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2周年を迎えたサウジ・グリーン・イニシアティブはいかに野心を行動に移してきたか

サウジ・グリーン・イニシアティブの一環として、サウジアラビアは100億本の植樹を目指している。(提供写真)
サウジ・グリーン・イニシアティブの一環として、サウジアラビアは100億本の植樹を目指している。(提供写真)
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29 Mar 2023 06:03:13 GMT9
29 Mar 2023 06:03:13 GMT9
  • SGI発足2周年は持続可能な未来への道における節目と見られている
  • 2周年を迎えたSGIはよりグリーンな未来を切り開く社会全体の取り組みとして祝福されている

ラワン・ラドワン

ジェッダ:サウジアラビアといえば、見渡す限り砂丘がうねるように続く風景を思い浮かべるかもしれない。そのようなイメージは、アラビア半島内の辺鄙な地域の一部についてなら現実からそれほど遠くない。

しかし、この広大な土地と広がる都市部によく目を向けると、密林から緑豊かな街の公園まで、広大な緑地がこの国の顔を変えつつあることに驚かされる人が多いだろう。

2年前、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は世界で最も重要な気候イニシアティブの一つを立ち上げた。環境保護、エネルギー移行、持続可能性プログラムを統合しつつ生活の質を高めることを目指すものだ。

リヤドの緑地。(RCRC)

複数の機関の協力による野心的構想「サウジ・グリーン・イニシアティブ(SGI)」は、この度2周年を迎えたが、既にいくつかの重要なマイルストーンを達成している。

サウジアラビア全土に100億本の植樹を行うという目標についてはこれまでに1800万本が完了しており、大きな一歩が踏み出されている。

荒廃地4000万ヘクタールの再生という目標については、これまでに6万ヘクタールが再生された。また、持続可能な植樹のために国内60ヶ所以上が確保されている。

歴史的に、自然保護活動のためのリソースの大半は野生地で住民が少ないとされる地域に投入されてきた。これらの「手つかずの」地域の保全は多くの理由から重要なことだ。

しかし、熱波や異常気象の年間発生件数が顕著に増加しているため、科学者や都市プランナーは都市部に注意を向け、回復力のある環境作りのための新たな戦略を立てている。

サウジアラビアでは数十年前から、急速な都市化、そして各地で持続可能な開発がなされていないことにより、大気汚染、気温上昇、深刻な砂嵐などの有害な副作用が生じている。

その結果、都市部のヒートアイランド現象が増加している。自然の地面が少なく、建物や舗装道路など熱を吸収し保持する表面が密集した都市で起こる現象だ。

南京大学とイェール大学の科学者らが2002年から2021年の世界2000都市以上の衛星データを分析したところ、都市部の気温は10年で日中0.56℃、夜間0.43℃のペースで上昇していることが明らかになった。

また、気温上昇を都市部と農村部で比較したところ、都市部の上昇ペースが農村部より平均29%速いことが分かった。

このデータは、野心を高め都市化を進める全ての国に対して警鐘を鳴らすものであるはずだ。

近年、気候科学者、経済学者、エネルギーシステム設計者から成る国際チームが、今後100年で国際社会、人口動態、経済がどのように変化していくかを研究するための様々な「経路」を新たに構築している。

「共通社会経済経路」と総称されるこれらは、気候政策が行われない場合に世界がどのような道筋を辿るのか、また異なるレベルの気候変動緩和がどのように実現されるかを5つの異なる方法によって分析するものだ。

「G20気候リスクアトラス」によると、サウジアラビアは高排出経路を辿れば気候変動から深刻な影響を受けることになる。緊急に対策しなければ、同国では2050年までに農業干ばつの頻度が88%増加するという。

熱波も長引くようになり、海面上昇、海岸侵食、より極端な気象災害が相まってサウジアラビア経済は混乱に陥ると予測されている。対策を行わなければ2050年までにGDPの約12.2%を失うことになるという。

