
ラマッラー:パレスチナ自治政府(PA)が18日、イスラエルから有効期限切れに比較的近い新型コロナワクチンを受け取るという合意を、イスラエルからの初回提供分ワクチンの有効期限が決められたものよりも近かったためキャンセルした、と同自治政府の保健相が明らかにした。
キャンセルされた合意は、イスラエルとパレスチナ自治政府が同じ18日に発表したばかりのもので、その内容はパレスチナ政府が、イスラエルに対し今年後半に相応の数量のワクチンを提供するのと交換に、イスラエルから最大140万回分のファイザー・ビオンテック製の新型コロナワクチンを受け取る、というものだった。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相のオフィスは、合意を発表した声明の中で、「有効期限切れが近づいている」ワクチンをパレスチナに提供していくと述べていた。
パレスチナ自治政府は、こうしたワクチンの受け取りは、占領下のヨルダン川西岸地区およびガザ地区での「ワクチンの接種プロセスを加速するために承認された」ものだとしている。
パレスチナ自治政府のマイ・アルカイラ保健相は18日午後、記者団に対し「イスラエル側は当初ワクチンの有効期限は7月か8月だと話しており、その期限ならば接種に十分な時間が残っているわけです」と語った。
「しかし、実際に届いたワクチンの有効期限は6月まででした。6月では十分な接種ができませんので、私たちは受け取りを拒否することにしました」と同保健相は説明している。
パレスチナ自治政府の報道官によると、同自治政府はこの有効期限の問題により合意をキャンセルし、初回提供の約90,000回分ワクチンをイスラエルにすでに返送したとのことである。
イスラエル側、ベネット首相のオフィスはコメントの要請に現時点では応じていない。
人権団体はイスラエルを、新型コロナワクチン接種を自国内では世界最速のペースで進めたにもかかわらず、1967年の第三次中東戦争で占領したヨルダン川西岸とガザ地区のパレスチナ人に対しては、ワクチン接種に向けた十分な努力を行っていないと批判してきている。
イスラエル当局は、オスロ合意に基づき、パレスチナ自治政府が制限付きではあれ自治権を持っているガザ地区およびヨルダン川西岸地区の一部に住む人々へのワクチン接種を行う責任は、同自治政府の保健省にあると主張している。
ワクチン交換の合意は、長く権力の座にあったベンヤミン・ネタニヤフ前首相に代わって13日に就任したばかりのベネット新首相による、対パレスチナの最初の諸政策の1つだった。
イスラエルでは、有資格の国民の約55%がワクチン接種を完全に済ませている。この数字は、今月有資格枠を年齢12歳から15歳までも含むように拡大してからも、ほとんど代わっていない。
パレスチナの当局筋によると、合わせて520万人の人口を抱えるヨルダン川西岸とガザ地区において、パレスチナ人のワクチン接種有資格者のうち約30%は、ワクチン接種を少なくとも1回はすでに受けているとのことだ。
パレスチナ政策調査研究所が15日に発表した世論調査によると、パレスチナ人の40%はワクチンが接種可能になれば接種を受けたいと考えている一方、35%は自身も家族もワクチン接種を受けたくないと考えているという。
パレスチナはこれまで、イスラエル、ロシア、中国、アラブ首長国連邦、およびワクチン共有の世界的取り組み、COVAXイニシアチブからワクチンの供給を受けている。
ロイター