
アラブニュース
ロンドン:慈善事業の職員ナザニン・ザガリ・ラトクリフ氏の投獄事件に関して英国とイランの間の緊張関係が高まる中、英国チームがソマリアの海賊から3名のイラン人船員を解放させる支援をした。
人質となっていた船員たちの解放取引には18万ドルの身代金が支払われ、この取引は英国を拠点とするホステージ・サポート・パートナーシップによって仲介され た。具体的にはケニア在住の英国の元外交官ジョン・スティード氏と、英国を拠点とする人質解放交渉の専門家であるレズリー・エドワーズ氏の協働によって調整されたもの。
2005年から2012年までの間に、ソマリア沖では2千人以上の船員らが船をハイ ジャックされている。当時海賊行為は手っ取り早く儲けられるビジネスとなっており、実際5億ドル前後の身代金の支払いが行われていた。各企業が武装護衛員を船上に配備し、国際海軍が「アフリカの角(Horn of Africa)」近海をより頻繁にパトロールするようになってからは海賊の攻撃は減っていったが、それでも完全に無くなったわけではなかった。
「これによってソマリアの海賊時代と、そこで忘れられていた人質たちの苦悩・苦難に終止符が打たれる」とスティード氏は語る。
2015年3月、ソマリア沖で漁を営んでいた『スィラージ号』が海賊に襲われ、当初8名の乗組員が囚われの身となった。その後2018年にそのうちの5名が解放された。そのうちの一人ムハンマド・ジャフリー氏は、酷い栄養失調状態のため何十歳も老けて見えた。解放された船員らによれば、彼らは「ヤギのような」扱いを受けていたという。
ホステージ・サポート・パートナーシップは過去数年間ソマリアの海賊たちとの交渉をさらに深めてきた。彼らは2013年以降、オーナーによって保険の掛けられていなかった船3隻の乗組員についての解放交渉を支援している。
スィラージ号のオーナーもやはり保険を掛けていなかったらしく、船員らを救出する資金がない。18万ドルという金額は当初要求された金額より格段に低いもので、イランの船舶業界の支援者たちによって資金繰りされた。何ヶ月もの間複雑な交渉が行われ、その間英国チームはイランの外交官らと協働しながら残り3名の人質たちがまだ生存している証拠を入手した。
しかし、その船員らがイランで下流市民階級として扱われているバルーチー族出身者であったため、この事態にイラン政権の高官たちの協力が得られないと言われてきた。
英国とイランの仕掛け人たちによるイラン人の人質解放によって、その両国の国籍を持つザガリ・ラトクリフ氏のイラン政府による投獄事件にまつわる緊張関係に、大きな突破口が開かれることが期待される。
今週、BBC 放送の「パノラマ」というドキュメンタリーでは、1978年のイラン革命によって英国との軍事取引が暗礁に乗り上げ、その後英国政府が差し止めている4億ポンド(5億2,820万ドル)の支払いを実行させるために、イランがザガリ・ラトクリフ氏を「人質」に取っていると訴えた。