







【ベイルート】少し前、写真家のオマル・フランジエ氏は新型コロナでロックダウン中のベイルートを散策中、驚愕した。首都のあちこちにマスクや手袋が大量に散乱していたからだ。
こうした汚染ゴミそのものが感染源となりはしまいか、と同氏は懸念した。そこで、捨てられた手袋などの写真を200枚集め、Facebookアルバムに投稿した。題して『ベイルートへの侵略者たち』。
新型コロナウイルスへの感染予防のため引っ張りだこの状態が続く使い捨てのマスクと手袋。が、バグダッドからガザにわたる中東地域ではこれらが使用後に打ち捨てられて汚染源となっている。
フランジエ氏はAFPの取材に語る。「せっかくの感染予防具なのに、ベイルートのいたるところにああも散乱しているとかえって健康を脅かす。そこを最も懸念しているんです」
新型コロナウイルスは通常、密接な接触による飛沫感染で伝播する。が、数日間なら物の表面上でも生存可能という研究結果もある。このことから、捨てられたマスクや手袋を清掃のため回収する人にも感染リスクがあってもおかしくない。
昨年12月に中国で新型コロナが発生。以来、中東諸国では死者7,711人を数え、感染者も233,522人にのぼっている。
マスクや手袋といった衛生用品にはたしてどれほどの有用性があるのかについては一致した見解はないにもかかわらず、飛ぶように売れている。
ウイルスの蔓延を防ぐには、手袋をするよりは手洗いを欠かさないことのほうが効果的だ、と世界保健機関(WHO)はしている。
米疾病対策センターでは、一般の人が外で着用するのは洗える布マスクでよいとし、使い捨ての呼吸マスクやサージカルマスクといった需要の高いマスクについては医療関係者やリスク層の使用に供すべき、としている。
東地中海に面するパレスチナの飛び地ガザではすでにビーチはゴミで散乱しているが、これにマスクと手袋が新たに加わった。
こうした衛生用品は使い捨てを旨としている。再利用はできないし、ほとんどは自然に土に帰るようなものでもない。したがって捨てられると見てくれの悪い汚染源というにとどまらず、最終的に海へ流れ着けば海洋生物にも累が及びかねない。
地元の店主らが音頭を取り、こうした衛生用品ゴミを拾ってゴミ箱に入れる活動をしてはいる。とはいえ、海辺は貧しいガザの人々のゴミ捨て場となりがちで、そこここにゴミが散らばる状態が常態化している。
リーナ・ウーダさん(30)は夫と散策に出るとしばし歩を止め、こうしたゴミを拾い上げている。
「海岸通りにマスクや手袋が捨てられていたらゴミ箱に入れるようにしています。海辺を汚すもとですから」。AFPの取材にリーナさんはそう語った。
夫のジャマール・ウーダさんも付け加える。「ガザでは海辺をきれいにする、といった考えそのものがありません。ですが、率先してこうしたマスクなどの医療用品ゴミを拾ってゴミ箱へ捨てる活動をしている者もいるのです」
ジャマールさんは続ける。「マスクや手袋をして外出し、それをそのままポイ捨てしてしまう人が一向に減りません。残念なことです」
AFP