• 民衆動員部隊は正式にはイラクの国家治安組織の一部だが、イランのIRGCに忠誠を誓う強力な民兵も含まれている。
• 長い間議論されてきたイラクの法律は、PMFを規制することを目的としているが、批評家たちは、イランとのつながりを抑制したり、アメリカの圧力を緩和したりすることにはほとんど役立たないと主張している。

ジョナサン・レスウェア

ロンドン：それは明確で妥協のないメッセージだった。「イラクは、イランから指令を受けている民兵グループの広大なネットワークを抑制しなければならない。もし彼らがイラクにおけるアメリカの利益を脅かすなら、アメリカは対応する」

この発言は先週、米国務省のタミー・ブルース報道官が、民衆動員部隊の将来についてイラクで紛糾している新法についての質問に答えて述べたものだ。

人民動員軍（PMF）はイラク国内の数十の民兵の傘下組織であり、イラクの正式な国家安全保障組織に属しているにもかかわらず、イランのイスラム革命防衛隊から資金と命令を得ているものも多く含まれている。

レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、ガザのハマスとともに、彼らはイランのいわゆる「抵抗枢軸」の一部とみなされている。イラン革命防衛隊に忠誠を誓う中東全域の代理民兵のネットワークである。

フーシ派に対するアメリカの新たな軍事作戦は、イスラエルによるハマスとヒズボラの凋落、シリアにおけるイランの盟友バッシャール・アサドの失脚とともに、イラクのイラン支援民兵への注力を強めている。

2023年10月にガザ紛争が始まって以来、イスラエルやアメリカの大規模な軍事行動を回避してきた、この地域における唯一のイランの主要な代理人であることに変わりはない。

民兵に対する中央政府の管理を強化するためにイラクで長年提案されてきた法律が、果たして大きな効果をもたらすのか、あるいは米国の懸念を十分に和らげることができるのか、疑問が投げかけられてきた。

しかし、イラクの国内情勢に加え、ドナルド・トランプ米大統領がイランの核開発計画停止に向けた「最大限の圧力」キャンペーンを再開したことで、PMFはますます矢面に立たされている。

チャタムハウスのイラク研究シニアフェロー、レナド・マンスール氏はアラブニュースにこう語った。「特に、イラクにいるアメリカ市民や利害関係者に対する攻撃を阻止することだ」

マンスール氏は、この政策は、この地域におけるイランの影響力に対抗するための米国の新たな努力に由来すると述べた。「トランプ政権がイラクを、イランが経済やその他の権威を維持する重要な手段と考えていることは明らかだ」と彼は語った。

アラビア語でハシュド・アル・シャアビと呼ばれるPMFは、過激派組織ダーイシュが広大な領土を掌握した後、イラクのシーア派最高宗教権威である大アヤトラ・アリ・アル・シスターニ師が発布したファトワを受けて2014年に創設された。

武装集団の広大なネットワークには、イランが武装し資金を提供するものも多く含まれていた。その多くは、IRGCの域外部隊コッズ・フォースによって動員された既存の民兵組織から生まれたものだ。

PMFは、シーア派を中心とする約70の武装グループから構成され、約25万人の戦闘員で構成されていた。彼らは、イラク治安部隊、クルド人ペシュメルガ、米国主導の連合軍とともに、イラクにおけるダーイシュの敗北に大きな役割を果たした。

2017年に過激派組織がイラクで領土的に敗北し、シリアでの残留勢力に注目が集まった後、PMFの目的について疑問が呈され始めた。

2016年にイラクで制定された薄っぺらな法律は、民兵に対する国家の統制を強めようとするもので、民兵の構造や雇用条件に関する基本的な内容が盛り込まれた。

その一方で、PMFは選挙を争う政治翼を展開した。これらの政党ブロックは、政敵や西側諸国政府から、不安定化を引き起こし、イランの利益のために行動していると非難された。

