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歴史は繰り返し続けるが、我々は何を学んだのだろうか?

フランス・パリ市役所前に設置されたコロナウイルス感染症(COVID-19)の検査場で、防護服とマスクを着用し、鼻腔スワブ検査の準備をする医療従事者。(ロイター/ファイル)
フランス・パリ市役所前に設置されたコロナウイルス感染症(COVID-19)の検査場で、防護服とマスクを着用し、鼻腔スワブ検査の準備をする医療従事者。(ロイター/ファイル)
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12 Apr 2022 12:04:56 GMT9

私たちは今、病原体によって引き起こされた経済的混乱を特徴とする歴史のサイクルを経験している。第一次世界大戦の末期やスペイン風邪の流行時に世界が直面した状況を思い起こさせるような状況だ。

あれから100年以上経った今、ここから先、どうなっていくのだろうか。新型コロナウイルスのパンデミックの影響に戦争や経済的ショックが重なった結果、私たちは世界中が様々な課題に直面する新しい歴史のスーパーサイクルの始まりに立っているのかもしれない。

ここに、おそらく、経済サイクル、または振れ幅の歴史的側面を見ることができる。この経済的、政治的エコシステムは技術革新によってもたらされる進化と自己修正の時期をもった長期的な経済サイクルで成り立っており、結果として、長期間の繁栄が見られる。理論上では。

今、私たちは「これまでの時代」の多くの側面が歴史の教科書へと消えていく転換点に立っているのかもしれない。既存の文献はもはや役に立たない。歴史のサイクルを理解するためのモデルは、様々な手法を使う。物理学と歴史学を混ぜ合わせ、批判的思考の「ミキサー」にかけるのだ。結果として、経済サイクルについての3つの異なる方程式が生まれた。どれも因果関係にまつわる要因については明確な答えを出しつつも、重要な要素が抜け落ちている。時間だ。

確かに、サイクル・セグメントの分析が起こる時期は、必要な知性の展開が起こる主要ポイントであり、議論が必要となる。多くの人が理解していないのは、何らかの文書が作成される時、執筆者、または共同執筆者がどのような条件の下で書いたかが次の展開の解釈において重要な役割を果たすということだ。

研究では、世界経済は非常に循環型の性質を持つことが明らかにされている。つまり、好景気と不況の波が交互にやってくるということだ。景気循環には拡大、山、縮小(または不況)、谷の4つの段階があり、その後、新たな循環の始まりとなる拡大がまたやってくる。典型的な景気サイクルは約5年半ほど続くが、1年半という短い期間の場合もあれば、10年以上続く場合もある。

様々なタイプの経済的な出来事が景気の波を引き起こすきっかけとなる。近代の歴史から具体例を挙げると、19世紀後半のアメリカの工業化、第二次世界大戦後のヨーロッパと日本の復興、中国が世界の製造業において台頭してきたことなどがある。

特筆すべきは、第二次世界大戦後に開発された政治経済モデルが、新しい世界経済が出現するという認識によって増強されたことだ。現在の地政学的に無秩序な状況においては、1918年に世界が経験したような、縮小と谷を特徴とする経済サイクルが繰り返されている。ロシアが西側諸国から排斥され、世界経済が二分化しつつあることでこの状況は悪化している。テクノロジーと相互のつながりは、スーパーサイクルの影響を加速させる。つまり、食料安全保障は低下し、経済はより不安定になる。

国際的なシステムのバランスが崩れてきている。ソーシャルメディアと高速で世界中とつながることが可能になったことで、これらの要因の発展は加速している。

テオドール・カラシック博士

2008年の金融危機のように予測されなかった危機の存在は経済過程の理解が不完全である可能性を示唆している。

研究では確かに、商品のスーパーサイクルは経済全体のスーパーサイクルによって変動し、原材料、製造材料、エネルギー源への需要の増加によって維持されていることが示されている。だが、商品セクターは、経済全体に比べても特に循環的な性質がある。供給不足と生産能力が実際に増強されるまでの間に必然的に生じるタイムラグのためだ。需要を満たすのに苦労している商品生産者が新しい鉱山や油田などの開発に着手するのはよくあることだが、完了までには何年もかかるかもしれない。

現在、サイクルが谷に向かいつつある状況を複雑にしているのは、気候変動問題への積極的な取り組みが求められているところだ。だが、低排出ガスを利用した電源や交通手段の移行と工業化からデジタル化への移行を維持していくことが、スーパーサイクルの谷に大きな影響をもたらす可能性があると認識しておくことが重要だ。

広範な市場の推移が、石油、石炭、天然ガスなどの商品にマイナスの影響を与える可能性があるが、タイミングが間違っている。このサイクルにおける商品の重要性は、潜在的可能性という面において、今後やってくる景気の下降期に変化することになるだろう。

地政学的にはゲームはちょうど始まったばかりで、各国は今年中に様々な経済的衰退を経験するだろう。2023年に向けては、製品不足や、おそらく、地政学的環境がより複雑になるなど、荒れた展開になるかもしれない。脅威のレベルは下がるどころか、上がっている。

現在の危険な国際環境は、特に商品に関連してこれらの要因を加速している。この状況は、何十年もかけて発展してきたもので、今後、より大きなショックがやってくることを意味している。たとえば、アメリカは2023年に不況に入ることが予測されている。だが、中国をはじめとする他の国々は、現在、景気ショックに直面している。

つまり、国際的なシステムのバランスが崩れてきているのだ。ソーシャルメディアと高速で世界中とつながることが可能になったことで、これらの要因の発展は加速している。20世紀初頭には存在しなかった要素が、現在の景気サイクルを複雑にしているのだ。

  • テオドール・カラシック博士は、ワシントンDCGulf State Analyticsの上級顧問。Twitter @tkarasik

 

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