
エフレム・コサイフィ
ニューヨーク:「シリア内戦は、シリアだけの戦いではありません」と、国連事務総長のアントレス・グテーレス氏は火曜に述べた。「戦争と、それが引き起こし続けているとてつもない苦しみを終わらせることは、集団責任です。今、私たち全員がその目標達成に向けて全力を尽くさなければいけません。」
紛争解決に向けた政治的努力を再び呼びかけ、軍事的解決があってはならない、と彼は繰り返した。シリアは「戦争なくば平和なしという方向へ流され続けており」、中途半端な状態にあるといえる、と彼は付け足した。
国連総会議長のヴォルカン・ボズキル氏は、事務総長が同国の最新情勢についてメンバーに概要を伝えられるよう、非公式な総会本会議を招集した。グテーレス氏が発言したのはその場でのことだ。議題には、決議2254推進の進展が含まれた。2015年12月に採用された、人道的危機や人権が問われる状況で停戦と政治的解決を要請する決議だ。
グテーレス氏は、Syrian Constitutional Committee(シリア憲法委員会)による「信頼に足る前進」が、決議2254推進に向けての重要なステップになると述べた。これには国連の援助の下、自由で公平な選挙への道を開く新しい憲法の起草が求められる。そうすれば、ディアスポラを含む全てのシリア国民が投票権を得ることになる。
「これまでの委員会による成果は、私の期待を下回っています。何より、シリアの人々の期待に応えることができていません。」と彼は付け加えた。近日開催予定の第6回委員会についてグテーレス氏は、国連のシリア特使であるゲイル・ペデルセン氏による呼びかけを繰り返した。明確な目標を設定して成功見込みのある作業方法を確立し、2人の共同議長間における協力を強化する、というものだ。
シリア国民の運命が「彼ら自身の手にのみ」握られている訳ではないと再び強調しつつ、これが信頼を築くための基礎になり得る、とグテーレス氏は語った。シリアでは、海外からの複数の武装部隊が活動しているのだ。
2020年3月に合意されたアスタナ和平協議後、「比較的穏やかな」状況が12ヶ月続いている。「それでも空爆、砲撃や小型武器による襲撃の応酬が続き、不安定な1年でした」と彼は述べた。
「比較的穏やかな傾向」への直近の重大な課題には、3月21日に起こった複数の出来事が含まれる。アタリブとアレッポでは国連が援助する病院が攻撃され、トルコからシリアへ送られる国連の人道支援物資が通るバブアルハワ国境付近では空爆が起こり、アレッポの住宅地は爆撃に見舞われたのだ。
シリア内戦は、3月15日に10年目を迎えた。その口火を切ったのは、改革を求める平和的なデモ参加者に対しアサド政権軍がとった残忍な取り締まりだった。以来シリアの人々は、「今世紀、世界が目撃した最も深刻な犯罪のいくつかを」耐え忍んでいる、とグテーレス氏は述べた。
それら犯罪の加害者らが責任を問われないまま許されている状況を非難しつつ、「過去10年間の、シリアにおける人権と人道法の重大な侵害には良心が痛みます」と彼は付け加えた。
戦争の継続的な影響は、COVID-19パンデミックによって一層悪化している。パンデミックは、今年いっぱい同国に影響を与え続けると見られている。グテーレス氏は、シリアへワクチンを送る計画が進行中であり、人口の3%が接種するのに足る最初の出荷が既に完了している、と述べた。
シリア全土の1200万人、隣国の難民約600万人への人道的支援には100億ドルの寄付が必要であるとして、グテーレス氏は加盟諸国に「寛大なサポート」を呼びかけている。
前職で難民高等弁務官を務めたグテーレス氏は、その期間中にイラクとパレスチナから、両国に避難所を求めた何百万人もの難民を迎えている。彼はその際、シリア難民の「大変な苦しみ」を目撃しただけでなく、シリアの人々の何年間にも渡る「計り知れない寛容と団結」に刺激を受けたと語っている。
事務総長はまた、シリアで「独裁的に自由を奪われている数万人のシリア国民」に、「緊急の注意」を向けるべきであると世界へ呼びかけた。そこには抑留者、拉致被害者、そして強制的に存在を消された人々が含まれる。
「11歳という幼い男の子を含め、男性も女性も抑留されています。彼らはレイプや、性器切除を含む性的拷問などの幅広い性暴力を受けています。」人権保護を呼びかけ、全ての拘留センターへのアクセスを人道支援組織に許可するよう求めながら、グテーレス氏は述べた。
「10年の戦争を経て多くのシリア国民は、争いから抜け出すための道を築くにあたり、国際コミュニティの協力を得ることに自信を失っています。」と彼は述べた。だが、難民たちの安全で自主的な帰国を諦めてはいない。それに必要な条件をもたらす政治的解決を追求するため、絶えず進み続けることを彼は誓った。