Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • IISSマナーマ対話で中東における喫緊の安全保障上の課題が検証される

IISSマナーマ対話で中東における喫緊の安全保障上の課題が検証される

2020年12月4日、バーレーンの首都で開催された地域安全保障に関するマナーマ対話の会議でオンライン演説を行うマイク・ポンペオ米国務長官。(AFP通信)
2020年12月4日、バーレーンの首都で開催された地域安全保障に関するマナーマ対話の会議でオンライン演説を行うマイク・ポンペオ米国務長官。(AFP通信)
Short Url:
06 Dec 2020 06:12:05 GMT9
06 Dec 2020 06:12:05 GMT9
  • COVID-19のパンデミックを受けてのグローバル・ガバナンスは、土曜日の議論の主要な議題の1つだった
  • 中東の力と外交のバランスに構造的変化が起きる中、第16回目の年次フォーラムがバーレーンで開催されている

ロバート・エドワーズ

ロンドン:COVID-19が国家運営、多国間主義、ルールに基づく世界秩序に与える影響は、英国に拠点を置く国際戦略研究所(IISS)によりバーレーンで開催された第16回マナーマ対話の初日に議論される最も重要な議題となった。

12月4日から6日まで開催されるこの会議は、中東の紛争と安全保障というより広範なテーマを探求しているが、予想通りCOVID-19パンデミックの戦略的・地理経済的な影響が土曜日の議論の大半を占めていた。

IISSの所長兼最高責任者で、戦争・力・ルールというテーマを今年の焦点とするジョン・チップマン氏は、「今年、我々は国際問題における協力の欠如を目の当たりにした」と会議の冒頭で述べた。

「我々は今、現代的な目的のために十分に整備されていないと思われる古いルールに基づく秩序と、まだ戦略的で優れた設計になっていない新しい秩序との間で、危険なほどに揺れ動いている」

土曜日の午前中のセッションに登場したサウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン外相は、2020年を「前例のない」年と呼び、「国家の回復力と多国間協力の両方に永続的な痕跡を残しつつあるパンデミックがもたらす課題」があるとした。

2020年12月5日、バーレーンの首都で開催されたマナーマ対話で演説するサウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン外相。(AFP通信)

しかし、この1年は前向きな教訓となった年でもあり、「集団的な行動を通じて、危機的な状況下で国際社会がどのように団結できるかを示すことができた」と同氏は述べた。

ファイサル王子は、サウジアラビアの医療システム強化のために470億リヤル(125億3,000万ドル)を計上し、大規模検査と接触者追跡への多額の投資を行い、金利を引き下げ、民間部門の資金繰りと銀行の流動性を保護し、税負担を軽減するための経済介入を行うなど、パンデミックに取り組むサウジアラビア政府の「政府全体でのアプローチ」について概説した。

同氏はまた、11兆ドルの経済刺激策を表明し、パンデミック対策に210億ドル以上を約束し、発展途上国に総額140億ドルの債務救済を提供したG20国際フォーラムの議長国としてサウジアラビアが果たした役割を強調した。

「有効なワクチンが複数利用できる見通しを考えると、サウジアラビアは、世界に、特に最もワクチンを必要としている国々に、ワクチンを公正かつ迅速に分配することを確実にするために国際的なパートナーと協力することを目指している」と同氏は話した。

韓国のカン・ギョンファ外相は、ファイサル王子の見解を支持し、コロナウイルスのパンデミックの重要な教訓として、より緊密な協力の必要性を指摘した。

「COVID-19が発生した時、グローバル・ガバナンスはすでに低調で、多国間主義とルールに基づく国際秩序への信頼はすでに大きく損なわれていた」とカン外相は述べた。

「COVID-19はまさに、我々の相互関連性と共通の脆弱性、そしてそれゆえに、地球規模の連帯と国際協力の重要性を心から思い出させるものだ」

2020年8月19日、ベルリンで共同記者会見に臨むドイツのハイコ・マース外相(右)とサウジアラビアの外相ファイサル・ビン・ファルハン王子。(AFP通信/資料写真)

カン外相は、各国に対し、緊急時の医療体制を強化し、物資、治療法、ワクチンへの公平なアクセスを保証するために、相互に支援するよう促した。さらに具体的に、同外相は世界保健機関(WHO)を中心とした世界的な医療体制を強化し、衛生規則を改善し、将来のパンデミックに対する取り組みを合理化するよう国連に働きかける必要があると述べた。

これは、予算の拡大や景気刺激策から国境を越えた人々の移動の正常化に至るまでの経済協力を伴わなければならない、とカン氏は述べた。

ドイツのミゲル・ベルガー外務省事務次官は、議論の参加者たちの意見に賛同し、COVID-19を「我々の世代にとって最大の試練」であり、多国間システムにとって「最も深刻な課題」であると表現した。

「グローバル・ガバナンスの弱体化はCOVID-19危機の前から始まっていた。その理由は、多国間主義が失敗しているからではなく、一部の国が多国間主義を支持することを怠っているからだ」とベルガー氏は述べた。

