
ハゼム・バルーシャ
ガザ地区:数年前にニシンの調理法を学んだアベド・ラッボ・アドワンさんは、ガザ地区南部のラファ市にある自宅でニシンを調理するのが好きだ。
ニシンやフェシクは、食欲を増進させ、1カ月間の断食で疲れた胃腸に効くとされているため、イード・アル・フィトルの初日には、ガザ市民の大半の食卓でメインディッシュとして供される。
その人気は、エジプトとの国境に隣接するガザ地区南部を中心に、パレスチナ人の家庭に広がっている。
アドワンさんによると、家庭でニシンを調理すると安心だし、しかも地元で調理されたものやイスラエルから輸入された市場に出回っているのに比べて、はるかに安くすむという。
さらに、家族もニシンの調理を手伝ってくれるので、ラマダンの最後の日やイードの前には幸せな雰囲気に包まれるという。
長年、ガザの需要を支えてきたイスラエルからのニシンの輸入量が大幅に減少したため、地元の水産業が盛んになっている。地元で作られた燻製1キロの価格は20シェケル(6ドル)で、イスラエルからの輸入品に比べて約半額である。
アドワンさんはまず、サバや冷凍マグロを1キロ買ってきて、魚を洗い、家族の助けを借りて塩漬けにする。その後、コストをかけない元来の方法で燻製にする。
作り方は、まず内臓を取り除き、塩を詰めて24時間放置する。よく洗い、乾燥させた後、オーブンの中で鉄の棒にクリップで垂直に吊るす。木炭とおがくずで着火する。
アドワンさんは炉を持っていないが、鉄製の容器をオーブン代わりに使い、中の魚が燃えたり腐ったりしないように、しっかりと閉めて空気を遮断する。
「魚はこの状態で2時間ほど煙にさらされます。そうすると、魚に煙の味がついて、色も白から黄色、金色に変わります。これで食べられるようになります」と彼は言う。
イードの初日の朝食には、ニシンよりもフェシクを好む家族もいるため、アドワンさんは別の方法で少量のフェシクを作っている。市場に出回っているフェシクは1キロ当たり10〜30シェケルで、空気に触れない場所で約1カ月間保存される。
業者によると、ガザでは大量のニシンとフェシクが生産されており、地元での消費には十分である。機会があれば、ガザはこの魚を輸出することも可能とのことだ。
ガザ地区最大級のニシン工場のオーナーであるイブラヒム・ヘジャジーさんは、7年ほど前に個人的な消費を目的とした少量のニシン生産から始めたという。そのアイデアが発展し、工場を設立して大量生産するようになった。
「そして、多くの人が集まってくれたことに励まされ、工場を拡張し、調理用の特別なオーブンを導入しました。今日、私たちはガザ地区で最も有名な工場となり、生産したものを仲買人や流通業者、店舗に卸しています」とヘジャジーさんは語る。
ヘジャジーさんは他にもパン屋を買収し、ラマダンの最中で仕事が過多になったため従業員を2倍に増やした。彼らは市場のニーズに合わせて、夜も昼も燻製を仕込んでいる。