「気候変動知識ポータル」のシミュレーションのデータ分析では、サウジアラビアにおける今後数十年の気温上昇が歴然としている。

しかし、植林に伴う冷却効果の程度の違いによって局所的な地表温度が変わり、低下する場合もあることも研究で明らかになっている。

サウジアラビアは政府機関、民間部門、地域社会の間の協力を通して気温上昇に大きな影響を与えるべく取り組んでいる。

都市部の植物を増やし気候変動の影響を軽減するため、SGI傘下で77のイニシアティブやプログラムが始動している。

都市村落住宅省が立ち上げた「グリーン・サウジ・シティーズ」イニシアティブは、首都リヤドの公共の公園や庭園に最大3200万本の植樹を行うという目標を掲げている。

三段階で実行されるこのイニシアティブでは、リヤドで437.5平方メートルの土地の緑化を目指す新たなプロジェクトが実施される。2031年までに完了する予定だ。

リヤドでは他にも大規模な刷新が行われる。「グリーン・リヤド」プロジェクトにおいて、2030年までに750万本の植樹を行って緑地の割合をリヤドの総面積の9%に増やすという目標が掲げられているのだ。

これらの取り組みの中核として、「キング・サルマン・パーク」の建設作業が進められている。これは世界最大の都市公園プロジェクトで、総面積16.6立方キロメートルのうち11立方キロメートルが100万本以上の木の緑地で覆われることになっている。

同様に、「グリーン・キブラ」プロジェクトは聖都メッカに1500万本の植樹を行うという目標を掲げている。メッカ市・聖地王立委員会が主導するこのプロジェクトは2036年までの完了を予定している。

「グリーン・リヤド」プログラムの活動の一環として植林プロジェクトの最初の苗の植樹に参加する、同プログラムのディレクター、アブドルアジーズ・アル・モクベル氏。2023年3月16日(木)、アル・ジャジーラ地区(リヤド東部)。(提供写真)

持続可能性を向上させ、都市緑化プロジェクトや植林イニシアティブが目指すのと同様のプラス効果をもたらすための有効な手段としては他に、再生可能エネルギーと電気自動車(EV)の利用がある。

運輸、エネルギー生産、廃棄物発生など二酸化炭素を大量に排出する人間活動を転換するための取り組みが各都市で進んでおり、現在15万世帯が再生可能エネルギーを利用している。

先月、西部の都市ジェッダでサウジアラビア初のEV公共バスが運行を開始した。研究によると、再生可能エネルギーを利用する電動公共交通機関の導入により、2030年までに二酸化炭素排出量を2億5000万トン削減し、公衆衛生を改善し、騒音や大気汚染を軽減することができる。

公共交通局のルマイフ・アル・ルマイフ局長代行はアラブニュースに対し次のように語る。「タクシーや公共交通機関に代替手段を使用することに取り組んでいます。サウジビジョン2030の目標である二酸化炭素排出量削減のために代替手段を使用するべく様々なテストを行っているのです。クリーンエネルギーで交通機関の二酸化炭素排出量を45%削減することが目標です」

サウジアラビアの変革と歩調を合わせて環境や野生動物の保護が進んでいる。(NCW)

2018年に欧州環境機関が発表した報告書「ライフサイクルと循環型経済の観点から見た電気自動車」は、EVはガソリン車やディーゼル車よりも温室効果ガス排出量が17~30%少ないとしている。

この報告書はEUのエネルギー構成(原油を含む石油製品、天然ガス、再生可能エネルギー、原子力、固体化石燃料)を使用したEVについて言及しているが、EVは街路レベルでの排気ガスがゼロであるため局所的な大気質を改善できることも指摘している。

そのような代替手段を使用しても、数世紀前にアラビア半島に広がっていた湖や草原を取り戻せるわけではない。しかし、植樹は気候危機対策や生物多様性回復のための最も有効な手段の一つであると広く謳われている。

サウジアラビアの政府機関、企業、地域社会はいずれも、この国をよりグリーンにするためだけでなく、より健全な生態系を作り全体的な生活の質を向上させるために、大規模な植樹イニシアティブを推進することを約束している。

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