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国連、アサド政権は「不正な選挙」を予定するが、シリア人の苦しみは変わらないと指摘

リンダ・トーマスグリーンフィールド米国国連大使。(AP)
リンダ・トーマスグリーンフィールド米国国連大使。(AP)
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29 Apr 2021 05:04:31 GMT9
29 Apr 2021 05:04:31 GMT9
  • 米国国連大使は、難民を含むすべてのシリア人が投票できるようになるまで「我々は騙されない」と述べ、人道支援を「交渉の武器化」している政権を非難した
  • 国連シリア特使は、予定されている選挙は安保理決議を遵守していないと述べる一方で、紛争中の女性の苦しみを強調した

エフレム・コサイファイ

ニューヨーク:米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は水曜日、アサド政権が新憲法の起草を妨害していると非難した。また、「5月26日に行われるいわゆる総選挙は、自由でも公正でもなく、シリア国民を代表するものではない」と警告した。

「アサド政権が不正な選挙を行っている間も、シリアの人々は苦しみ続けています」とトーマスグリーンフィールド国連大使は訴えた。

トーマスグリーンフィールド国連大使は、シリアの選挙は、安全保障理事会が全会一致で命じたように、新憲法の下で、国連の監督の下で行われなければならないと述べている。

「アサド政権は、難民、国内避難民、離散シリア人(diaspora)がシリアのあらゆる選挙に参加できるような措置を確保しなければならない。それまでは私たちは騙されることはない」とも国連大使は主張した。

国連大使はまた、ワシントンは「(安全保障理事会)決議2254で求められている政治改革の達成が進展しない限り、政権に利益をもたらす復興援助を支持しない」と繰り返し述べた。

国連大使はさらに、援助物資の輸送を「妨げ、武器化している」とアサドを非難している。人道的状況が悪化の一途をたどる中、特使は理事会メンバーに対し、バブ・アル・ハワ国境の通行を再承認し、バブ・アル・サラムとヤーロビイェでの越境も復活させるよう求めたが、ロシアと中国が拒否権を行使している。

「国連が国境を越えた支援のメカニズムへのアクセスを失うようなことがあれば、シリアの新型コロナウイルス感染症危機はひどいものから悲惨なものへと変わっていくでしょう」とトーマスグリーンフィールド国連大使は訴える。

「シリア北西部に住む400万人の人々は、毎月1,000台の国連のトラックが越境ポイントを利用することに依存しています。代替手段はありません。国連の国境を越えた人道的メカニズムの範囲と規模に匹敵するものはありません。実際のところ、たった一つの越境ポイントでは膨大なニーズに対応できないことは明らかです」と述べてる。

国連大使はまた、ルクバン難民キャンプで起きている「深い道徳的な誤ち」を特に取り上げた。

「アサド政権とロシアは、国連が必要としている人々に医薬品を届けることを許可しないため、このキャンプの住民は16ヶ月間、医療援助を受けられないでいます」と国連大使は窮状を伝えた。

「私たちは、アサド政権とロシアに対し、キャンプへの自由な人道的アクセスを許可するよう求めます。これらの人々は都合よく利用する駒ではありません。援助を政治的に利用することは許されません」

安全保障理事会でのロシア側の対応者であるヴァシリー・ネベンジャは、シリア政権を擁護し、そのレトリックを繰り返すことで対応した。彼は、人道的状況の悪化は「西側諸国による容赦ない制裁圧力」のせいであり、治安状況の悪化は「民間人を人間の盾にするテロリスト」のせいだとした。

また、来月の選挙実施の見通しについては、「国家の機能を回復する」ためのシリア政府の取り組みの一環であると歓迎した。

ネベンジャは、「一部の国が今度の選挙実施に反対し、選挙が違法であるかのように宣言しようとしていることは残念です。シリアの人々の内政に干渉することは容認できず、国際法の既存の規範にも反している」と述べた。

また、「次期選挙の否定的な背景情報」は、憲法委員会の活動とは無関係であるとした。 

ゲイル・ペダーセン国連シリア担当特使は、5月26日に予定されている選挙は、現行のシリア憲法の下で招集されたものであり、安保理決議2254で定められた政治プロセスの一部ではないと繰り返し述べた。

「国連は今回実施されようとしている選挙に関与していないし、関与する権限もない」と特使は述べた。「決議2254では、離散シリア人(diaspora)を含むすべてのシリア人に参加資格を与えた上で、透明性と説明責任に関する最高の国際基準に則り、国連の監視下で運営される新憲法に則った自由で公正な選挙の実施に至る政治プロセスを促進することを国連に義務付けている」

特使は、紛争の政治的解決に向けた「積極的な模索」を優先するよう理事会メンバーに求め、「シリアの基準では」比較的平穏な1年であったにもかかわらず、この1カ月の出来事は状況がいかに容易に悪化するかを示していると述べた。

シリア北西部では戦闘が大幅に拡大しており、国連の人道支援が提供されている人口密集地の国内避難民キャンプに近いアレッポ西部の国連支援病院も空爆された。また、同市の住宅地も砲撃されている。

一方、「イスラム国」はシリアの中央部と北東部で攻撃を続けている。ハマの農村部では、数十人の民間人が誘拐されるという事件も発生した。

ペダーセン特使は、「このような事態が発生している中で、その危険性に無頓着になってしまうのは、あまりにも容易だ」と述べた。

特使はまた、今週ジュネーブでシリア女性諮問委員会(The Syrian Women’s Advisory Board)と会談したが、そのメンバーからは、「外部関係者間の思惑の相違がシリアの紛争を永続させている」との懸念の声が聞かれたという。

「すべてのシリア人が直面している課題に加えて、多くの女性が性的・ジェンダーに基づく暴力、早期及び強制結婚、人身売買などを経験していることも忘れてはならない」とも特使は述べた。

「そして、男性が多く死んだり、重傷を負ったりしている中、暴力、テロ、避難、不安定、困窮、パンデミックなどの背景がありながら、これまで以上に多くの女性が家計を支えざるを得なくなっている」

ペダーセン特使によると、彼が話しを聞いた女性たちからは、拘束されたまま、あるいは拉致されたまま行方不明になっている数千人の人々の問題についても、これまでほとんど進展がなかったことから、進展の必要性が強調されたという。

「拘束者、拉致被害者、行方不明者の問題に関する進展を妨げることの重大性を改めて強調したい」と特使は説いた。

「この件がほとんど解決せずに凍結されている限り、多くのシリア人は先に進むことを考えることすらできず、シリアの社会基盤は回復しない」

また、ペダーセン特使は、食料価格が歴史的な高値を記録し、インフレが収まる気配がない状況など、シリア人が直面している経済的困窮に懸念を示した。

「現在、1,240万人もの人々が食糧不足に陥っており、昨年だけで450万人も増加している」と述べた。「また、燃料不足も相変わらず大きな問題となっている」

「シリアの人々の命を救うためには、さらに12ヶ月間、国境を越えた大規模な対応が必要です。理事会のメンバーには、そのためのコンセンサスを得ることに集中していただきたい」と訴えた。

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