
ワシントン:アメリカ合衆国は、ロシアのS-400防空システムを昨年導入したことで、トルコに制裁措置を課す構えだ、とアメリカ政府関係者の2人をはじめとする4人の情報筋が、これはNATOに加盟する両国間の既に問題のある関係を、さらに悪化させそうな動きだ、と12月10日、ロイター通信に語った。
この以前から予想されてきた制裁措置は、トルコ政府を激高させ、ジョー・バイデン次期大統領の後継政権との関係を極めて困難にしそうだが、いつ発動されてもおかしくない、と情報筋は語った。
この制裁措置は、トルコの国防産業局と、同局のイスマイル・デミール局長が対象となる、と情報筋は語った。こうした制裁措置がトルコに損害を与えることは間違いないが、1部のアナリストたちが説明してきた厳しいシナリオより、制裁範囲は狭くなりそうだ。
このニュースの後、トルコリラは1.4パーセントも値を下げた。アメリカの制裁は、新型コロナウイルスによって引き起こされた景気低迷、2桁のインフレ、外貨準備の大幅減少に苦しむトルコ経済に悪影響を及ぼす可能性がある。
トルコ政府高官は、制裁措置が裏目に出て、2つのNATO加盟国の関係を損なうことになるだろうと語った。
「制裁措置は良い結果を生まず、逆効果です。関係を損なうことになるでしょう」と、同高官は語った。
「トルコは外交と話し合いで、こうした問題を解決することに賛成です。私たちは一方的な制裁の押し付けを容認できません」と、同高官は語った。
この制裁決定は、トルコをはるかに越えて影響を与えることになり、ロシアの軍装備品購入を検討して、アメリカの制裁措置に関して、繰り返し警告されてきたであろう世界中のアメリカの同盟国に、メッセージを送ることになるだろう。
トルコの指導者、タイイップ・エルドアン大統領は、アメリカの脅しが中身のないものである、と証明することを望んでいて、自分とアメリカのドナルド・トランプ大統領が深めた関係が、トルコ政府をアメリカの懲罰的措置から守ると思っていた。
エルドアン大統領と基礎となる関係を構築し、トランプ大統領は顧問団からの助言にかかわらず、トルコへのアメリカの制裁措置に長い間反対していた。トランプ政権関係者たちは2019年の7月に初めて、トルコ政府に対する制裁措置発動を助言した。当時、S-400がトルコ政府に納品され始めた、とこの問題に詳しい情報筋は、ロイター通信に語った。
しかし、たとえトランプ大統領が行動に出なくても、制裁措置は発動されそうだ、と情報筋は語った。
早ければ今週、上院が2021年度の国防予算の大枠を定める総額7,400億ドルの国防権限法の最終法案について、採決を取る予定だ。これが可決されれば、アメリカ政府は30日以内に制裁措置を課さざるを得ない。
制裁措置発動決定のタイミングは、この法案可決時点よりある程度先行するようになるものだ、と情報筋の1人が語った。
情報筋のうちの数人は、アメリカの制裁措置発動は12月11日と予想していると語ったが、そのうちの1人は、いつ発動されてもおかしくないし、多分早ければ10日かもしれないと語った。
だが、ますます高まるアメリカのトルコに対する圧力に、アメリカ政府はエルドアン大統領を、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、これ以上近づけたくない。プーチン大統領の狙いは、NATO同盟諸国の結束を弱め、分割することだからだ。
ロシアは昨年、地対空ミサイル、S-400を納品し、トルコはつい最近の10月、この防衛システムの実験を行った。トルコ政府はこのシステムを、NATOの防衛システムと統合されないので、いかなる脅威も引き起こさないし、この問題に関して、共同のワーキンググループの設置を呼び掛けた。
しかし、アメリカはS-400が間違いなく脅威を及ぼすと主張し、トルコ政府のS-400導入決定をめぐって、戦闘機F-35 の製造及び購入プログラムからトルコを除外する、と昨年発表していた。
ロッキード・マーティン社のF-35ステルス戦闘機は、アメリカが所有する兵器の中で最新鋭の戦闘機であり、NATO加盟諸国やアメリカの他の同盟国によって使用されている。
アメリカ国務省が、計画されたトルコへの制裁措置を変更して、その範囲は広めたり、狭めたりする可能性はまだある。
しかし、とにかく現在の形式での制裁措置発動は、目前に迫っている、と情報筋は語った。
ロイター通信