
アラブニュース
ロンドン:BBCは、イランによるペルシャ語放送職員に対する嫌がらせについて、国連に苦情を申し立てた。イギリスの同放送局によると、イランの諜報員はロンドンの職員を誘拐してイランに連れて行くと脅迫しているという。
BBCの法務部は、国連人権理事会(UNHRC)に対し、この問題への対応策を講じるよう求めた。
BBCペルシャ語放送は、イラン人にとって非常に人気のある情報源となっており、同国の人口の約4分の1に相当する推定1800万人の愛読者・リスナー数を誇っている。
昨年3月に実施されたBBCペルシャ語放送の職員102人を対象にした内部調査では、71人が嫌がらせを経験していると回答した。
また、3人に1人は両親のいずれか、あるいは両方がイラン当局による嫌がらせを受けたり、尋問に呼び出されたりした経験があり、半数以上が退職を迫られていると感じていると述べている。
一例として、ある記者は、オンライン・メッセージ・プラットフォームのスカイプを通じて命を狙うという脅迫を受け取り、イランで拘束されている27歳の姉妹の釈放と引き換えに、仕事を辞めるか、同僚をスパイするようにと告げられた。
イラン政府はまた、2017年にBBCペルシャ語放送の職員の資産凍結も行っている。その1年後には、152人の現・元職員全員を「国家安全保障に反する陰謀」の罪で告発し、彼らに対する刑事捜査を開始した。
24日、BBCは国連人権理事会の会合に合わせて、オンライン形式でのサイド・イベントを開催し、イランによるペルシャ語放送のジャーナリストやその他のペルシャ語メディアに対する嫌がらせ活動がエスカレートしていることについての懸念を提起した。
BBCペルシャ語放送の記者であるカスラ・ナジ氏は、このイベントで講演し、自身や同僚、その家族が耐えてきた脅迫やネットハラスメントを吐露した。
同氏は、2020年12月、職員6人の家族がテヘランの諜報部員に呼び出されて尋問を受けたと語った。全員が、ロンドンに住む親族に殺害の脅迫を伝えるように言われたという。
ナジ氏によると、諜報員はパリで活動していたイラン人ジャーナリストのルホラー・ザム氏について一貫して触れていたという。同氏はバグダッドへ渡航するよう仕掛けられ、現地滞在中にイランの諜報員に誘拐され、その著述活動を理由に処刑された。
「恐らく一番ショックだったことは、私たちの命を脅かした諜報員たちが、連絡を取れるようにと、自分たちの電話番号を何ら躊躇することなく手渡したことです。つまり、何のお咎めもなく国の代理人として活動しているのです」と、ナジ氏は語った。
「我々の身に起きていることに光を当てる手助けをしてもらいたいのです。それが我々を守る唯一の方法なのです。私たち、そして家族にとって、声を上げることは生死に係わる問題なのです」。
BBCが最初に苦情を申し立てたのは2018年、全職員に対して刑事訴訟が起こされた時のことだが、職員らは、攻撃が始まったのは、10年以上前、イランが1979年の革命以降最悪の混乱に襲われていた時のことだったと述べている。
嫌がらせ活動が始まったのは2009年、 BBCがイランの「緑の革命」を報じた頃だった。この革命では、数百万人が路上に出て、彼らの言う不正選挙によって強硬派のマフムード・アフマディネジャード氏が大統領の座に就いたことに抗議した。
イラン政府は、不安を掻き立てたとして欧米メディアを非難し、それ以降、BBCペルシャ語放送の職員は、近年エスカレートしている嫌がらせや殺害の脅迫を受けていると述べている。中には、職員が警察の保護を要請した事例もあった。
2019年3月、国連の専門家グループは、イランによる放送局の扱いについて、その行為は国際法に違反しており、「突き詰めると、世界の安全保障に対する深刻な脅威となる」として、非難した。