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米国の政治的分裂さらに悪化 パンデミックで

2021年8月16日、マンハッタンのニューヨーク市庁舎前で行われた、コロナウイルスワクチン義務化反対の抗議活動。(ロイター)
2021年8月16日、マンハッタンのニューヨーク市庁舎前で行われた、コロナウイルスワクチン義務化反対の抗議活動。(ロイター)
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26 Aug 2021 10:08:46 GMT9
レイ・ハナニア
26 Aug 2021 10:08:46 GMT9

米国では分断が進んでいる。それもドナルド・トランプ前大統領反対派と、その後継者のジョー・バイデン大統領反対派の対立だけではない。

新型コロナウイルスのパンデミックは、米国の政治をひっかき回して政治家に頭を抱えさせただけでなく、国民のライフスタイルを変えるほどの新たな政治的分裂を生み出している。

このアメリカ人の心理に関する新たな現象を理解していないと、政治的トラブルに巻き込まれる可能性がある。特にアメリカの支援を求める国々やリーダーであればなおさらだ。

新型コロナウイルスが命に係わる病気であると、すべてのアメリカ人が同意しているわけではない。すべての人にとって致命的だとは思っていないのだ。そういった人たちは、このウイルスが命取りになるのは、癌、心臓病、喘息など、健康に関する様々な問題を抱えている人に限られると考えている。また、多くの病気が高齢であるほど悪化する傾向があるということもあり、パンデミックが脅威となるのは主に50歳以上の高齢者だけだと思っている。

激しさを増すこの議論の核心は、政府が人々にワクチン接種、マスクの着用、社会的交流の制限などを課す権利があるかどうかという点にある。

これらの予防措置は、深刻な健康問題を抑えるための取り組みというだけでなく、政府が行う、3億2800万人の国民すべてに憲法で保証されている自由を抑制する取り組みであると考える人もいるのだ。

しかし、このウイルスは命に係わる。誰もそのことを議論していないようだ。このウイルスは2019年12月に武漢にある中国政府の研究所で発生したと多くの人が疑っているわけだが、結果的に約63万人のアメリカ人が死亡した。アメリカの感染者数は3700万人以上だ。

死亡者数も感染者数も増え続けている。

このパンデミックに対する考え方は、二大政党の基盤となる考え方ときれいに重なっていることがはっきりした。

”保守派”の共和党は、個人は働いた分だけ報われるべきであり、発言や生き方に制限を加えるべきではないと考えている。人々は生活のために働くべきであり、彼らの好き嫌いに口をはさむべきではないと。

より”リベラル”な民主党は、政府は貧しい人々に経済的な福祉や医療支援を行うべきであり、経済的なコストは金持ちや富裕層が負担すべきだと考えている。政府は、生活困窮者や高齢者、特に貧困層に医療を提供すべきだと考えている。

共和党は、ウイルスの脅威は大げさに伝えられていると考えている。また、民主党が国の政治システムをコントロールするために利用し、それによってさらなる権力と支配力を得ていると考えているのだ。

レイ・ハナニア

両政党の人口統計が、そうした一般化された特徴を反映しているのは驚くべきことではない。共和党は、ウイルスの脅威は大げさに伝えられていると考え、民主党が国の政治システムをコントロールするために利用しており、それによってより多くの権力と支配力を得ていると考えている。民主党は、共和党がパンデミックを利用して、民主党の有権者を投票や政治活動に影響を与えるような困難にさらし、投票率を下げようとしていると考えている。

民主党の州政府がパンデミックへの対応としてマスクや予防接種を義務化する法整備を行う一方で、共和党の州当局はそういった法を阻止するために戦っている。

大統領は、連邦政府の職員が職場でマスクを着用し、職を続けるためには予防接種を受けることを義務付けるなどしているが、強制できる内容には限りがある。

しかし、国家的危機や政治的論争を両党が利用することは、決して新しい現象ではない。アメリカでは何十年、何世紀にもわたって行われてきたことである。18世紀には、人種で人を分類するために奴隷制度が使われていた。性別で分類する制限もあった。19世紀に奴隷制度をめぐる内戦が起こり、20世紀に女性の権利を求める運動が起こるまで、黒人や女性には何の権利も無かった。

現在、コロナウイルスと同様にアメリカ人を悩ませている問題が2つある。それは、民主党が支持し、共和党が反対する「人工妊娠中絶」と、「銃規制」である。

この2つの問題の間に、今回のパンデミックの議論がパズルのピースのようにぴったりとはまった。

政治的な争点ははっきりしている。「学校でマスクを着用させるべきか」、「全員にワクチンを接種させるべきか」、「新型コロナウイルスは本当に健康上の脅威なのか、それとも政治的利益を追求する人々が誇張しているのか」などだ。

これらの問題は、民主党と共和党の間の感情的なやりとりに利用され、個人の権利を損ない、政敵を攻撃して黙らせ、服従させるために使われている。

もっと酷いことに、このデータはその他の統計データと同様に扱われ、全体像を示すための根拠としてではなく、個人的な見解や意見の裏付けとして使うために常に乱用されている。

インターネットも役に立たない。新型コロナウイルスが脅威となるのは基礎疾患を抱えている人だけだという主張を擁護するデータは、予防接種を受けなかったりマスクを着用しなかったりすることが国民の幸福に対する国家的な脅威であると主張するデータと同じくらいたくさん見つかる。

こうした二極化により、ウイルスを撃退することはほぼ不可能になっている。というのも、国民の半分は強制力のある規制やワクチン接種の下で生活しているが、それでも絶対に安全というわけではなさそうだからだ。しかも残りの半分は、ウイルスの脅威は純粋に個人の選択の問題であるかのように生活しているのだ。

アメリカ人の半分は、「コロナウイルスが極左勢力に利用され、政府のリソースをサービスからリベラルな活動に分配するための手段として使われている」と考えており、残りの半分は、「パンデミックがあまりにも深刻なため、政府は何億人もの人々が働かずに家にいることができるような手厚い福祉プログラムを導入すべき」だと考えている。

一方、新型コロナウイルスのワクチンを製造する3大メーカーは、自社の製品で天文学的な利益を得ながら身を潜めている。ファイザー社は先週、同社のワクチンが2021年の最初の3カ月間だけで35億ドル以上の利益を生み出したと発表した。ワクチンを開発した他の2つの製薬会社、モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンも同様の利益を報告する見込みだ。

この利益の規模は、パンデミックが製薬大手に利用されているのではないかという世間の疑念を煽り、陰謀論や、ワクチン接種が長期的に予期せぬ結果をもたらすのではないかという不安を強固にしている。

結局のところ、こうした政治的な議論は、ウイルスを撲滅するための取り組みを妨げており、この分裂が国の決意を揺るがしていると考える人もいるようだ。

  • レイ・ハナニアは、受賞経験のある元シカゴ市役所の政治記者。コラムニストとして活躍している。連絡先:(個人サイト)www.Hanania.com 、( ツイッター)@RayHanania
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