• イスラエル軍の報道官であるダニエル・ハガリ少将は、ナセル病院への襲撃を 「正確かつ限定的なものだ」と説明した
• ハマスが統治するガザ地区の保健当局は、ナセル病院に避難していた避難民や医療スタッフの家族を、イスラエル軍が強制的に追い出したと述べた

エルサレム／ドーハ：イスラエル軍は15日、いまだ機能しているガザ最大の病院を襲撃したと発表した。ネットに投稿された動画には、埃と煙で充満した暗い廊下での混乱、叫び声、銃声が記録されていた。

イスラエル軍の報道官のダニエル・ハガリ少将は、ナセル病院への襲撃を「正確かつ限定的なもの」と説明し、ハマスが病院施設内に潜伏し、人質をとっており、人質の遺体がまだそこにあるかもしれないという信頼できる情報に基づいたものであったと述べた。

ハマスの報道官は、イスラエルの主張を 「嘘」と呼んだ。

ハマスが統治するガザ地区の保健当局は、ナセル病院に避難している避難民や医療スタッフの家族をイスラエル軍が強制的に追い出したと述べた。一晩で約2000人が南部の国境都市ラファに到着し、一部の人々はガザ中部のディール・アル・バラまで北方へ押し出された。

戦争は10月7日にハマスが戦闘員をイスラエルに送り込み、イスラエルの集計によれば、民間人を中心に1,200人が殺害され、253人が人質となったことで始まった。

それ以降、イスラエルによる空爆と地上攻撃は、人口が密集した小さなガザ地区を荒廃させ、ハマスが統治する同地区の保健当局によれば、同じく民間人を中心に28,663人が殺害され、住民のほぼ全員が家を追われた。

国連人道問題調整事務所は14日、ナセル病院がイスラエル軍に包囲され、狙撃されている疑いがあり、医療従事者や患者、数千人の避難民の命が危険にさらされていると発表した。

医療慈善団体「国境なき医師団」は、イスラエルに病院からの退去を命じられた人々は、「潜在的な標的になる」可能性のある場所に留まるか、爆撃にさらされている「終末的な風景」のなかに去るかの不可能な選択を迫られていると述べた。

病院での戦闘は、イスラエルがガザ戦争での自制を求める国際的圧力の高まりに直面している中、イスラエルがガザ地区内で民間人にとって比較的安全な最後の場所であるラファへの攻勢を強めると宣言した後に起こった。

ガザの医療施設の大半を破壊した攻撃は、紛争を通じて特に懸念されてきた。これにはイスラエルによる他都市の病院への襲撃、病院周辺への砲撃、救急車を標的とすることなどが含まれる。

大規模な砲撃により、住宅地区が広範囲にわたって破壊され、ほとんどの人々が家を追われるなか、安全と思われる建物の周囲に避難所を求める避難民に、病院はすぐに注目された。

イスラエルは、ハマスが定期的に病院、救急車、その他の医療施設を軍事目的に使用していると非難しており、いくつかの病院の地下に武器を隠したトンネルがあることを示すとする軍撮影の映像を放映した。

イスラエル軍は15日、ナセル病院で多くの容疑者を逮捕し、そこでの作戦を継続していると発表した。

ハマスの高官であるサミ・アブ・ズーリ氏は、ハマスが病院に戦闘員をかくまい、人質を隠していると非難するイスラエルの声明は 「嘘 」だと述べ、「病院に対するこれまでのイスラエルの主張はすべて虚偽であることが証明されている」と付け加えた。

病院内の混乱を映し出した動画

病院襲撃についてハガリ報道官は、「この機密作戦は周到に準備され、特定の訓練を受けたイスラエル国防軍（IDF）の特殊部隊によって行われている」と述べた。

作戦の目的のひとつは、病院がガザの患者の治療を継続できるようにすることであり、「病院スタッフと交わした多くの会話の中で、そのことを伝えた」と同報道官は述べ、退去の義務はないと付け加えた。

ガザ保健当局のAshraf Al-Qidra報道官は、イスラエルはナセル病院の医師たちに集中治療中の患者を見捨てさせ、彼らの命を危険にさらしたと述べた。

ロイターがナセル病院内で撮影されたものであると15日に確認した動画には、撮影時期は確認できなかったものの、混乱と恐怖の光景が映し出されていた。

漆喰の粉塵が舞い、瓦礫が廊下に転がる中、男性たちが携帯電話のライトを使って暗い廊下を歩き、ベッドを転がしながら被害を受けたエリアを通過する様子も映し出されていた。

動画のある時点では、銃声が鳴り響き、医師が「まだ中に誰かいるか？銃声だ、銃声が聞こえる、頭を下げろ」と叫んだ。

動画内では別の男性が、イスラエル軍が病院を包囲し、誰も外に出られないと語った。

世界保健機関（WHO）は以前、ナセル病院の医療スタッフの半数はすでに避難したと発表している。

ロイター