後、イスラエルは軍の検問所を初めて設置した。しかし2000年の第二次インティファーダが始まって以降その数は増加し続けている。
AFP