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レバノンでドメスティックバイオレンス倍増

レバノン、ベイルートの軍事裁判所の外で、治安部隊と軍の兵士たちが、反政府デモ参加者たちとつかみ合いになって、ある参加者が反抗の意思を示す。(AP通信)
レバノン、ベイルートの軍事裁判所の外で、治安部隊と軍の兵士たちが、反政府デモ参加者たちとつかみ合いになって、ある参加者が反抗の意思を示す。(AP通信)
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11 Feb 2021 05:02:24 GMT9
11 Feb 2021 05:02:24 GMT9
  • 財政危機と新型コロナウイルスのロックダウンが起きた後、4人の女性が殺害された

ナジア・フサリ

ベイルート:女性の権利団体によると、レバノンの経済・財政危機はこの国の悪化するドメスティックバイオレンスの原因となっているという。

レバノンが深刻な経済状況のどん底にあり、それを新型コロナウイルスのロックダウンと、昨年8月のベイルートを大破させた大規模爆発がさらに悪化させているなか、この1カ月で、4人の女性たちが殺害された。

「こうした暴力が増加するのは、経済・財政危機という理由が背後にあるのです」と、FE-MALEの共同創設者兼共同ディレクターのハヤト・ミルシャッド氏が、アラブニュースに語った。

「しかし、ロックダウン期間中の女性に対する暴力は、最も危険で、最もよく見られる暴力です。女性たちは父親、夫、兄弟といった男性親族の犠牲者になっています。このロックダウンにより、女性たちは自宅を離れることができず、他の人々と会うことさえできずにいるので、何事も女性のせいにして、女性に暴行を働く者たちの罪を正当化する父権的文化・精神構造に、レバノンでの暴力が起因していると知ることができないのです」

2月10日、トムソン・ロイター財団と共有している統計の中で、内務省警察軍(ISF)はレバノン家庭でのドメスティックバイオレンスの報告件数が、昨年の747件から増加して、この12カ月間で1,468件報告されていて、倍増したと述べていた。

一存ではメディアに話すことができないので、匿名を希望したあるISF関係者は、レバノンのドメスティックバイオレンスで、殺害された女性の人数も増加していたが、正確な人数はまだ確定していないと語った。

女性の権利団体、リソース・センター・フォー・ジェンダー・イコーリティー(ABAAD)が指摘した公式の数字も、似たような傾向を示している。同団体が受けている電話相談サービスの電話件数は、2019年の1,375件から2020年に4127件へと3倍に増えていた。

「女性に対するこんなに多くの暴力を、今まで目撃したことはありませんでした」と、弁護士のジャファー・モハマド・ハシミ氏は、アラブニュースに語った。

ハシミ氏はドメスティックバイオレンスの犠牲者、ララ・チャヒネさんの代理人を最近務めている。チャヒネさんが9日に仕事から帰宅後、夫に先の尖ったもので殴られたとされており、夫が逮捕されていた。現在チャヒネさんは肺、肝臓、顔面を負傷したために、病院に入院して治療を受けている。

「この事件は単なる暴行ではなく、殺人未遂に分類されています」と、ハシミ氏は語った。この夫の犯罪動機は、チャヒネさんが自分その5歳子どもの扶養手当を要求していたことです。夫は離婚を拒絶していて、チャヒネさんを相手取って、自分に服従し、共同生活を求める訴訟を起こしていました」

レバノンは12月に、セクシャルハラスメントを法的に禁止し、国内のドメスティックバイオレンス法を改正したが、夫婦間レイプや宗教裁判所の管轄となる個人法は犯罪とせず、離婚や子どもの親権のような問題で、女性たちに不公平な取り扱いをしている。

新型コロナウイルスのロックダウン期間中に、家庭内暴力が世界的に増えていることを、国連は「陰のパンデミック」と称しており、経済危機の悪化により、こうした暴力はさらに深刻になっている。

「こうした種類の犯罪は、特にロックダウン期間中に著しく増加しています」と、ゼイナ・カンジョさんの代理人を務める弁護士、アシュラフ・アル・ムーサウィ氏は語った。カンジョさんはトルコに逃げる前に、夫に絞殺された。

アル・ムーサウィ氏は、こうした犯罪が増加している背後には、経済・社会・文化的動機が存在すると力説し、次のようにも語った。「犯罪パターンは変化しており、さらに凶悪化しているのです」

先月のアッカール郡で起きた別の事件では、ISFが10代の少年を逮捕した。その前に少年は、52歳の叔母から性的な誘惑を拒絶された後、叔母を刺殺したと告白していた。この10代の少年は後に、叔母が死亡した後に性的暴行を働いたことを認めた。また少年はその犠牲者から金の指輪も盗んでおり、指輪は後になって、少年の家からISFが回収した。

「法的訴追から免れるために、特定の政党や民兵組織を使う者もいます」と、ミルシャッド氏は語った。「そして、こうした犯罪の認識を向上させる研修を受講しているにもかかわらず、警官はまだ虐待を受けた女性に、夫とのいざこざを解決するように伝えていて、女性のもとに来ることはありません」

レバノンで現在の経済構造は破壊されているので、ドメスティックバイオレンスの解決は、政権上層部から着手する必要がある、とムーサウィ氏は語った。

治安と司法機関の憂慮すべき不備と、レバノン国家への不信こそが、殺人者たちに犯罪を促している全ての原因です」と、同氏は語った。「起訴されてから公判が何年も続き、刑期が減刑されるとなると、暴行する者は恐れることなく、自分の妻や、さらに子どもたちでも殴るのです」

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