


エフレム・コサイフィ
ニューヨーク:命を救う援助を心底必要としている数百万人のシリア人が生き延びるには、安全保障理事会の団結が極めて重要だ。国連のシリア担当特使は25日に述べた。
「アクセスの維持・拡大が絶対に欠かせない。国境や境界線を越える活動を含む」とゲイル・ペダーセン氏は安保理のメンバー15人に話した。
西側の理事国が、シリアでの支援活動の権限の更新をめぐって、ロシアと中国(両国とも常任理事国で拒否権を持つ)との最終的決着に向かっているとみられるため、同氏は発言した。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は23日、安保理のメンバーに対し、国境を越えてシリアを支援する仕組みを更新しなければ、戦争で荒廃したシリア全土の民間人に「壊滅的な結果」をもたらすことになると警告した。
国境を越える権限の付与は前回、2014年に承認された。4つの国境検問所が対象だった。ロシアと中国が昨年、4つの検問所全ての更新に反対した結果、3つの検問所が閉鎖された。まだ使われているのは、トルコとの国境に接しているバブ・アル・ハワ検問所だけだ。この国境検問所の権限は7月10日に期限が切れるので、それ以降も運営を続けるには、安全保障理事会の投票がうまくいく必要がある。
「もう1年、命を救うためには、大規模な、国境を越えた対応が不可欠だ」とペダーセン氏は安保理のメンバーに話した。
国連の推定では、シリア全土で1300万人以上の人々が、生き延びるために人道支援を必要としている。
ロシアは、国際的な支援活動はシリアの主権および領土の保全を侵害すると主張している。ロシアのバシリー・ネベンジャ国連大使は越境支援の必要性を「時代錯誤」だとして一蹴した。
同氏によると、ロシアは当初、この仕組みを受け入れていたという。シリアは「(当時)テロリストによって引き裂かれていた」からだ。シリアは「解放」されており、北部への支援は全てダマスカスを経由すべきだ、と同氏は主張している。
ネベンジャ氏は、シリアで人道的状況が悪化しているのは、西側諸国の「違法な経済制裁」のせいだとした。
「これは、経済的苦境を利用してシリアの合法的な当局を追放しようする継続的な試みだ、と我々は考えている」と同氏は付け加えた。
会議では中国の代表も、シリアの経済問題は、西側諸国が一方的に課した制裁に起因すると非難した。彼は制裁の解除を求めると同時に、「シリアに政権交代をもたらす計画は、完全に破棄されければならない」と警告した。彼はまた、安保理に対し、人道支援を政治的プロセスから切り離すよう求めた。
しかし、先日バブ・アル・ハワ国境検問所を訪れたリンダ・トマスグリーンフィールド米国連大使は、「悲惨な人道的危機は政治状況に直接影響を与えている」と述べた。
同氏は、国境検問所は「数百万人のシリア人にとって、文字通りの生命線」だと述べ、国境検問所を再び認可するよう安保理に求めた。バブ・アル・サラムとアル・ヤルビヤにある他の2つの国境検問所の再開も求めた。ロシアと中国が国境を越える権限の更新を拒否し続ければ、政治状況はさらに悪化する、と同氏は警告した。
「越境支援をやめたら、この地域はさらに不安定になり、非難する国内避難民が増えるだろう」とトマスグリーンフィールド氏は述べた。
「私が国境を訪れたとき、避難民、NGOの代表、国連の人道支援担当者、現地の専門家など、全員が明らかに訴えた——越境支援の代替手段はない。全くない」
米国はアサド政権に利益をもたらす再建支援を常態化させたり、支援したりすることはない、と同氏は重ねて強調した。
フランスの常任委員であるニコラ・ド・リビエール氏は、シリア国民を「アサド政権の善意に委ねずに、「(決議)第2254号の核心」に立ち返るよう安保理に嘆願した。
2018年12月に採択された決議第2254号は、即時停戦、憲法改正、「自由で公正な選挙」の実施を求めている。同決議はまた、全拘留者の解放、強制失踪した全ての人々の行方の公表、避難民や難民を尊厳を持って安全に帰還させるための準備をすることを求めている。
ペダーセン特使は、政治トラックで実質的な進展がないことを嘆いており、「当事者間の不信の溝と現地の状況の複雑さ」を残念に思うと述べ、安保理の団結を促した。
「信頼と信用は、言葉ではなく行動によって築かれる 」と同氏は述べた。「キープレーヤーは、必要な善意と提供できるものを持って席に着く準備ができていなければならない」
「具体的な手段について議論するために、我々は、シリアに関する新しい建設的な国際対話を必要としている、と私は考えている。手段は互恵的、相互的で、現実的に正確に限定され、並行して実行され、検証可能でなければならない」