
ダウド・クッタブ
フィラデルフィア、米国:米有力紙ボストン・グローブに最近掲載された「米国によるイスラエルへの援助は、和平への原動力となるべきだ」という見出しは、多くの読者を驚かせた。
同紙は5月19日付でそれを、編集委員会による痛烈なコラムの一部として掲載し、こう付け加えた。「最終的には、イスラエルへの援助に条件を付けることを議論すべきではない」
一方、フィラデルフィア・インクワイアラーの主要なコラムニストであるトゥルーディ・ルービン氏は、ハマスとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を同列に置いて、次のように書いた。「パレスチナ人を重要でない存在として扱うことで、ビビは暴力を引き起こした。数百人が殺害され、そのほとんどがパレスチナの民間人だ。そしてイスラエルの町や都市を脅かしている」
大手テレビ局、特にMSNBCやCNNでは、キャスターがイスラエル人のゲストに挑むことが、かつてないほど増えた。一方、米国の主要都市で行われている、パレスチナ人を支援するデモには、大勢の人が参加している。
アフリカ系米国人の活動家、サラ・ナハール氏は、アラブニュースに対し、2015年以降、ブラック・インターナショナリズムが1960年代後半以来の復活を遂げたと話した。
「(ミズーリ州)ファーガソンでの事件以来、多くの黒人主導の組織がパレスチナを訪れ、どのような状況かを直接知り、パレスチナとアフリカ系米国人のコミュニティをネットワークで結んだ」と同氏は話した。
ナハール氏は、マーク・ラモント・ヒルの近著『Between Palestine』について、以前はパレスチナ以外の全ての世界の解放の問題を支持していた、米国の進歩主義者たちを震撼させていると指摘した。
しかし今、考え方は変わりつつある。バーニー・サンダース米上院議員はニューヨーク・タイムズに、パレスチナ人の権利を支持する記事を寄稿した。ニューヨークの進歩的なアレクサンドリア・オカシオコルテス、パレスチナ系米国人の民主党員、ラシダ・タリーブらを筆頭とする下院議員のグループは、パレスチナ人を明確に支持することをためらっていない。
ドナルド・トランプ氏の時代には、パレスチナに関して米国の政治勢力の中に分裂が生じた。
中東研究所のパレスチナ・プログラムの上級研究員兼所長、ハレド・エルギンディ氏は、パレスチナに関する米国の世論に変化が起きており、それが政治にも浸透しているということに同意した。
「民主党の中で現在、分裂が生じていて、パレスチナ人の権利やイスラエルによる人権侵害について、よりはっきり意見を述べようとする進歩派と、昔ながらの親イスラエル派がいる」と同氏は話した。「(ジョー・)バイデン(大統領)は、後者の中でも最も保守的な立場を取っているようだ」
しかしエルジンディ氏はこう警告した。「この変化は、実際の政策の変化にはつながっていない。とは言え、イスラエルへの援助に条件を付けるというアイデアのように、以前は受け入れられなかったことに関して、久しぶりに議論が始まっている」
米国の駐シリア・イスラエル・エジプト大使を務めたダン・クルツァー氏は、アラブニュースに対し、2014年とは状況が変わったと話した。
「あの紛争は、厳密にはイスラエルとハマスの紛争で、イスラエルによる封鎖と、停戦の維持に対するハマスの責任に関する見解の相違から起きたものだった。今回の紛争は、エルサレムやシェイク・ジャラー、『現状』、ハラム・シャリーフの神聖さをめぐるものだ。よって、停戦はエルサレム問題に取り組むための第一歩に過ぎない」とクルツァー氏は話した。
米国の人口動態の変化が影響を及ぼしているようだ。
アラブ・アメリカン研究所のジェームス・ゾグビー所長は、アラブニュースに対し、米国の変化はこの30年に起きたもので、人口動態と相関関係にあると話した。
「民主党側には、黒人、ラテン系、アジア系、若者、教育を受けた女性がいる。共和党側には、白人、中産階級、高卒者、『生まれ変わった』キリスト教徒がいる。国内外の多くの問題に関して、この2つのグループはそれぞれを反映する見解を持っている。その隔たりは広がっており、広がり続けるだろう」
しかし、テクノロジーがより大きな役割を果たしていると主張する人もいる。
パレスチナ首相府の広報責任者だったジャマル・ダジャニ氏は、アラブニュースに対し、こう話した。テクノロジーのおかげでパレスチナ人はより容易に、携帯電話のカメラやソーシャルメディアのプラットフォームを使って、自分たちが苦しんでいる画像をリアルタイムで共有できるようになった。
同氏はこう話した。「米国だけでなく、世界中の多くの人々が、ニュースを知るのに企業や主要メディアを当てにしなくなった今、イスラエルは以前のように物語をコントロールすることができなくなっている。4月27日にヒューマン・ライツ・ウォッチのレポートが発表され、イスラエルのアパルトヘイトの実態が明らかになったことも、人々の気持ちを変化させる一助となった」
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の外交政策研究所の非常駐フェローだったファディ・エルサラミン氏は、アラブニュースに対し、親パレスチナ派と反ネタニヤフ派が融合し、パレスチナとイスラエルの力関係を変える必要性について合意したのは、今回が初めてだと話した。
「問題は残っている。次に何が起きるのか、そして、この融合が現地での実際の政治的変化につながるのか、ということだ」と同氏は話した。