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事前予想を上回る自民の安定多数確保で岸田首相が基盤固める

党本部で当選確実となった候補の名前にバラを付ける自民党総裁の岸田首相(右から3番目)と党幹部ら。2021年10月31日。(写真/AP)
党本部で当選確実となった候補の名前にバラを付ける自民党総裁の岸田首相(右から3番目)と党幹部ら。2021年10月31日。(写真/AP)
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01 Nov 2021 03:11:08 GMT9
01 Nov 2021 03:11:08 GMT9

岸田文雄首相は「新しい資本主義」による経済再生を訴えている。資本主義に邁進してきた日本で、首相の政策が真に意味するところをめぐり多くの議論が交わされている。

岸田首相は世界第3位の経済力を持つ日本が停滞から抜け出すためには、富のより公平な分配が必要だとの考えを示している。言葉の響きは魅力的だが、アナリストらは首相が劇的な変化をもたらすことはないとみている。

戦後ほぼ一貫して与党の地位にある、親米で財界寄りの保守政党である自民党が10月31日の衆議院選挙で、事前予想を上回る261議席を獲得した。過半数の233議席を大きく超える安定多数で、岸田首相は国民から当面の信任を得た形だ。

「与党が過半数を獲得できた。政権運営、国会運営にしっかりと生かしていきたい」と1カ月前に自民党総裁に選出されたばかりの岸田首相は述べた。

最近になって感染者数が減少するまで、政府の新型コロナ対策や長年に渡る汚職疑惑、成長を加速するための抜本的改革の見通しを示せないことなどへの不満が渦巻いていたにもかかわらず、自民党は存在感を示せない野党に対し勝利を収めた。

岸田首相は過去10年間の市場重視の政策から大きく転換することはないとみられている。2012年後半から2020年半ばまで政権を維持した安倍晋三元首相の下、大規模金融緩和と政府支出により、日本経済は何とか前進してきた。安倍氏の後任の菅義偉氏も「アベノミクス」を継承した。

そして、国民は今「キシダノミクス」の行方を探っている。

「私にはキシダノミクスはまだ全く謎のままです」と静岡在住のフリーランサー、桑原氏はいう。

そして、国民が真に解決を求めている課題は新型コロナウイルス対策と上層部の汚職疑惑だと指摘した。

「おそらく岸田首相自身も計画の詳細は固めていないのではないか」と第一生命経済研究所主席エコノミストの熊野英生氏は推測する。
「今、明らかになっているのはスローガンでしかなく、信頼性や実現性は未知数です」

岸田首相が取り組みを予定している最重要施策は、新型コロナ危機から回復するための更なる大規模な財政出動だ。4~6月期の実質(季節調整済)GDP成長率は年率換算で1.9%と、パンデミックによる2020年の大幅な落ち込みを踏まえると、勢いがない。

就任時、岸田首相は金融所得課税の強化が拡大する格差の是正につながるとの考えを示していた。貧富の格差は統計的には米国の方が日本より深刻だが、OECDのデータによれば享受できる社会福祉プログラムは米国の方が充実している。つまり、貧困問題は日本で深刻さを増しつつあり、特にシングルマザーは生活苦に陥りやすい。

株価が数日に渡り下落したことを受けて、岸田首相は増税案の当面撤回を表明した。日本の逆進的税制の是正に役立つとされる金融所得課税強化について、経済成長が軌道に乗るまで先送りするとした。

そして今度は、安倍政権も実施した法人減税措置による経済成長策を導入する意向を示した。減税を通じて企業に賃上げを促す古典的な「トリクルダウン」戦略だ。

しかし、このアプローチは企業が内部留保を溜め込んだため、失敗に終わった。さらには、労働者に占めるパートや非正規雇用の割合が増加している。また、フルタイムで働く共働き世帯には税制上の不利がある。

戦後の高度経済成長期、労働者は生涯に渡る雇用が約束されていた。「終身雇用」が失われつつあることで、自由な転職と新たに挑戦できる機会、そしてスキルの獲得が必要となる。

消費拡大のための賃上げ以外に、日本の持続可能な成長に真に必要とされるのは規制緩和と雇用の流動化だと専門家は指摘している。これは困難で政治的にリスクのある政策だ。そのような変化には既得権益を揺さぶる改革が必要なため、農家や大企業など自民党の長期政権を支えてきた有権者の怒りを買う可能性がある。

現行の制度はイノベーションを起こせない、生産性の低い守旧的な企業を保護し利するものだ。

この点は今回の衆院選のニュースで大きく取り上げられることはなかった。野党は現金給付や減税を掲げて選挙戦を戦い、自民党は新型コロナ研究、カーボンニュートラル、水素エネルギー、原発再稼働などの支出を拡大することなどを掲げ、社会的なセーフティネットの向上や富の再分配については取り上げていない。

「岸田首相の政策の詳細は明らかになっていませんが、『アベノミクス』と大差ないものだと思います」と明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏はいう。

そのうえで「今、掲げられているのは政策リストです。日本が成長から取り残され、イノベーションが起きない理由について確かな分析が行われなければ、そして病の原因が特定されなければ、治療することは不可能です」と訴えた。

AP

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