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不穏なレバノン情勢 政治的思惑混じりの通貨めぐる噂を犯人扱い

レバノン北部の港湾都市トリポリで襲撃を受けた銀行前。デモ隊の破壊活動により散らばったガラス片を男性が掃き集めている。(AFP)
レバノン北部の港湾都市トリポリで襲撃を受けた銀行前。デモ隊の破壊活動により散らばったガラス片を男性が掃き集めている。(AFP)
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13 Jun 2020 08:06:29 GMT9
13 Jun 2020 08:06:29 GMT9

ナージヤー・フサリー

  • ナビーフ・ビッリー国民会議議長はレバノン銀行総裁の解任を拒否「いらない人などいない」

【ベイルート】11日夜の抗議運動は激しさをともなったまま12日早朝までレバノン中に拡散。これを受けレバノン政府首脳部は12日、急激なドル高の抑制に重点を置いた。

ミシェル・アウン大統領が主宰した閣僚らによる会議では、事態への対応に暫定的な措置を取ることで意見をまとめた。
レバノン銀行(中央銀行)は週明けの15日以降、カテゴリAの両替業者に1日500万~900万ドルを供給、対ドル為替レートを3,850レバノンポンドから3,250レバノンポンドまで段階的に引き下げることを目指す。平行して、闇市場の両替業者に対する防御的な手入れもおこなうことを条件とする。

ハッサーン・ディヤーブ首相は同会議前に両替業者団体、銀行協会の代表、治安当局のトップらと相次いで面会した。
会議参加者に近い筋は、「11日夜に1ドル=7,000レバノンポンドに達したという報道があったが、噂にすぎない」とし、「1ドル=5,300レバノンポンドを超えてはいない。噂は政治目的で流されたものだ」と語気を強めた。

「デモ隊がマスコミに示した要求がたったひとつだった時点で政治目的だったことは明らかとなった。つまり彼らはレバノン銀行のリヤード・サラーメ総裁の解任を求め、各支店を襲撃したのだ」と同筋は付け加えた。

「今回合意されたメカニズムでは、カテゴリAの両替業者に対し中央銀行からドルが供与される。カテゴリAに属するのは50業者以下だ。カテゴリBに属する250の業者については、中央銀行からドルを調達することはできない」

カテゴリBの両替業者の業務内容は、レバノン銀行の定義によると次のようになる。「外国通貨またはレバノン通貨に対し外国通貨を売買すること。硬貨および1,000グラム未満の金地金の売買。トラベラーズチェックの販売。ただし、未回収のTCはいかなる時点においても1万ドルまたはそれと同等価額の他国通貨を超過しないものとする」

複数の情報筋が本紙に語っている。「企業幹部らに闇市場と取引させない目的で、彼らにカテゴリAの両替業者と取引させ、業者からの請求書を取引銀行に提示させた上でドル入金させることを求める提案があったが、異議を唱える閣僚も何人かいた」
提案には実行に無理がある、とそうした閣僚らは見たわけだ。理由は、企業幹部の中には自宅に資金を保管した上で入金に使うため、資金の出所を証明できる請求書など示せない者がいるから、ということだ。

閣僚らをまじえた同会議では主に、厳格な防衛策を講じることで混乱する金融問題に対処し、抗議活動に付き従うメディアを抑制することに議題が集中した。

ナビーフ・ビッリー国民会議議長は、大統領府でアウン大統領、ディヤーブ首相らと面会した後、熱っぽく語った。「本日をもって1ドル=3,200レバノンポンドを最終目標に、4,000レバノンポンドを超過しないところまでポンド切り上げを実施することで合意した。また、国会の賛同を得たうえで、国際通貨基金(IMF)との協議に言を枉げず当たることでも合意した」
会議ではレバノン銀行のリヤード・サラーメ総裁解任の問題も協議されたのか、との問いにビッリー議長は、「いまは猫の手も借りたい時期だ。どなたも必要な方々だ」と述べた。

両替業者らは一連の会議の結果を見据え、12日はドルの売買を差し控えた。
11日のレバノンポンド安のねらいは、人々を街頭に引き出し騒擾を起こすことなのか、とアウン大統領は会議中いぶかっていたという。

大統領はまた、今回の事態は政治か銀行か、はたまたほかの何かをめぐるゲームのようなものなのかともいぶかったという。
金融混乱の元凶は次の三者だ、とアウン氏は発言した。政府、レバノン銀行、その他銀行群がそれで、「この三者が損失を招いたはずだ。預金者たちではない」と力説した。

ディヤーブ首相の発言。「これ以上の騒乱があれば国がもたない。したがって、こうした手法に出た個人なり団体に対してはこれを阻止するために厳格な措置を取ることが求められる」

治安当局は、ベイルート、シュタウラー、トリポリ各地の両替業者5名、およびドゥーラ地区のエチオピア人1名について、違法な両替に関わったとして逮捕したと発表した。

サアド・ハリーリー前首相は、「経済的にも政治的にも憲法に照らしても気狂いじみている。レバノン経済を抹殺しかねない」とまで表現してリヤード・サラーメ総裁の解任をにじませた。

ハリーリー氏の文章にはこうある。「彼らは汲々として活路を求めている。だがそれは、経済を救うための解決策を求めてのことではない。おのれの下した決定やおこないの邪悪さからみずからを救うためだ」

「人々の正当な怒りと飢餓の叫びが国中から湧き上がるなか、これらを飲みこめるようなスケープゴートを求めるという、何とも悪辣かつねちねちとした性根というよりない」と同氏は言う。

政党「レバノン軍団」指導者のサミール・ジャアジャア氏はツイートにこう書く。「ヒズボラや『自由愛国運動』トップのジブラーン・バーシールやその仲間らが権力を握るかぎり、さらなる頽廃の日々があるものとして臨むがよい」

元閣僚のムハンマド・シュカイル氏の弁。「両替業者を脅そうが罰しようが投獄しようがドル高を抑えることはできない。ドルを市場に注入したところで何も生み出さないどころか備蓄した外貨を流出させるだけだ。解決策は二つしかない。政府と政府の仕事ぶりに国民が信頼を置くこと。海外からドル資産を確保すること。ほかは何をやっても無駄だ」

市民運動の活動家らは13日に向け一大デモを準備している。ベイルートの財務省前を出発し、リヤード・アッ=スルフ広場まで行進する。

週末の反政府デモに政権与党の支持者らが加わるかは不明だ。

11日夜のデモ活動にはアマルおよびヒズボラ支持者らも加わった。また、レバノン国内で民衆蜂起が始まった昨年10月以来初めて、ベイルート南郊でもデモ活動があった。

とはいえ、デモ隊の求めているのはたったひとつ。レバノン銀行総裁任用の説明責任を問うているだけだ。
こうした求めは何週間も前に自由愛国運動が閣内で訴えていたところだ。が、金融政策に対立を招くとして顧慮されなくなった。

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