
カリーン・マレック
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ドバイ:35年間映画上映が禁止されていたサウジアラビアで、上映禁止がようやく解かれたのは3年前のことである。それ以来、サウジアラビアの各地で映画館が建設され、国内の映画産業は活性化し、自国の俳優の活躍の場も広がっている。
現代のサウジ映画界の新星といえば、「アナザー・プラネット」や「ボクシング・ガールズ」などのテレビドラマでブレイクし、映画では「ジュヌーン」や「Roll’em」に出演したことで知られるスマヤ・リダだが、この二つの映画は上映合法化後にサウジで公開された初期の映画に入る。
幼い頃に学校の演劇に出演していたリダは、自分の天職が何であるかを知っていた。「父が持っていたソニー製のカメラを使って、妹や弟と一緒に短編映画を作っていました」と、32歳の彼女はアラブニュースに語った。
「私は12歳の時に実際に短編映画の演技と監督をしました。私の作品を家族全員が集まって鑑賞するのが好きで、当時の私にとって映画は私の人生の全てで、情熱に満ちていました」
サウジアラビア出身のリダは、10代で英国に渡り、ロンドンのイーリング地区にある独立系エリート校、キング・ファハド・アカデミーに入学した。その後サリー大学で国際マーケティングマネジメントの修士号を取得しながらも、女優としての活動を続け、何本かのコマーシャルに出演している。
大学卒業後、5年間はビジネスの世界に身を置いていたが、その間も舞台や映画への強い憧れを抱き続けた。彼女をまた映画界へと導いたのは、偶然の出会いがきっかけだった。
「冷酷なビジネスの世界で多くの仕事をしてきた私は、ある日、サウジアラビアの映画、コマーシャル界の監督で有名な、数々の賞を受賞しているアリ・アル・スマインに偶然出会い、彼が私を再び演劇の世界に導いてくれたのです」とリダは語った。
2017年にジェッダのオフィスにアル・スマインを訪ねた際、リダは演技のクラスに参加した。観客を前にして演技をすると、慣れ親しんだアドレナリンが身体中をほとばしった。
「その時の気持ちは言葉では言い表せません」とリダは語っている。「その日は本当に緊張してドキドキしましたが、とても懐かしい感じがして、アル・スマインにショーに出演したいと伝えました」
ほどなく、リダはオーディションを受け、最初の役を得た。準備のために、彼女は4カ月間の集中的な演技コースに申し込むと共に、サウジアラビアには、高度な演技コースがまだなかったこともあり、評判が高いトルコ人インストラクターによる1対1の演技指導も受けた。
「サウジアラビアには、演技やパフォーマンスの育成機関がなかったので、早道を取るしかありませんでした」とリダは語った。
「俳優は全員指導者を必要としています。彼らを通じて、第三者の視点で演技を評価、指導してもらうことが大切です」
現在、リダは英語とアラビア語の両方で演技を行っている。あるショーでは、彼女はベドウィンのアクセントをマスターしなければならなかったこともある。「その時は最初ちょっと大変でしたが、楽しい経験になっています」とリダは語った。
リダの最新出演作は「ラプチャー 破裂 (Rupture)」という映画で、監督はハムザ・カマル・ジャムジュム、プロダクションはアイマン・カマル・コジャ、MBC Studiosが資金提供したサウジアラビアで制作されたサイコスリラーである。
主演のリダは、サウジアラビア人女性として、結婚生活、ひいては自らの人生を守るために、歪んだ心を持った悪人から逃れようと奮闘する姿を演じている。
「『タイタニック』にも出演しているビリー・ゼインとも共演しましたが、彼は素晴らしい人間であると同時に、とてつもない才能を持った俳優でした」とリダは語った。
「この映画には、スリリングなストーリーの中に、いくつか強いメッセージが巧みに組み込まれています。その一つは、海外に移住しても、自らが寄って立つ文化的価値観を守ることです」
「二つ目は、プライバシーの重要性とソーシャルメディアで他人と過剰に情報共有する危険性について、そして三つ目は、結婚生活における依存関係と個人の自由のバランスをどのように取るべきかということについてです」
リダにとって、この作品の最も重要な部分は、彼女自身、家族、そして自らの信条のために立ち上がる、強くて自立したイスラム教徒の女性を演じる機会を得たことである。
「この作品で、サウジアラビアの才能ある映画監督やプロデューサーと一緒に仕事ができたことは、正直、光栄であり、貴重な機会です」とリダは語っている。
「ハムザの演出を楽しむことができました。彼のポジティブなエネルギーと情熱がヒシヒシと伝わってきました。ラマダン明けには撮影を終えられると思っています。この映画の公開が待ち遠しいです。この映画は、サウジアラビアの女性の内心の苦闘を取り上げる数少ない長編映画作品なので、完成がとても楽しみです」とリダは語った。
保守的な時代の厳しい社会規範と男女の隔離により、リダが成長期にあった頃はサウジアラビアで女優は非常に珍しい存在だった。家族からのサポートも重要だったが、同時にサウジアラビアの社会が開放されたことも決定的に重要な役割を果たしている。
「ビジョン2030 が採択され、開始した時に合わせて女優となったので、とても良いタイミングでした」とリダは語る。
サウジアラビアでは、石油から経済を多角化する「ビジョン2030」計画のもと、芸術、若者が活躍する機会の創出、女性の社会的・経済的エンパワーメントを重視している。
その結果として、サウジアラビアの女性たちは自らを表現できるようになり、自分の強みも見付けられるようになっている。リダも、こうした変革により、プロの女優になるためのきっかけをつかんでいる。
「この変革により、自分を理解することができました。私は多くのことを語りたかった。サウジアラビアには語れることが多くありますが、私は多くを感じ取り、感じたことを表現し、リスクを冒して共有し、またアーティストとして、勇気に溢れつつ、多感でもありたいと思います。とてもやりがいに満ちています」
「また、本当の意味での充実感は、人類に課せられたあらゆる制限を克服することにあります」
「演じることがとても楽しいことを知りました。大きく成長する機会であり、充実していて、魂や自分の内面を鍛えることができます」
アーティストとしてのリダは、まだ自分探しの旅の途中で、カメラの前で演じる自信をつけている最中である。リダは新しい役柄に挑戦することで、自ら成長を促したいと考えている。「自然に、そして誠実に。演ずることは継続的なプロセスであることから、常に学び、進化し続ける必要があります」
母国のサウジアラビアについては、多くの変化を目の当たりにし、同国の映画業界を揺るがす若い俳優や監督たちの新しい波に参加できることに興奮しているとリダは述べている。「とても嬉しく、将来が楽しみです」と語る一方で、まだまだ道のりは長いことも認識している。
「最近はとても情熱的な俳優を見かけますが、自分たちが思っている以上に自らを律する必要があるとつくづく思います。舞台や演劇の学位を取得すれば、それで終わりとなるわけではなく、継続的な努力が必要とされます」
リダはまた、より多くのサウジアラビアの若者が、自らの物語を世界に伝えるために出てくることを望んでいる。「また、俳優に投資するだけでなく、脚本家やプロデューサー、監督にももっと投資する必要があります。なぜなら、映画プロダクションは一人の人間だけで完成する仕事ではないからです」
「映画は、スクリーンに映る俳優だけで完成するものではありません。その背後には膨大な制作背景があります」
投資、トレーニング、機会がなければ、制作サイドの潜在能力が活かされることはない。映画産業にとって、素材とは個々の才能を意味するが、新生サウジアラビアには才能にあふれた人材が多くいる。
「可能性は無限大です」とリダは語る。「無限であり、進化し続けています」
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ツイッター: @CalineMalek