
Jumana Khamis
ドバイ: 政府がその効力と合法性を失うと、その結果は壊滅的なものとなる可能性がある。
過去10年間だけでも、アラブ諸国の統治者の中には、領土の支配だけでなく、基本的なサービスを提供する能力や集団的決定を下す権限さえも失っているものもいる。
シリアのような極端なケースでは、結果として内戦、経済崩壊、そして人々の大規模な移住が生じた。最近、この地域全体で非常に多くの前例があるので、アラブ人が政府の権威失墜が最大の脅威であると考えるのは、驚くべきことではないかもしれない。
アラブニュース/ YouGovによる汎アラブ調査では参加者に対し、何がMENA(ミーナ)地域における3大脅威と見なされるか、というランク付けを求めた。アラブ18カ国の3,097人の回答者のうち、66%が政府の権威失墜が最大の脅威であると答えた。続いて、経済の減退(43%)と過激なイスラムテロ(33%)が挙げられた。
受賞歴のあるジャーナリストであり政治評論家のBaria Alamuddin氏は、政府の権威失墜にはさまざまなレベルがあると話す。
一方で、リビア、イエメン、シリアなど、内戦状態にある国々が支配力を失っている。もう一方は、レバノンやイラクなど、おそらく麻痺状態にある国々だ。
アラブニュースーYouGovの調査によると、アラブ世界が直面する重要な脅威リストの第5位であるイラン(20%)は、イラク(48%)、イエメン(42%)、レバノン(42%)に対してより深刻な脅威をもたらしている。
「彼らは様々な危機に直面している。新型コロナウイルス、経済崩壊、統治の失敗した顧客主義モデル、そしてテヘランが支援する、国家よりも強くなることを熱望する準軍事組織だ」とAlamuddin氏はアラブニュースに語った。
レバノンの場合、彼女は、ヒズボラなどの派閥が、国の実存的危機を打開する解決策の実施を積極的に阻止し、政府の歯車を効果的に妨害していることを危惧している。
「レバノンとイラクの両方で、問題が改善する見通しが立つ前に、問題がはるかに悪化するのではないかと懸念している」と彼女は話す。「私たちがこれまでに目にしたのは移住の氷山の一角に過ぎず、若いレバノン人の半数以上が海外への移住を検討していると示唆する世論調査もある」
UNHCRは7月から9月の間に、21隻の移民船がレバノンを出てキプロスに向かったと報告した。2019年の記録の合計から大幅に増加する形となった。「離れていく人は最も優秀な卒業生になる傾向があり、彼らは海外のどこかで活躍する可能性が最も高い。これはレバノンにとっての悲劇だ」とAlamuddin氏は話す。
実際に、石油収入の減少は、地域全体の貿易と雇用創出に大きな打撃を与えた。経済の減退は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってさらに悪化し、安定の兆しは見られず、アラブの若者に「世代的影響」を与える可能性がある。
大西洋評議会の非居住者上級研究員であるMark Katz氏は、「不満を持った若者が多く、特に学位を持っていて、権利があると感じる若者にその傾向が強い」と話す。
Katz氏によるとYouGovの調査は、アラブ国民が、何がこの地域に害を及ぼしているのかを明確に理解していることを示している。西側の多くは、政府の権威失墜はイスラム過激派などが原因であるとし続けているが、「腐敗した統治」に対する反乱がはるかに一般的な原因であるように思われる。
Katz氏によると、石油価格の低迷が続くようなら、アラブ政府は増税を余儀なくされるだろうという。 その結果、政府はより効果的に国民の意見を聞かなければならなくなるだろう。
「これらの政権が、より一層市民に支援を求めなければならない場合、いくつか譲歩をしなければならないだろう…それがおそらくわずかな希望だ。長期にわたる低石油価格環境によって、これらの政権は変わらざるをえないだろう」と彼は話す。
Twitter: @jumana_khamis