Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

生まれはブルックリン、しかし心はディルイーヤに

サウジアラビア建国に重要な意味を持つ歴史的な場所を、世界的な観光地へと発展させる506億ドルの大プロジェクトの指揮を執る、ディルイーヤ・ゲート開発局のジェリー・インゼリロ グループCEO。(提供写真)
サウジアラビア建国に重要な意味を持つ歴史的な場所を、世界的な観光地へと発展させる506億ドルの大プロジェクトの指揮を執る、ディルイーヤ・ゲート開発局のジェリー・インゼリロ グループCEO。(提供写真)
Short Url:
23 Sep 2021 12:09:57 GMT9
23 Sep 2021 12:09:57 GMT9
  • 「ここは母なる都市です」と、サウジアラビア発祥の地に500億ドルの改修を施しているCEOが語る

フランク・ケイン

ジェリー・インゼリーロ氏は、「ブルックリンからこの少年を取り去ることはできても、この少年からブルックリンを取り去ることはできない」という格言を、まさに地でいく人物かも知れない。

そのアクセント、物腰、服装、明るい笑顔、さりげない態度で冗談を言うところなど、インゼリロ氏のすべてが、マンハッタンからイースト・リバーを超えた対岸の、ブルックリン地区の出身であることを物語っている。

彼は、世界的なホテル業界の華やかさを最初に体験させてくれたこの場所を誇らしく思っている。たとえその体験が、10代の頃、橋を渡ってゴッサムホテルでウエイター助手という身分で働きに行っていたものであったとしてもだ。

彼にはホスピタリティー業界での生涯にわたる実績があり、つい最近にも、『ホテルズマガジン』誌に認められ、「2021年コーポレート・ホテリエ・オブ・ザ・イヤー」のタイトルを授与された。

国際的なホスピタリティー事業で輝かしい経歴を積んだ67歳のインゼリーロ氏に、サウジアラビアは、新たにやりがいのある任務を与えたようだ。

彼は、ディルイーヤ・ゲート開発局のCEOとして、サウジアラビア王国発祥の地である歴史的な場所を、世界的な観光名所に変貌させるという、506億ドルのプロジェクトを任されている。

彼は人を巻き込む熱意をもってその挑戦にのめり込んでいる。公開討論会、インタビュー、マスコミ向けイベントなど、あらゆる場でこのプロジェクトを称賛し、機会があれば次の決め言葉を言うことを忘れない。「ディルイーヤは唯一無比です(There’s only one Diriyah)」

最近のインタビューでインゼリーロ氏は、ディルイーヤのプロジェクトの本質を次のように要約した。「これはアラビア半島における、サウジアラビア王国にとっての、そしてアル・サウード家にとっての母なる都市であり、重要都市であり、発祥の地です」

しかし、ディルイーヤが、遺産や伝統と現代的な観光体験とを融合させるという比類のないサウジアラビアのプロジェクトであるとするならば、インゼリーロ氏はそこに、「ビジョン2030」構想にある、世界に向けて開放するというサウジアラビアの野心に相応しいグローバルなテイストを加えていることになる。

彼には、堂々とした国際的な経歴がある。マンハッタンのゴッサムホテルから、ラスベガスにホテル経営の訓練を受けに行き、その後にニューヨークへと戻り、そこから米国のホテルビジネスの階段を上って行った。

ヒューストン、ダラス、マイアミの仕事を次々と経験し、1990年、南アフリカの刑務所から釈放されたばかりのネルソン・マンデラ氏がニューヨークを訪れた際に、市長からその訪問の受け入れ準備を依頼されたことが、彼のキャリアにとっての「重要な瞬間」となった。

インゼリーロ氏は、アフリカ指導者であるマンデラ氏と個人的に親しい友人となり、今でも、連絡先の多い自身の携帯電話の中にあるマンデラ氏が一緒に写っている家族写真を人に見せるのを好んでいる。マンデラ氏の南アフリカ大統領就任式の計画を手伝ったり、伝説のホテル経営者であるソル・カーズナー氏といっしょに高級リゾート地サンシティの開発に携わるために、南アフリカへ移住した。

ホテルビジネスと娯楽やメディアの世界とのつながりを常に意識していたインゼリーロ氏は、カーズナー氏との仕事の後、IMGアーティスト社、そして現在も副会長を務めるフォーブス・トラベルガイドに勤務した。そしてその後、サウジアラビアから今回のディルイーヤ・プロジェクトの仕事を持ちかけられたのだ。

インゼリーロ氏は、この意欲的なプロジェクトが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の心の中で非常に大きな位置を占めていることを理解している。サルマン皇太子は、コロナ禍の困難な状況の中でプロジェクトを軌道に乗せ、予算を増やしてくれることまでした。

彼はサルマン皇太子への感謝と称賛を口にする。「皇太子は事業を進めるにおいて、一番賢明な方です」とインゼリーロ氏は、「ビジョン2030」実行戦略を加速化させている皇太子を、パリやマンハッタンの事業基本計画の立案者たちと比較して最近述べている。

とはいえ、インゼリーロ氏も、二聖モスクを擁し、伝統的イスラム文化や道徳に誇りを持つ国で、国際的な観光地を作ることの難しさに気づいていないわけではない。彼が最近説明してくれたところでは、ディルイーヤのプロジェクトを開始した頃、国際的に実施したサンプリングの回答者から「奇妙な」質問を受けたという。例えば、「ホテルで妻と同じ部屋に滞在することはできるのですか」などだ。

このような無知は、観光客が実際にディルイーヤを訪れるようになれば解消されるだろうと彼は考える。すでに訪れている人々は、「サウジアラビアの美しさに驚嘆し、人々の温かさに触れ、非常に楽しかったと言っている」という。

飲酒の可否やドレスコードといった問題はたいしたことではないと彼は考える。

「今ではレストランにも行くことができます。素晴らしいレストランがサウジアラビアにもあり、音楽が流れ、男性も、女性も、誰もが楽しんでいます。そこには何でも揃っています」と彼は最近のインタビューで語った。

ディルイーヤは、優遇を受けているプロジェクトであるとはいえ、「ビジョン2030」の旗の下で国内で進行している「巨大プロジェクト」のひとつに過ぎず、NEOM開発や、紅海開発やアル・ウラーなどの娯楽・文化構想など、他のプロジェクトと使えるリソースを争わなければならない。

しかし、インゼリーロ氏は次のように主張する。「それらは競合するものではありません。それらは互いを補完するように、非常に知的に計画されています」。彼はディルイーヤを、国内の他のレジャーや文化施設への玄関口と捉えているようなのだ。

「我々が最初に生まれたお気に入りの長男なのです。他のプロジェクトはどれも素晴らしく、我々はそれらを気に入ってはいますが、しかし、ディルイーヤは唯一無比です(There’s only one Diriyah)」とブルックリン訛りで語る。

ディルイーヤ: 過去、現在、そして未来
アラブニュース ディープダイブ特別版王国発祥の地へ
Enter
keywords

特に人気
オススメ

return to top