
Najia Houssari – ベイルート
日本がレバノン、中東、北アフリカ(MENA)に特別な注意を払い、予防外交を、この地域の平和を強固なものにする上での効果的な手段として見なしていると、中東地域の国際協力機構(JICA)の代表を務める日本当局者が語った。
彼によると、日本は、政治的/歴史的に中立を保ちながら、この地域の国々に対して様々な協力を行ってきており、JICAの後援の下、人間の安全保障と質の高い成長のための開発協力と同時に、重要な人道支援プログラムを展開しているという。
JICA中東・欧州部審議役の坂本威午は、アラブ・ニュースの独占取材に対し、同機関は現在、この地域のイラク、ヨルダン、レバノン、シリア、パレスチナに重点を置いていると語った。
坂本によると、この地域で人道支援活動に取り組んでいる職員らは、独特の課題に直面しなければならないという。「JICAは多くの課題に直面していますが、最大の課題は、この地域の安全保障、社会的安定、汚職、非常に複雑な事業プロセスに対する否定的な固定概念のイメージです」と彼は語った。
坂本は、1974年に日本政府によって設立されたJICAは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界銀行を含む様々なパートナーと連携して、難民の能力開発や、その受入国のサービス提供の支援を続けていると語った。
平和のための信頼醸成措置
地域の安定性を確保するため、JICAは、この地域での信頼醸成措置(CBM)を通じて、中東の和平プロセスを支援している。
「これは難しいプロセスです。1つの成功モデルがバルカン半島に見られます。我々は、異なる民族グループとの共同活動を通じて協力関係の構築に取り組み、これらのプロセスは信頼構築、特に教育の分野でその構築に繋がってきました」と、坂本は語った。
「パレスチナで取り組みを行っていますが、1つの国の中での問題ではないため、とても困難です」と彼は語り、自身が所属する機関が開発と和平に取り組んでいることを付け加えた。
「イスラエルなしに合意には至れません。日本は中立国で、この解決策を達成する上で、同国に頼ることができます。バルカン諸国とは違い、パレスチナ問題では、1ヶ国以上の協力が必要なのです。パレスチナ問題には、イスラエルとヨルダンの協力も必要なのです」と彼は語った。
中立性により、目下必要なプロジェクトに確実に焦点を当てることができる。例えば、JICAは、日本による平和と繁栄の回廊構想の中核プロジェクトであるパレスチナのジェリコ農産加工団地の開発と管理能力の支援を続けている。
坂本によると、JICAの中核的使命は、人間の安全保障と開発に重点が置かれているという。「質の高い成長は、持続可能性と人々の自立、社会の安定性を確かなものにします。どれも、平和を強固なものにするための手段としての予防外交の一環です」と彼は語る。
知識と技術
アラブ・ニュースとの別の対談の中で、在レバノン日本大使館経済協力担当職員の踊場あいは、日本は日本の技術、スキル、知識を利用したJICAの研修プログラムを通じて、レバノンの当局者に技術支援を提供してきていると語った。
彼女によると、190人を超えるレバノン政府当局者が、過去35年間に様々な分野で研修プログラムに参加してきたという。多くの人に支援を拡大することに加え、この地域全体で、元研修生のネットワークも構築している。
「JICAの元研修生が設立したJICA卒業生会は、レバノンのJICAフォローアップ支援と一緒に非常に活発に活動しています」と、踊場は語った。「レバノンだけでなく、その他の中東の国々とも日本をつなげる架け橋として機能しています」。Leba-Jicaとも呼ばれるJICAレバノンの元職員らは、日本人はそれほどの知名度がなくとも協力することを選び、この地域は日本の専門知識の恩恵をきっと受けることになると話す。
文化交流
1985年にLeba-Jicaを設立し、その初代会長に選ばれたAntoine Ghorayebは、レバノンでの日本の経済・社会開発プロジェクトの理解と同時に、二国間の文化交流の理解にも貢献した。
この時以来、Leba-Jicaは、シリアのJICAの事務所との協力で大使館が主催した様々な活動に参加し、同会が準備し、JICA本部が資金提供したアクションプランを実行することで、様々な目標を達成してきた。
坂本威午審議役によると、JICAは展開している国々において、持続可能な開発の構築を目指しているものの、これは経済成長なしでは達成できないという。
「この開発は、単独では達成できません。我々には一緒に働く民間部門が必要なのです。この目的のために、我々には実業家や投資家にとって魅力的な環境を作り出すことができます」と彼は語った。
JICAは、インフラ開発と、人間の能力の開発に重点を置いていると、坂本は言う。彼は、北部ケセルワンと南部シドンの下水処理問題のために、レバノンに対してJICAがソフトローンを提供している例を挙げた。
シリアからベイルート
シリアからベイルートにJICAの事務所を移転させる判断の可能性について聞かれると、坂本はコメントをしなかった。
「安全をめぐる状況と、現在の国際社会の立場を考慮すると、シリアにおけるニーズを直接的に満たすことはできず、また、社会的一体性の問題もあります。我々は政治的な機関ではありません。むしろ、我々は開発機関なのであり、現在の政治的状況についてコメントする立場にはありません」と、坂本は語った。
しかしながら、もし状況が許すならば、同組織はシリアを支援する事業に喜んで参加するつもりだという。「現時点では、我々には日本政府と国際社会の間での政治的コンセンサスの形成が必要です」と、坂本は語り、シリア国内の人々との意思疎通に困難が生じていると付け加えた。
レバノンにおけるJICAの活動に関しては、状況は異なっていると、坂本は話した。「安全性に問題が残っているのは事実ですが、我々にとっては、レバノンの一人当たりの収入は、例えば、イラクの一人当たりの収入に比べれば、高いのです」と、彼は話した。
「我々は全ての国々に喜んで支援を提供したいのですが、リソースは限られており、我々は、例えばイラクでは、大規模な事業を抱えており、インフラ開発、人間の能力の開発などに取り組んでいます」と、坂本は語った。
「我々はレバノンのマクロ経済の状況に注目しなければなりません。我々は様々な分野での、特に技術協力を通じたレバノンでの協力の拡大に熱心に取り組んでおり、そのためには、レバノン政府が批准することになっている両国政府間の二国間技術協力協定が待ち望まれます」と彼は話した。