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経済危機によりレバノン人の生活に広がる暴力

レバノンには国の福祉制度がないのも同然で、自国の経済が混乱する中、高齢者は置き去りにされ、自力で何とかやっていくしかない。(APフォト/Hassan Ammar)
レバノンには国の福祉制度がないのも同然で、自国の経済が混乱する中、高齢者は置き去りにされ、自力で何とかやっていくしかない。(APフォト/Hassan Ammar)
2021年6月5日、レバノンのバトラウンでレモネードを買うために待っている人々。2021年6月5日撮影の写真。(ロイター)
2021年6月5日、レバノンのバトラウンでレモネードを買うために待っている人々。2021年6月5日撮影の写真。(ロイター)
レバノンの自家発電機の所有者は、国の経済危機が深刻になるにつれて、燃料不足のせいで自分たちの電気が止まることを警戒していた。(AFP)
レバノンの自家発電機の所有者は、国の経済危機が深刻になるにつれて、燃料不足のせいで自分たちの電気が止まることを警戒していた。(AFP)
2021年6月21日、経済崩壊が進行する中、深刻なガソリン不足のために、ベイルート近郊の沿岸高速道路のバラマンド地区にあるガソリンスタンドに車両が列をなしている。(AFP/JOSEPH EID)
2021年6月21日、経済崩壊が進行する中、深刻なガソリン不足のために、ベイルート近郊の沿岸高速道路のバラマンド地区にあるガソリンスタンドに車両が列をなしている。(AFP/JOSEPH EID)
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25 Jun 2021 05:06:26 GMT9
25 Jun 2021 05:06:26 GMT9
  • ガソリンスタンドで最初にタンクを満たすのは誰かをめぐって市民が衝突し、殴り合いが発砲にまでエスカレート

ナジア・ホウサリ

ベイルート:国家の深刻な経済危機や治安の崩壊により、レバノン人の日常生活に暴力が広がり、ガソリンスタンドではケンカや発砲まで起こっている。

世界銀行によると、レバノンで現在進行している経済危機は、過去150年以上における世界最悪3位内に入る可能性があるとしている。

燃料や薬などの必需品が不足しているだけでなく、砂糖や酵母に対する政府補助金の終了により、パン屋オーナー組合が商品価格を引き上げたため、パンの価格も上昇している。

市民はガソリンスタンドで列をなして何時間も待ち続けた挙げ句に、誰のタンクを最初に満たすのかをめぐって衝突し、殴り合いが発砲にまでエスカレートしている。

人々は絶望し、自らの命を絶ったり、自分の稼ぎの道具を破壊したりしている。

25歳の青年マシューは、ケセルワン地区の自宅のアパートで首を吊った。バールベックに暮らす男性も、膨らんだ借金のために自分の店舗で自殺しようとした。ベイルートの通りで豆を売っていた商人は、カート撤去の命令を受けた後、たったひとつの生活手段である自分のカートに火を付けた。

新政権の樹立をめぐり政治的膠着状態が続く中、市民の生活環境は大幅に悪化している。サアド・ハリーリ次期首相とミシェル・アウン大統領との間で、新政権には誰が参加し、どのような任務を担うべきかなどについて対立している。

ハリーリ氏は昨年10月、新政権樹立のために次期首相に任命されたが、まだ政権発足には至っていない。昨年の8月4日にベイルートで起こった大爆発により、200人以上が死亡し、数千人が負傷した。それから数日後、ハッサン・ディアブ首相の内閣は総辞職した。

ある活動家は国の当局者に狙いを定め、ツイッター上に次のような声明を出した。「お前たちはレバノンをジャングルに変えてしまい、ガソリンスタンドでは市民を凶悪犯のなすがままにした。お前たちは生活のあらゆる場面で、市民に辱めを与え続けている。しかし、レバノン人には抗議すべき相手が存在しない。よって、我々が、ガソリンスタンドでの銃撃の現場を神の手に委ねたのだ。すべて例外なく、責任は国の当局者にある」。

 

ベイルート南部の郊外の住人は、日常生活の隅々にまで広がる混乱と暴力に対処できる治安は、もはや存在しないと語った。「近年、ヒズボラやアマル運動とベイルート南部郊外の治安を分担している公的な治安部隊は、公的な治安機関がすべてをカバーするのは不可能なので、近隣の住人もガソリンスタンドの安全確保に参加するよう、責任者に要請しています」と、住人が匿名を条件にアラブニュースに語った。

住人はまた、自己防衛が必要な地域はベイルート南部の郊外に限定されておらず、ベイルート、そしてアイン・エル=レマネやファーン・エル=チェバクなど他の近隣地区に拡大されていると付け加えた。

レバノンの燃料販売業者とガソリンスタンドの組合の代表であるファディ・アブ・シャクラ氏は、新たな危険性の進展について、

「ガソリンスタンドの警備を請け負っていると自称する者の中には、恐喝を行うものがいます」と、アラブニュースに語った。

「ガソリンスタンド前での暴動や攻撃には、もうこれ以上耐えられません。140以上あるガソリンスタンドのオーナーは、恐喝や暴行にさらされているのに、自分の身を守ることができないため、会社からのガソリンを受け取るのを拒否しました」。

彼がガソリンスタンドを守るために治安機関に要請したのも、「ただ自分の仕事をしようとして」いたからだ、と語った。

しかし、元司法警察署長のアンワール・ヤヒヤ准将は、内務省警察軍がガソリンスタンド前の「公共の秩序の確保」まで責任は負わない、と述べた。「これは地方自治体の責任の範囲内であり、これを規定する法律も存在します」と、アラブニュースに語った。「しかし、地方自治体もまた、低予算で苦しんでいます。一部の関係者が特定の地方自治体に関与しており、このような事態においても自治体を支援している。しかし、そういった個別の関係者が公的な治安部隊よりも大きな影響力を持っている場合、国家の地位が低下する事態になる」。

さらに、経済危機がレバノンの軍事力にも影響を及ぼしている、と言う。国際社会がレバノン軍を支援するために協力しているのは、レバノンにおける事件の重圧でレバノン軍が「崩壊」することへの「恐れの表現」である、と語った。

治安機関は、補助金を受けた物資をシリアに密輸した者の追跡や、社会や食の安全に危害を加えたとして逮捕された人物について、毎日報告書を提出している。

治安の分野に39年間携わってきたヤイヤ氏は、市民は国の機関が保護してくれることを期待しており、軍隊が「究極の救済」であることに変わりはない、と語った。

「国民は飢えているのだから、早期に政権を樹立することが最も重要です」と、付け加えた。

そして、新しい政府ができるまでは、自己防衛こそ個人が果たすべき主な役目である、と強調した。「市民ができる予防策として、戸や窓の鍵をかける、近隣の安全確保の原則を守る、そして緊急時には警察に連絡するなどがあります」。

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