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国連事務総長、東エルサレムでの衝突激化を受けイスラエルに威力行使の自制を要請

エルサレムでの緊張激化に対する反イスラエル抗議活動で、タイヤを燃やすパレスチナ人デモ隊。イスラエル占領下のヨルダン川西岸ラマラ近くのユダヤ人入植地ベイト・エル付近、2021年5月10日。(AFP / アッバス・モマニ)
エルサレムでの緊張激化に対する反イスラエル抗議活動で、タイヤを燃やすパレスチナ人デモ隊。イスラエル占領下のヨルダン川西岸ラマラ近くのユダヤ人入植地ベイト・エル付近、2021年5月10日。(AFP / アッバス・モマニ)
アルアクサ・モスクでパレスチナ人デモ隊と衝突するイスラエル治安部隊。エルサレム、2021年5月7日。(AFP / アフマド・ガラブリ)
アルアクサ・モスクでパレスチナ人デモ隊と衝突するイスラエル治安部隊。エルサレム、2021年5月7日。(AFP / アフマド・ガラブリ)
エルサレムでの緊張激化に対しイスラエルに抗議するパレスチナ人デモ隊。イスラエル占領下ヨルダン川西岸ラマラ近くのユダヤ人入植地ベイト・エル付近、2021年5月10日。(AFP / アッバス・モマニ)
エルサレムでの緊張激化に対しイスラエルに抗議するパレスチナ人デモ隊。イスラエル占領下ヨルダン川西岸ラマラ近くのユダヤ人入植地ベイト・エル付近、2021年5月10日。(AFP / アッバス・モマニ)
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10 May 2021 12:05:24 GMT9
10 May 2021 12:05:24 GMT9
  • アントニオ・グテーレス事務総長、イスラエルはパレスチナ人が暮らす家の「取り壊しと住民立ち退きを中止しなければならない」
  • アメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、イスラエル側と電話会談し、衝突の拡大に対し「深刻な懸念」を表明

ニューヨーク/エルサレム:国連のアントニオ・グテーレス事務総長の見解では、イスラエルは「威力行使を最大限自制し、平和的な集会を自由に開く権利を尊重する義務がある」と9日国連の報道官が発表した。東エルサレムのイスラム教第3の聖地「アルアクサ・モスク」周辺では緊張が高まっている。

10日未明にイスラエル警察がまた再び東エルサレムでパレスチナ人デモ隊と衝突した際、グテーレス事務総長が声明を出した。ユダヤ教右翼団体が例年通り旧市街を国旗を掲げてパレードし、係争地がイスラエル領と主張しようとしていた前日のことだった。

国連のステファン・ドゥジャリック報道官は声明で「事務総長は、占領下の東エルサレムで衝突が止まらず、パレスチナ人家族が立ち退きを迫られていることについて深い懸念を表明している」と述べた。

「事務総長はイスラエルに家屋取り壊しと住民立ち退きを中止するよう要請している」

グテーレス事務総長は、ユダヤ・イスラム教共通の聖地の現状を維持し尊重するよう求めた、とドゥジャリック報道官は述べた。

 

深夜の衝突により、ユダヤ教徒の祝日「エルサレムの日」の関連行事が行われる10日に衝突が激化する可能性が高まった。イスラエル警察は9日のデモを許可した。しかしそれ以前に何日も騒動が続いており、火種となった聖地ではイスラエル人対パレスチナ人の緊張が高まっていた。近隣のパレスチナ人地区ではユダヤ人入植者たちが数十名のパレスチナ人を家から立ち退かせようと圧力をかけている。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、エルサレムの日を前にした9日の特別閣議で演説し、イスラエルは「いかなる過激派に対してもエルサレムの平穏を乱すことは許さない。政府は、断固として法と秩序を維持するため責任をもって行動する」

「引き続きあらゆる信教の自由を保障するが、暴力的な妨害行為は許されない」とネタニヤフ首相は述べた。同時に「エルサレムに建物を作るなという圧力を断固拒否する」とも述べた。

アメリカは再びエルサレムの状況について「深刻な懸念」を表明した。イスラム教・ユダヤ教双方の聖地があるエルサレム旧市街地でのパレスチナ人とイスラエル警察の衝突や、パレスチナ人家族が立ち退かされる恐れがある点などに触れた。

アメリカ政府が懸念を表したのは、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官とイスラエルのベンシャバット安保顧問の電話会談でのことだ。サリバン補佐官はイスラエル政府に「エルサレムの日の関連行事中の平穏を確保するため、適切な措置を講じる」よう要請した、と国家安全保障会議のエミリー・ホーン報道官が出した声明で述べられている。

エルサレムの日とは、旧市街やデリケートな聖地を含む東エルサレムを1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領したことを祝う日だ。しかし、毎年恒例のパレードを挑発的なものだとみる向きは多い。ユダヤ教極右団体が、警察に守られて旧市街のダマスカス門・パレスチナ人地区を通って「嘆きの壁」まで行進する。嘆きの壁はユダヤ教徒にとり最も神聖な礼拝所だ。

