
メネクセ・トキャイ
アンカラ:トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は9月13日、東地中海における係争問題で譲歩した。ギリシャが領海と主張する海域で活動していた探査船にトルコ沿岸まで戻るよう命じたのだ。
東地中海では探査船「オルチ・レイス号」とトルコ海軍のフリゲート艦からなる護衛船団が、先月ギリシャのカステロリゾ島近くに出現して以来、東地中海では緊張が高まっていた。ギリシャ政府とEU、とりわけフランスのエマニュエル・マクロン大統領が繰り返し抗議したが、なしのつぶてだった。
トルコ政府が石油・天然ガスを探索すると同時にエルドアン大統領からは、ギリシャ・キプロス・フランスに向けて好戦的な発言や暴言が聞かれるようになった。ついこの間の12日にも、エルドアン大統領はマクロン大統領に対し「トルコ国民に口を出すな。トルコに口を出すな」と述べた。一方マクロン大統領は、トルコ政府が東地中海地域では「もはや同盟国ではない」と同じ週の前の段階で発言していた。
トルコのフルシ・アカル国防相は13日、探査船がトルコ沿岸まで戻ったことを認め、衛星画像により同船がアンタルヤ港付近に停泊しているのが確認された。
「これは前向きな最初の一歩だ」とギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は述べた。「こういったことがさらにあることを望む」
トルコの親政権メディアは、オルチ・レイス号が退いたことを「外交的解決への道を開く第一歩」と評し、ギリシャとトルコが協議を開始するためだと報じた。
しかし領海問題を外交的に解決しようという試みは、今までのところ実を結んでいない。
ギリシャのカテリナ・サケラロプル大統領は13日にカステロリゾ島を訪問し、トルコがギリシャ政府に対する「圧力を高めている」と非難した。
「ギリシャは現在、困難かつ危険な時期にある」と彼女は述べた。
「トルコ政府幹部は…ギリシャとトルコが数十年かけ築き上げた平和的な共存関係を土台から破壊しつつある。ギリシャとトルコはかつて両国間の海域を不可侵の国境線ではなく、対話の架け橋と捉えていた」
現在問題なのは、今回のトルコの動きにより領海問題を外交的に解決する道が開けるか否かだ。NATOとドイツは、トルコとギリシャの協議を仲介する姿勢を見せている。
トルコのフルシ・アカル国防相と軍最高司令部が13日アンタルヤに到着した。アンタルヤはギリシャのカステロリゾ島の真向かいにある。同日ギリシャ大統領のカステロリゾ島訪問が予定されていた。
「我が軍には強大な力があるが忍耐していると、ギリシャに対し繰り返し伝えている」とアカル国防相は親政府テレビ局「ア・ハベル」に語った。
トルコ・ギリシャ両国はフランスと同じくNATOに加盟しているが、特にフランス政府はトルコの動きを厳しく非難している。政府首脳間で非難の応酬がここまでエスカレートしたため、フランス・トルコ両政府にどの程度協議する気があるのか懸念されている。
マクロン大統領はさらに9月10日、イタリア・マルタ・ポルトガル・スペイン・ギリシャ・キプロスの首脳たちと共に「地中海クラブ」という新たなニックネームを冠した「ユーロメッド 7」の緊急会合を主催した。
EU全体としては東地中海の緊張状態への対処に関し意見が分かれており、外交を通じ持続可能な解決策を提示するには全会一致で対応する必要がある。
フランスの軍事力をちらつかせた「悪い警官戦術」に対抗し、ドイツのアンジェラ・メルケル首相は、トルコとギリシャの交渉を仲介し地域紛争発生のリスクを最小化し、EUの利益を守ろうと努めている。
オーストリア欧州安全保障研究所のマイケル・タンチュム教授は、天然ガスの取引が開始されたことで東地中海の領海問題の地政学的な力学関係が変わってしまったという。
「トルコにしてみれば、領海問題は基本的にギリシャが不当に主権を主張しているというものです。しかし今や、トルコはギリシャを支持するヨーロッパ・地中海諸国連合と対峙しなければなりません」とタンチュム教授はアラブニュースに語った。
「トルコは地中海地方全体とアフリカにおける自国の政治的・経済的影響力が将来的に危うくなると考えています」
フランス・キプロス・ギリシャが費用を負担し、EU各国首脳は9月24~25日に首脳会議を開き「むち」戦術を使って外交的解決を迫ることとなる。トルコ海軍の軍事演習や領海の主張に対しては経済制裁をちらつかせることとなる。
タンチュム教授によると、欧州理事会の会合とトルコに対する行動指針の決定内容が新たな転換期となるという。
「決定の方向性を決める上で最も重要な国はイタリアです。リビアにて、トルコはイタリアの経済的影響力を脅かしつつあるため、情勢が変化する可能性があります」と語った。
係争海域に平和と安定をもたらすための鍵が交渉であることには、すべての専門家が合意している。どの国も紛争勃発のリスクを回避したがっているからだ。
「キプロス天然ガス」CEOと北大西洋理事会のエネルギー専門家を兼務するチャールズ・エリナス氏によると、領海問題は軍事攻撃ではなく対話で解決すべきものという。
「もし対話がうまくいかなければ、国際裁判所で審議されることとなります。ギリシャ・トルコとも応じる姿勢を見せています」と語った。
しかしエリナス氏はさらに、対話を開始するにはその妨げとなる軍事行動を慎む必要があると付け加えた。
「この観点からしてオルチ・レイス号が退却したのは好ましい動きです。願わくは今後、しばらく平穏な時期が続いて仲介国が両当事者の間を取り持てればよいのですが」と語り、ギリシャとトルコが最終的に合意に至れば、東地中海における他の領海問題を解決するのに大いに寄与すると付け加えた。
しかしギリシャとトルコの係争地に天然ガス資源が存在する可能性は非常に低いままだ。
「天然ガスは関係悪化の理由ではなく、口実にすぎません。天然ガスを巡り戦争をするのは無意味です。ですから対話が鍵となるのです」とエリナス氏は語った。
トルコ・ギリシャの関係悪化と同時期に、エジプトとキプロスは海底に天然ガスのパイプラインを敷設する交渉を開始した。キプロスのアフロディーテ・ガス田からエジプトの首都カイロに至るパイプラインで、ヨーロッパ市場に売り込むための足掛かりにしようという目論みがある。