
アラブニュース
アンカラ:ロシア政府は、長年続くリビア内戦の即時休戦取引に向けたトルコ・ロシア間での協議が進行中であると発表したが、両国が対立する側を支持していることから、このような合意の実現可能性はますます疑問視されている。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外交官は、ロシアが支持するリビア東部のハリファ・ハフタル司令官率いるリビア国民軍(LNA)は、停戦文書に署名する意思があると述べた。ロシアはトルコ政府がリビア国民合意政府(GNA)を説得し、同じように進めることを期待している。
先月は技術的な意見の相違をめぐって延期もあったものの、閣僚級の会談はしばらく続いている。
オックスフォード大学の中東研究者であるサミュエル・ラマニ氏は、現地での停戦に懐疑的だ。
「リビア内戦は、欧米のメディアではロシアとトルコの二項対立にしばしば単純化されすぎているが、実際はこの二国の代理戦争というよりもはるかに複雑である。UAEとエジプトはトルコとの和平協定締結に対してロシア以上に躊躇しているだろうし、このような停戦に関しても信用できるものとは見ていないかもしれない」と、ラマニ氏はアラブニュースに語った。
ラマニ氏によると、リビアでのハフタル司令官の軍事活動は継続する可能性があるという。
「その代わりに、トルコは現時点で停戦に対して強い関心を持っており、またフランスとの緊張状態も拡大している。またロシアがLNAの停戦合意について述べる際、その意思を示したのがリビアのアギラ・サレハ下院議長のことを指しているのか、ハフタル司令官のことを指しているのかという疑問もある」と、ラマニ氏は語った。
専門家らは、停戦の失敗を防ぐためにリビアの影響力の範囲を明確に示すべきだと主張している。
ラマニ氏は停戦に関し譲れない一線として、LNAが保持するスルトとジュフラ内と周辺の紛争地域の凍結が早急に必要であると考えている。
スルトは、地中海沿岸の主要なエネルギー輸出ターミナルに近いことから戦略的に重要であり、ジュフラはロシア機やワグナー・グループがあるとされる戦略的な軍事基地を抱えている。
「この地域の一方でも紛争が深刻化したら、一線を超えてしまうだろう。また敵軍に力がないと感じた場合に、より広範囲に及ぶ紛争を再開しないことを双方が保証する必要がある」と、ラマニ氏は述べた。
トルコ・ロシア関係の専門家であるアイディン・セゼル氏は、ロシアはトルコのGNAへの軍事支援の増加を懸念しており、内戦の緊張をさらに高めると考えている。
「ロシアにとって現在唯一の優先事項は、継続可能な停戦協定を通して恒久的な平和を達成することである。フランスも同様だ。両国ともにこの問題を国連安全保障理事会に持ち込もうとしている。これらの最新の停戦交渉は、ロシアが双方に対し外交が可能な状況を維持しておきたいと考えていることを意味している」と、セゼル氏はアラブニュースに語った。
リビアの戦略的なアルワティヤ空軍基地への土曜日の攻撃は、トルコが恒久的駐留を計画していると言われている、トルコの防空システムを損傷した。攻撃は、トルコのフルシ・アカル国防大臣がリビアを訪問した数時間後にも行われた。
「この攻撃の後、トルコ政府はリビアの脆弱性に関して、より注意していかなくてはならないと感じていた。現地の状況は複雑で、トルコは時期的には不利な状態にある。そのためトルコ政府にとってはこれまで以上に停戦が重要となる」と、セゼル氏は語った。
しかしドイツ国際安全保障研究所のWolfram Lacher上院研究員によると、ロシアとトルコは停戦をまとめることで、リビアで重要な役割を担う存在になろうとするかもしれないが、そのような停戦が成功するかどうかは疑問であるという。
「ハフタル司令官は現在エジプトとUAEの支援を頼りにしているので、トルコとGNAの関係に比べるとロシアとの関係には余裕がある。よってハフタル司令官は、ロシア・トルコの停戦条件を拒否する可能性がある」と、Lacher氏はアラブニュースに語った。
Lacher氏によると、アメリカ、フランス、エジプト、UAEを含む他の勢力はリビアでのロシア・トルコ間の調整を阻止し、代わりに国連の後援の下で停戦協議が行われることを望んでいるという。
「停戦協議の場をめぐるこの対立は、停戦への取り組みをより難しくするだろう」とLacher氏は語った。
一方で、キングス・カレッジ・ロンドン防衛学部のビル・パーク上級講師は、ロシア政府はトルコのリビアへの介入が示す意味について不快感を抱いている、と考えている。
「ロシアは許容するにも限界があるのだということを示したいと考えている」と、パーク氏はアラブニュースに語った。「現段階でトルコ政府はリスクを取ることを厭わないが、ロシアは交渉による合意のための課題を解決し、フランス・トルコ間の敵対関係に対処しなければならない」。