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米国はイランのデモを受けて核合意についての計算を変えつつある

エアフォースワンから降りるジョー・バイデン米大統領。2022年10月17日、メリーランド州のアンドルーズ空軍基地。(AFP)
エアフォースワンから降りるジョー・バイデン米大統領。2022年10月17日、メリーランド州のアンドルーズ空軍基地。(AFP)
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19 Oct 2022 09:10:58 GMT9

米国政府高官やアナリストはイランの抗議運動を注視している。イランとの核合意復活はバイデン政権にとって外交政策上の最優先事項であり続けてきたが、最近の反政府デモを受けてホワイトハウスは計算を変えつつあるかもしれない。

現在の抗議運動が始まったのは9月中旬、マフサ・アミニさんという若い女性が道徳警察に拘束され死亡した事件がきっかけだった。最初は小規模だった抗議が急速に大規模・広範囲のデモに発展し、政府にとって深刻な問題となっている。

ジョー・バイデン大統領と外交政策高官は、選択肢は確保しつつデモに対する支持を示そうとしている。2009年、バラク・オバマ大統領(当時)はイランの抗議運動「グリーン・ムーブメント」に対して十分な支持を示していないという批判を受けた。バイデン大統領はそれとは少し違うアプローチを取っており、即座にデモに対する支持を表明して政府の暴力的な対応を非難した。9月の国連総会でのスピーチでは、米国は「基本的権利を手にするために今まさにデモを行っているイランの勇敢な市民たち、勇敢な女性たちと共にある」と述べた。それ以降、バイデン大統領と外交政策高官はデモに対する支持を表明し続けている。

バイデン政権は実際的な措置も講じている。米国は9月、イランの道徳警察およびイランの治安組織の幹部7人に制裁を科した。今月には、インターネットアクセスの制限に関与したとされるイラン政府関係者7人も制裁の対象となった。また、テクノロジー企業のイランでの活動を妨げていた可能性のある一部の制裁が緩和されるとともに、それらの企業が「イラン国民が安全なオンラインプラットフォームやサービスへアクセスしやすくなるように」することが推奨されるなど、イラン国民に対するデジタルサービス提供を促進する措置も取られた。

一方、米政府内のイラン専門家たちは、完全な革命へと発展する可能性も含め、デモがイランにとって何を意味するのかについて議論している。今回の抗議運動は重大なな動きであり、政府によって完全に鎮圧される可能性は低いという点では全員の意見が一致している。革命が始まりつつあると多くの専門家が言う一方、より慎重な見方をする者もいる。たとえ革命が起こったとしても多くの帰結が考えられ、米国の国益に沿うものもそうでないものもあるだろう。

専門家や政府高官が行っているイラン政治の将来についての議論と関連して、イラン核合意、すなわち「包括的共同作業計画(JCPOA)」に対する米国の政策についての議論も行われている。三つの対立する立場がある。第一に、JCPOA反対派は、イランのデモは核合意復活に反対するためのさらなる根拠を提供すると言っている。第二に、JCPOA支持派の一部は、核合意復活はかつてなく重要になっていると主張している。第三に、それ以外のJCPOA支持者は静観的アプローチを提案している。すなわち、原則的にはイランとの核合意への支持を保ちつつも、今がそれを追求すべき時かどうかは分からないという立場だ。

バイデン政権が今後どのようなアプローチを取るのかはまだ完全には明らかではないが、ホワイトハウスは静観的アプローチに従っているようだ。バイデン大統領は国連で、イランの核兵器獲得を許さない決意を繰り返す一方、「それを実現するための最善の方法は外交であるとまだ信じている」と付け加えた。

現在のデモが始まる以前、JCPOAは行き詰まっていた。夏に合意への希望が出てきたかと思えば、イランが要求を追加したため交渉は宙に浮き、11月の米中間選挙までに大きな進展がある可能性は低くなった。

そして今、バイデン大統領と政府高官が、行き詰まった核合意交渉を行うかどうか、行うとしたらどのようにアプローチするかを検討する中、イランの抗議運動により米政府の計算は変わりつつある。これまでの課題の上にデモが乗っかった形だ。将来が不確かな政府に対して多くを投資したい者はいない。イランは、バイデン大統領の後任者が誰になるかという不確実性を交渉材料として利用してきた。今度はホワイトハウスが、危機にあるイラン政府との交渉に乗り気でない態度を示すのかもしれない。

米政府はイランの体制転換を追求しているわけではない。同時に、現体制を支えるようなことはしたくないとも思っている。バイデン政権はJCPOAをイランの核開発を制限・監視するための価値ある合意と見なしていたし、イランを世界経済に再び統合しその政府を穏健なものにするために制裁緩和が助けになるかもしれないという希望があった。ところが今は、デモに暴力的に対応している政府を利する可能性のある制裁解除にホワイトハウスは乗り気ではない。イラン国民がその政府の終焉を求めているのだからなおさらだ。

デモに暴力的に対応している政府を利する可能性のある制裁解除にホワイトハウスは乗り気ではない。

ケリー・ボイド・アンダーソン

バイデン大統領は、これらのデモの後でイランとの合意に署名することの国内政治における意味合いも考慮しなければならない。大統領は人権を外交における最優先事項とすると公約したが、就任するとより実利的なアプローチを取ってきた。しかし、基本的権利を求める国民に対して積極的に激しい暴力を行使している政府と合意を結ぶというイメージは歓迎しないだろう。少なくとも、11月8日の米選挙までに交渉はほとんど進展しない可能性が高い。

米大統領と政府高官は常に野心的な外交政策計画を掲げて政権の座に就くが、常に制御不可能な事態がその計画を混乱させる。バイデン大統領が追求したJCPOA復活が良い例だ。以前は、大統領のチームはイラン政府が作り出した障害を乗り越えなければならなかった。ところが今は、イラン国民が想定外の複雑さを生み出している。大統領はイラン体制と熱心に交渉するつもりだったのかもしれないが、抗議運動を毀損するように見える可能性がある措置を講じることはなさそうだ。

  • ケリー・ボイド・アンダーソン氏は、国際安全保障問題や中東の政治・ビジネスリスクの専門アナリストとして18年以上の経験を持つ著述家・政治リスクコンサルタントである。オックスフォード・アナリティカの顧問代理を務めた経験もある。ツイッター:@KBAresearch
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