
モハメド・アル・シャマー
カイロ:カイロのキリスト教徒たちは、慈善活動に寄付したり日没後の「イフタール」食を楽しんだりして、近隣のイスラム教徒たちとラマダンの伝統や儀式を分かち合ってきた。
自治体資料によれば、エジプト首都カイロのショブラ地区には約59万人のキリスト教住民がいる。
「私は断食をしている人々の前でものを食べたりしません」とヤスミン・タドロス氏はアラブニュースに語った。「それは小さいころに学びました。家で両親から教わりました。20年間、イスラム教徒の兄弟たちとラマダンの儀式を分かち合っています。ショブラの私たちが住む通りでは、イスラム教徒もキリスト教徒もイフタールを準備していっしょに食べていました。多くの人が参加してとても楽しかったです。今年は新型コロナウイルスのせいで私たちも安全を優先して慎重になっています」
子供の頃にはイスラム教徒の友人たちが、特定の食べ物や飲み物を避けるキリスト教の断食月間にいっしょに参加したがったものだと彼女は付け加えた。
共存は、エジプト、特にショブラ地区では生活の一部となっており、ラマダンには2つの宗教コミュニティーが敬意と思いやりの気持ちをもって共に集まる。
ショブラ通りで人気の食料品店を経営するマジディ・アジズ氏は、街のラマダン慈善晩餐会に米とパスタを寄付している。今年はパンデミックにより晩餐会が中止となったため、アジズ氏はショブラ地区の貧困住民に食料寄付をすることにした。
「この行為は心から来るものです」とアジズ氏はアラブニュースに語った。「私の行為は、誰もが良くありますようにという願いであり、それこそが神の愛です」
エジプト人たちは善行を好み、どんな時にも、そしてとりわけラマダンにはお互いにつながるのだと彼は述べた。「ラマダン中には皆さんに商品を半額で販売したりすることもあります」
これは自身が何年も行ってきた意思表示であり、慈善と善行の期間である聖なるラマダン月間にはとりわけ実践してきたことだと彼は付け加えた。
ショブラ地区ではいずれの教徒であるかの見分けが必ずしもつかない。非イスラム教徒でも断食中の人々の気分を害しないように配慮する人々がいるからだ。
会計士のジェルジェス・ハンナ氏は、期間中はラマダンを実践している人々の感情を害することのないように常に留意しており、彼らのいるところでは飲食を慎むようにしていると述べた。ラマダン月間は楽しく感じられ、ラマダンの、特に断食が明ける食前である日没時の雰囲気が好きだと彼はいう。
断食中に全力で仕事できないイスラム教徒の同僚たちのために、できるだけシフトを交代するよう努めているとハンナ氏はアラブニュースに語った。ラマダン月間には同僚たちのために少なくともそれくらいならできると彼は付け加えた。
また、イフタール中にはイスラム教徒の友人たちと通りに出て通行人にデイツやジュースを配ったりもするという。
エジプト・キリスト教会の広報担当であるラフィク・グリーシュ神父は、エジプトのキリスト教徒であるコプト教徒たちは毎年、ラマダン中には断食している人々の気持ちに配慮するよう指導されると述べた。教会は夜明けから日没までは断食中の人々の前で飲食しないことが大切であると強調しているという。
コプト教徒たちは「自覚」しておりラマダン中の振舞い方について説く必要はないものの、教会は念のために指導しているのだと彼は付け加えた。
教会はラマダンまでの準備期間中に、日常食品を詰めた箱を貧困者に配布しているとグリーシュ神父は述べた。「教会は、ラマダン月間にイスラム教徒たちと伝統や儀式を分かち合いたいと考えているからです」
80代のマハムード・アブデル・ハイ氏は、これまでの人生でラマダン中にイスラム教徒とキリスト教徒が争うのを見たことがないと述べた。ショブラ実業学校の元教師であるアブデル・ハイ氏は、キリスト教徒の隣人が毎年ラマダン中に少なくとも一回はイフタールに招待してくれると言った。しかし、今年はパンデミックのせいでそれができないと隣人が謝ってきたという。