今年のパレードは、イスラム教徒の聖なる月ラマダンと重なっている。宗教的な緊張が高まっており何週間も衝突が続いている。おまけに近隣のシェイク・ジャラー地区での立ち退き計画に関するパレスチナ人の怒りが重なり、極めて不安定な1日となる可能性もある。

元イスラエル国防省高官のアモス・ギラド氏は、軍関係者向けラジオ局の番組で、右翼団体のパレードは中止させるか少なくともダマスカス門を通るのは禁止すべきだと発言した。さらに「火薬だるが燃えており、いつ爆発するともしれない」と述べた。イスラエル公共放送協会(Kan)によると、パレードの最終ルートはまだ決まっていないという。

最近、パレスチナ人数十名が旧市街のアルアクサ・モスク近くでの衝突事件で負傷している。アルアクサ・モスクは、ユダヤ教徒には「神殿の丘」イスラム教徒には「高貴な聖域」として知られる場所に建てられている。ユダヤ教では最も神聖な場所で、イスラム教では3番目に神聖な場所と見なされている。この場所は常に、深刻な暴力沙汰を引き起こしかねない火薬庫としての危険をはらんでいる。

「占領者は火遊びをしており、エルサレムに手を付けるのは非常に危険な行為だ」と過激派組織ハマスのサレハ・アロウリ最高幹部はハマスが運営するアルアクサ・テレビの番組で語った。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、西岸地区とガザ地区に加えて東エルサレムを占領した。パレスチナ側は、3つの地域の全面返還を求めており、将来は東エルサレムを首都とした独立国家の樹立を目指している。

東エルサレムでの立ち退き計画に加えて暴力沙汰が続発しているため、アラブ地域のイスラエル友好国からは激しい非難の声があがり、アメリカ・ヨーロッパ・国連からは懸念が表明されている。

9日夜の衝突では、パレスチナ人デモ隊が警察に向かってシュプレヒコールを浴びせ石や瓶を投げつけたため、警察は閃光(せんこう)弾や放水車を使って追い払った。パレスチナの医療関係者によると、デモ参加者少なくとも14名が負傷したという。

今回の衝突はその直前の2回に比べると穏やかな方だった。警察によると、20名以上の警官が最近負傷したという。

しかし、暴力が広がる兆候はあった。

9日深夜にガザ地区のハマス軍事部門がイスラエルに向けて4発のロケット弾を発射し、南部アシュケロン市とその周辺で空襲警報が鳴った、とイスラエル軍が発表した。1発は迎撃され、2発はガザ地区内部で爆発したという。ロケット弾発射に対する報復として、10日未明にイスラエル軍の戦車部隊と砲兵隊が複数のハマス拠点を攻撃した。負傷者が出たとの報告はなかった。

同日のより早い時間帯に、イスラエル軍は別なロケット攻撃への報復としてハマスの拠点に空爆を実施した。ハマス軍事部門の傘下にあるガザの活動家たちも、昼間にイスラエル南部に向け発火装置付き風船を飛ばし、数十件の火災を引き起こした。

一方エルサレムでも、イスラエル警察がヘブライ大学でパレスチナ人学生数百名と衝突し、閃光弾を使って学生たちのデモ隊を追い払った。警察によると、北部ハイファ市では別な抗議活動が起き15名が逮捕されたという。

イスラエルと和平協定を結んだ最初の2カ国であるヨルダンとエジプト両国は、イスラエルの上級外交官を呼び出しイスラエルの行動を強く非難した。

エルサレムにあるイスラム教聖地の管理人を務めるヨルダン国王アブドラ2世は「非はイスラエル側にあり事態をエスカレートさせている」と非難し、イスラエルに「エルサレムへの挑発行為」をやめるよう要請した。

ローマ教皇フランシスコは、エルサレムの状況を懸念していると述べ、衝突を終わらせるよう求めた。

「暴力は暴力しか生みません」と教皇はサンピエトロ広場に集まった信徒たちに語った。

緊張が高まったため、イスラエル最高裁はシェイク・ジャラー地区での立ち退き案件の是非に関する判決を延期した。判決は10日に予定されていたが「状況」を考慮して最大で30日延期された、と裁判所は発表した。

パレスチナ人と国際人権団体は、パレスチナ人立ち退き計画がイスラエル側の作戦の一環だと評している。昔からパレスチナ人が暮らしていた地域、特にエルサレム中心部からパレスチナ人を一掃するためだという。イスラエル側は、今回の立ち退き案件は不動産を巡るトラブルとみなしている。

長期政権を維持してきたネタニヤフ首相が連立政権を作れず、イスラエルの政治的危機が正念場となった時期に、今回の衝突激化が重なった。野党側は現在、新政権を発足させる作業を進めている。野党側の取り組みが成功すれば、ネタニヤフ首相は12年ぶりに野党に転落することになる。

ロイター/ AP

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