
エルサレム:長らく首相を務めたベンヤミン・ネタニヤフ氏は14日、ナフタリ・ベネット新首相に権力を明け渡した。しかし少数政党の寄せ集めでモザイク状態の新政権が、ユダヤ民族主義者が計画するデモ行進を巡りパレスチナとの緊張に直面するなか、対決姿勢を崩していない。
ベネット新首相との会談の数分後、ネタニヤフ氏は13日に議会で60対59の僅差で承認された新政権を打倒するとの誓いを新たにした。
12 年連続でイスラエル歴代最長の政権を率いたネタニヤフ氏(71 歳)は、党首を務める右派政党「リクード」の所属議員たちに向けた公開発言で「人々が思うより早く時が来る」と述べた。
右派・中道・左派・アラブ系の諸政党による連立政権が発足したが、打倒ネタニヤフ以外に共通する目標はないに等しい。このため3月23日に2年間で4度目の総選挙が実施された後、連立政権発足に向けた協議は難航していた。
ベネット氏が首相官邸入りする際には祝杯を交わす慣例を破り、ネタニヤフ氏は政権引き継ぎのためひっそりと会談を開いた。ベネット氏は極右政党「ヤミナ」の党首で、以前は国防相を務めていた。
政治問題コメンテーターのヨッシ・ベルター氏は、左派寄り新聞「ハアレツ」に記事を寄せ「酸っぱく、不機嫌で、威厳がない – 最後の瞬間までアメリカのトランプ元大統領のような態度だ」と綴った。
新政権は発足前からすでに、ユダヤ民族主義者が15日に計画しているエルサレム旧市街のイスラム地区を通るルートのデモ行進を承認するか否かを巡り、慎重を要する決断を迫られている。
パレスチナ側の各派閥はデモ行進に対抗し「怒りをもって抗議する」よう訴えている。係争地エルサレムでは先月、アル・アクサモスク周辺や、パレスチナ人がユダヤ人入植者から裁判で立ち退きを迫られている地区で、イスラエル警察との衝突が発生したばかりだ。
パレスチナ自治政府のムハンマド・シュタイエ首相は「今回のデモ行進はパレスチナ人に対する挑発行為であり、エルサレムやイスラム教の聖地に対する侵略的行為だ」と述べた。
ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」は、イスラエル軍との11日間に及ぶ戦闘が停戦してから1か月も経たぬうちにデモ行進が許可されるのなら、戦闘が再開する可能性もあると警告した。
ロイター通信