民兵組織は2020年1月、第一次トランプ政権がバグダッド空港近くの無人機攻撃で、コッズフォース司令官カセム・ソレイマニとともにPMFのアブ・マフディ・アル・ムハンディス議長を殺害したことで、大きな打撃を受けた。

同年末、PMF結成当初に宗教的正当性を与えたアル・シスターニ師は、イランの影響力に対する懸念が高まるにつれ、自らの派閥を離脱させた。

しかし、PMFはこうした挫折から立ち直り、資金もイランの無人機やミサイルなどの武装も増強した。

2021年11月にはムスタファ・アル・カディミ首相（当時）の暗殺未遂事件で派閥が告発され、2022年には民兵が聖職者ムクタダ・アル・サドル支持者と衝突するなど、国内の混乱の中心にもなっている。

2023年10月にガザ戦争が始まると、民兵はイスラエルに向けて無人機やミサイルを発射し、ダーイシュに対する連合軍の任務の一環として約2500人の兵士が駐留するイラクの米軍基地を数十回攻撃した。

昨年2月、「タワー22」として知られるヨルダンの前哨基地へのドローン攻撃で3人の米兵が死亡した後、バイデン政権はイラクとシリアで85の民兵の標的を空爆した。

米国は、カタイブ・ヒズボラ民兵組織の幹部が殺害されたと発表した。それ以来、イランはイラクの民兵に対し、米国の利益を攻撃しないよう促している。

「バイデン政権がカタイブ・ヒズボラから3人のトップ司令官を排除したことで、イラク民兵のイラクにおける米国標的への嫌がらせは終わった」と、ワシントンに本部を置く民主主義防衛財団のフサイン・アブドル＝フサイン研究員はアラブニュースに語った。

「これは民兵組織の指導者たちに、彼らの安全が危険にさらされ、攻撃が停止したことを知らせるものだった」

第2次トランプ政権は2月、国家安全保障大統領覚書を発表し、イラクの民兵がイランとの経済的関係を縮小するようイラクに再び圧力をかける中心的存在になることを明らかにした。

もう一つの前線は、イラクがテヘランとのドル取引を減らすことであり、特にエネルギーの購入を削減することである。

しかし、ハマス、ヒズボラ、フーシ派など、この地域にいるイランの他の代理勢力に対するアメリカとイスラエルの攻撃の結果として、民兵に対する地政学的な圧力が大きくなっていることも事実だ。

「イラク民兵は、この地域の他のすべてのイラン民兵にとって最後の頼みの綱となった。「イスラエルがレバノンとシリアのヒズボラを潰して以来、親イランの民兵の比重はイラクに移った」

現在イランにかけられている経済的圧力について、彼は、IRGCが主にPMFに割り当てられた33億ドルの予算を使って、イラクの石油収入から米ドルを吸い上げていることをアメリカは認識していると述べた。

この新たな圧力に対応するため、PMFの服務と退職に関する法律が、その内容をめぐって数カ月にわたる論争を経て、先週イラク議会に提出された。

この法案は、PMFをイラクの国家治安部隊に完全に統合することを目的としている。しかし、批評家によれば、この法案は、組織内で優位に立とうと争うシーア派の対抗勢力に乗っ取られているという。

現状の法案では、PMFが中央政府の統制に完全に服従し、イランへの忠誠を放棄するという確信をアメリカが抱くことはないだろう。アブドル・フセインは、この法案を「完全な煙幕」だと評した。

彼は言った： 「国会は、次の行政長官がイランに友好的でない可能性を恐れて、PMFの役得を法律で規定しようとしている。法律が政令に勝る。だからイラク議会はPMFの資金を法律で規定しようと躍起になっているのだ。

「皮肉なのは、同じ法律が、PMFを軍の命令に従わせたり、軍の地位や監督下に置くことを要求していないことだ。彼らは資金を受け取りたいが、ヒエラルキーはIRGCの手中に収めたいのだ」