ベルガー氏は、特にワクチンの開発におけるドイツの役割を誇りに思っていると述べ、アメリカの製薬大手ファイザー社と協力して世界で初めて認可された皮下注射ワクチンを開発したBioNTech社の功績を称賛した。

「極めて重要な第一歩として、非常に効果的なワクチンがすぐに利用できるようになることが期待されている。今、我々は公正で公平な分配を準備しなければならない…… これは、多国間主義の観点から見て、極めて重要なテストとなるだろう」とベルガー氏は述べた。

ベルガー氏は、サウジアラビアを「この非常に困難な危機の中を、強い決意と指導力をもってG20諸国を率いた」と称賛した。

「リヤド首脳会議は、この危機の影響に対抗するため、非常に重要な決定を下した」と同氏は述べ、先月オンラインで開催された首脳会議に言及した。

議論の中で浮上した最も興味深い問題の1つは、中東を含む各地で広がるワクチン候補の接種に対するためらいで、強制接種の可能性が出てきたことだ。

「国民に選択肢を与えることは常により良いことだと考えるが、その選択を可能にするための事実と証拠を提供する必要がある」とカン氏は危機管理における信頼の役割を強調した。

事実、噂、恐怖が混ざり合って広まる現象に言及し、カン氏は、「インフォデミックはパンデミックよりもはるかに危険だ。なぜなら、インフォデミックでは、事実と証拠の重要性が失われると、方向性を決めるための頼みの綱がなくなってしまうからだ」と述べた。

「フェイクニュース、誤報、偽情報…… 責任ある指導者達は、本当に我々がこれらを理解できるようにしなければならない」

2020年11月30日、シリア北東部ハサカ県のトルコ国境沿いにあるダルバシヤ付近の田園地帯で行われたロシア・トルコ合同軍事パトロール中に、COVID-19コロナウイルスのパンデミックのため医療用マスクを装着して一緒に歩くロシアとトルコの兵士たち。(AFP通信/資料写真)

カン氏は、人々が自分たちの「誤った情報の世界」にとらわれていれば、合意形成が非常に難しくなると付け加えた。

マナーマ対話は、パンデミックだけでなく、中東における力と外交のバランスの構造的変化や、民主党のジョー・バイデン新政権が誕生する際の大きな変化の可能性を背景に開催されている。

これらの変化の中心となっているのは、9月にUAE、バーレーン、スーダンがイスラエルとの国交を正常化したアブラハム合意で、数十年前にエジプトとヨルダンが同国と国交を正常化して以来、同国と国交を正常化したアラブ諸国はやっと5か国となった。これは一方で、イスラエルとパレスチナの紛争解決に新たな弾みをつけた。

「パレスチナとイスラエル、そしてサウジアラビアがどこかの時点でアブラハム合意に参加するかどうかについて言えば、サウジ(アラビア)にとって、イスラエル人とパレスチナ人を交渉のテーブルに戻すことが極めて重要だ。それがこの地域に持続的な平和をもたらすための唯一の方法だ」とファイサル王子は発言した。

議論の参加者は、オバマ時代に包括的共同作業計画(JCPOA=核合意)を立案した人物の1人であるジョー・バイデン氏が、今後のイランとの関係をどのように扱うのか知りたがっている。

トルコが支援するシリア反政府軍の戦闘員はCOVID-19コロナウイルスのパンデミックのためにマスクを装着し、2020年11月14日、反政府勢力が支配下に置くシリア北部のアレッポ県アフリン地方にあるジンダイリスの町で、新しい士官候補生たちの卒業式を祝う軍事パレードに参加した。この軍事パレードにはトルコが支援する反政府勢力の高官が出席した。(AFP通信/資料写真)

トランプ政権は、イランに核・弾道ミサイル計画を放棄させ、地政学的な力の誇示を止めるために「最大限の圧力」をかける作戦を展開してきた。バイデン氏が以前の状態に戻そうとしているのではないかと心配する声も多い。

「我々は前政権の融和政策から教訓を学んだ。札束を送ってもイランの行動は変わらなかった。イランはむしろテロ活動に資金を投じて拡大させた」とマイク・ポンペオ米国務長官は金曜日の夜、テレビ会議システムを通じて議論の参加者に語った。

「我々の作戦が機能しているのは分かっている。今、イラン人が必死になって制裁措置の緩和を得るために交渉の席に戻る意思を示しているからだ」

ドイツはJCPOA(核合意)の中核的な参加国の1つで、米国が2018年5月に離脱して以来、核合意を維持するために戦ってきた欧州列強の数か国の1つだ。ベルガー氏は発言の中で、ドイツや他の核合意参加国は「米国の新政権の方向性を見るのを待つことになるだろう」と述べた。

しかし、イランがJCPOAの重要な分野で合意に反していることや、最近のイランによる核研究開発の進展を受けて、参加国は核合意を改正する必要があると認識している、とベルガー氏は付け加えた。

———————

Twitter@RobertPEdwards

特に人気
オススメ

return to top

<