
アレクサンドラ・ドレイコット
【ドバイ】サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)で実施された世論調査の結果、人々の意識にはかなり顕著な変化が見られる一方で、今後3か月以内にコロナ禍は収束するだろうという楽観的な見方も増えつつあることがわかった。
今から2か月ほど前に世界保健機関(WHO)が新型コロナの感染拡大をパンデミックと宣言したが、時を同じくして、英世論調査会社YouGovでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、同社が全世界に有する800万人以上のオンラインパネルを使い、人々の意識と行動の変化を追跡しはじめた。
3月18日の第一次のYouGov調査結果によると、サウジ国民の64%、UAE国民の61%が新型コロナ感染に恐怖をおぼえると回答した。
5月6日、YouGovは第8次の追跡データを公表したが、ウイルスに対する恐怖意識が増加するにとどまった。感染を恐れる割合は、サウジ国民で75%、UAE国民で73%とはじき出された。
「自分が感染するのは何も恐くない」と回答したのはわずか7%。他方で回答者2,002名のうち12名はすでに感染していると答えた。
全世界の累計では400万人以上が新型コロナに罹患しており、うち27万6,000人以上が亡くなっている。
感染確認者は目下サウジで3万5,000人を突破、UAEは1万6,793人となっている。
[caption id="attachment_14439" align="alignnone" width="474"]感染への恐怖が拡散し長引く中で日常生活にも影響していることから、今回のパンデミックの結果、生活のあり方や人との接し方が永続的に変化すると強く感じているサウジやUAEの国民が46%を占めるということは何ら驚くに当たらない。
「新型コロナのパンデミックによって生活のあり方・人との接し方が永続的に変化する」と思わないと答えたのはわずか8%にすぎない。
サウジもUAEも、新型コロナによる死者は感染者総数の1%以下にともかく抑えつづけている。参照できる諸データからすれば、この割合は世界的に見ても最も低い部類に入る。
サウジ政府の発表では、同国の感染者中死者の割合は僅々0.66%。UAEの場合は0.93%だ。
WHOの最新の推計では死亡率は3.4%となっており、いずれの数値もこれを下回る(ちなみに、季節性インフルエンザの場合の全世界死亡率は1%をかなり下回る)。
サウジとUAEで死亡率が低い理由として、検査率が高いこと、国民の平均年齢が若いこと、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)が功を奏していることが挙げられよう。
[caption id="attachment_14438" align="alignnone" width="512"]YouGovの調査からうかがえるのは、サウジ・UAEの両国で広範に社会的距離の確保が実施されているということだ。
現にサウジとUAEの回答者の98%が、日々の行動を変え今も予防措置を講じていると回答している。
具体的には次のようなことだ。人混みを避ける(78%)、マスクを着用する(71%)、清潔を心がける(74%)、テレワークの実践(47%)。
UAEは外出の際のマスク着用が義務化されているが、回答者の80%はこうした措置を遵守しているとした。
サウジの場合はすこし割合が低く、63%となった。
テレワークをおこなっていると回答した者の割合は、これとは対照的にサウジのほうが高く(54%)、UAEは44%だった。
湾岸諸国はラマダン月が2週目を迎える。YouGovの調査結果では、新型コロナにより人々の日々の習慣に変化が生じただけでなく、最も古くからの慣習にも多少の影響があったことがうかがえる。
[caption id="attachment_14437" align="alignnone" width="491"]サウジ・UAEとも、ラマダンを自宅で迎える国民が増えている。両国の回答者の50%が食品などの必需品に費やす出費が増えたと回答、45%が前年よりもテレビを見る時間が増えたとし、49%がネット上のコンテンツの視聴時間が増えたとしている。
対面の集まりはひかえているとする者が68%、多数は友人・親族とのつながりを保つのにネットを利用しているとした。
YouGovの調査では、サウジおよびUAEの回答者中62%が、テキストメッセージやビデオチャットといった形のネット経由で他者と交流する時間が増えたとしている。ソーシャルメディアの閲覧が増えたとする回答者も66%にのぼる。
YouGovの4月上旬時点での調査では、サウジ・UAEで失業を懸念する割合が増えていた(51%)。
この割合はサウジよりもUAEのほうが高かったのが目を引く(サウジ38%に対しUAEは64%)。
[caption id="attachment_14436" align="alignnone" width="507"]サウジの回答者の58%は、今後も事態は好転しないことを念頭に、前年と比べて必需品でないものに費やす費用は減らしていると答えている。
同じ念慮を抱く回答者はUAEのほうがやや高く、61%となった。
反面で、イスラム教徒一流の寛容性は動じていない。回答者の39%が去年に比べ喜捨が増えたとしている。
両国の回答者の35%は去年と同じだけの喜捨をしているとし、去年よりも減ったと回答したのは20%にすぎなかった。
新型コロナによる影響を肯定的にみる例はほかにもある。
YouGovの追跡調査からは、サウジとUAEの多数が新型コロナは今の生活に肯定的な影響をもたらすと考えていることがわかる。
今回の感染拡大からは何も肯定的なことなど生まれない、とするのは10%のみだ(まず18~24歳の層だろう)。
[caption id="attachment_14435" align="alignnone" width="463"]回答者の過半(61%)が、今回の新型コロナパンデミックは環境には好影響を与えるとしている。家族や人々とのつながりをいっそう大事に思うようになる、と考える者も55%。テクノロジーが一変する可能性がある、とみる者も34%いる。
コロナ禍が収束する時期と方法については両国で見解の相違があることがうかがわれる。
数字面では、37%が6月末までに世界的に収束すると楽観、53%が8月末まで、66%が今年の終わりまでには収束するとみる。
このように楽観的な見方が多数を占める一方で、13%は来年まで災禍は続くとみている。さらに21%は終息する時期についてはわからない・何とも言えない、としている。
サウジ・UAEの多数は、日常生活を取り戻すまでにワクチン開発を待つことは無理があるだろうとみている。
ワクチンを手にできなければおちおち店へ買い物にも行けない、と答える者は9%にすぎなかった。
5人に1人は、生活を取り戻す鍵となるのは新型コロナ対策に効果を上げることだ、と考えている。
新型コロナの治療薬が広く出回った場合であっても、安心してレストランや映画館、ショッピングモール、ホテルといった場所を訪れられない、と答えたのはサウジとUAEの回答者のうちわずか20%だった。