ラマッラー:月曜日、パレスチナ自治政府 (PA) の首相は内閣の辞職を発表した。これは、イスラエル・パレスチナ紛争解決に向けた最新の大掛かりな計画の一環として米国が促す、改革プロセスの第一歩とみられている。
しかし、それは、自治政府がパレスチナ人民の間で長年にわたって権威を欠いてきたことや、イスラエルとの緊張した関係に対処するうえで、ほとんど役立たないであろう。どちらも、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の一部を管理するPAに、最終的な国家樹立に先立って戦後のガザ地区を統治するよう求める、米国の計画における大きな障害となっている。
米国の計画では、ガザ地区での戦争が武装組織ハマスの敗北で終わるという前提に立っているが、3万人近くのパレスチナ人の命が失われ、ガザ地区が飢餓の瀬戸際に追い込まれたこの過酷な戦争の開始から5か月近く経っても、イスラエルと米国の目標達成はおぼつかない状態だ。
ここで、自治政府の一新とそのイスラエル・ハマス戦争における意味について考えていこう。
パレスチナ自治政府とは?
PAは、イスラエルと当時ヤーセル・アラファト氏が率いていたパレスチナ解放機構との間で交わされた暫定和平協定に基づいて1990年代初頭に創設された。
ヨルダン川西岸地区とガザ地区、さらには1967年の中東戦争でイスラエルが占領した東エルサレムからなる完全国家という、パレスチナ人の願いに先立って、PAには両地区の一部における限定的な自治権が認められた。
しかし、双方は数回の和平交渉を通じて最終合意に達することができなかった。マフムード・アッバース氏は、アラファト氏の死から数か月後の2005年にPAの大統領に選出された。翌年の議会選挙でハマスが大勝し、PAに対する国際的なボイコットが起こった。
アッバス大統領率いる世俗的なファタハとハマスの権力闘争は2007年夏に沸騰し、1週間の市街戦を経てハマスがガザ地区で権力を掌握した。これによりアッバス大統領の権限は事実上、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の一部に限定された。
アッバス大統領はイスラエルを受け入れ、武装闘争に反対し、二国家解決に取り組んでいる。同大統領の治安部隊は、ハマスやその他武装勢力を取り締まるためにイスラエル軍と協力しており、自治政府はイスラエルとともに、労働許可、医療目的の渡航、その他民間業務の促進に取り組んでいる。
辞職が意味することとは?
ムハンマド・シュタイエ首相は辞職を発表する際、「ガザ地区の新たな現実」に対処するためには新たな体制が必要だと述べた。
アッバス大統領はシュタイエ首相の辞職を受け入れ、後任には世界銀行で上級職を歴任し、現在はパレスチナ投資基金を率いる、米国で教育を受けた経済学者ムハンマド・ムスタファ氏の就任が予想されている。
ムスタファ氏は、2013年から2015年まで副首相兼経済大臣を務めた。
シュタイエ氏のようなファタハ支持者ではなく、政治的に独立した人物として、ムスタファ氏の任命は米国やイスラエルをはじめとする国々から歓迎されるだろう。
ムスタファ氏には独自の政治的基盤はなく、88歳のアッバス大統領は今後も主要政策について最終決定権を持つことになる。それでも、この任命はガザ地区を運営できる改革されたプロフェッショナルなPAのイメージを伝えることになると思われ、これは米国にとって重要である。
米国務省のマシュー・ミラー報道官は、指導者を選ぶのはパレスチナ人次第だが、米国はパレスチナの「改革と活性化」に向けたあらゆる措置を歓迎すると述べた。
「我々は今回の措置を前向きにとらえている。そして、これらが、パレスチナ自治政府のもとでガザ地区とヨルダン川西岸市区の再統合を実現するうえでの重要な一歩であると考えている。」
パレスチナ人は自治政府をどう見ているか?
アッバス大統領の人気は近年急落しており、世論調査では一貫してパレスチナ人の大多数が大統領の辞任を望む結果となっている。PAのイスラエルとの安全保障面での協調は非常に不評であり、多くのパレスチナ人がPAを占領の下請けと見なしている。
PAとハマスはともに、支配地域内で反対派を厳しく取り締まり、抗議活動を暴力的に弾圧したり、批判する者の投獄や拷問を行ったりしている。アッバス大統領の任期は2009年に切れたが、イスラエルの規制を理由に選挙の実施を拒否している。
今回および前回の紛争時に人気が急上昇したハマスは、自由選挙でも好成績を収める可能性が高い。
しかし、これまでのところ最も人気のあるパレスチナ人指導者は、2004年にテロで有罪判決を受け、5つの終身刑でイスラエルの刑務所で服役中のファタハ指導者マルワン・バルグーティ氏だ。
ハマスは戦争のきっかけとなった10月7日の攻撃で捕らえた人質の一部と引き換えに、同氏の釈放を要求しているが、イスラエルはこれを拒否している。
ハマスはパレスチナの全派閥に対し、選挙に向けた準備のため暫定政府を樹立するよう呼び掛けた。しかし、イスラエル、米国、その他西側諸国は、テロ組織とみなしている武装組織を含むパレスチナ人団体をボイコットする可能性が高い。
イスラエルはパレスチナ自治政府を支持しているのか?
イスラエルはハマスよりもPAに好意的だ。しかし、安全保障問題では協力しているにもかかわらず、イスラエルはテロを扇動したとしてPAを非難し、PAはイスラエルをアパルトヘイトとジェノサイドで非難している。
イスラエルの批判は主に、パレスチナ人捕虜およびイスラエル軍によって殺害されたパレスチナ人(イスラエル人を殺害した民兵を含む)の家族に対するPAの経済的援助の提供に的が絞られている。イスラエルは、経済的援助がテロの原資になると主張している。PAは、援助を占領の犠牲者のための社会福祉であるとしている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、PAは戦後のガザ地区で役割を担うべきではないと述べた。同首相は、現地のパレスチナ人指導者が民政を管理する一方で、イスラエルはこの領土に対する無制限の安全保障上の支配を維持すると語った。ネタニヤフ政権はパレスチナ国家の樹立に反対している。
米国は、パレスチナ独立国家への確かな道筋をつけることを条件に、サウジアラビアがイスラエルを受け入れ、他のアラブ諸国と一新されたPAに加わり、ガザ地区の再建と統治を支援するという、より広範な戦後処理への道筋を示している。
PAの改革はそのパッケージのほんの一部に過ぎない。そして、まだイスラエル政府の支持を得るには至っていない。
AP