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「神よこの国を救いたまえ」ハリーリ首相候補が辞退、レバノンの混迷深まる

水曜、大統領宮殿でサアド・ハリーリ首相候補と会談を行ったレバノンのミシェル・アウン大統領。(AP)
水曜、大統領宮殿でサアド・ハリーリ首相候補と会談を行ったレバノンのミシェル・アウン大統領。(AP)
水曜、レバノンのアウン大統領との会談の場に到着したレバノンのサアド・ハリーリ首相候補。(AP)
水曜、レバノンのアウン大統領との会談の場に到着したレバノンのサアド・ハリーリ首相候補。(AP)
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16 Jul 2021 05:07:32 GMT9
16 Jul 2021 05:07:32 GMT9
  • 大統領は24人のメンバーからなる内閣構成を却下
  • レバノンポンドが最安値を記録し、怒る民衆によるデモが拡大

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンのサアド・ハリーリ首相候補は木曜、ミシェル・アウン大統領との「見解の相違」を理由に指名を辞退した。危機状態にある同国の政治的空白は9カ月におよび、今なお組閣が実現していない。

過去24時間で2回目となる大統領との会議を終えたハリーリ氏は、「アウン大統領の立場は変わっていない」と述べた。

両氏は水曜に19回目の会議を開き、ハリーリ氏は内閣の構成メンバー24人を提示した。

「神よこの国を救いたまえ」とハリーリ氏は述べた。「アウン大統領は私が水曜に提示した内閣の構成メンバーについて、キリスト教徒の大臣の指名に関して抜本的な変更を求めた。アウン大統領は我々が合意に達することはできないと述べた」

アウンの大統領府は声明を発表し、ハリーリ氏は「いかなる修正について協議する姿勢がなかった」と述べた。

アウン大統領は、政府を発足させる任務を担う別の人物を選定するための拘束力のある政府議会協議会の日程を可及的速やかに設定すると述べた。

ハリーリ氏の辞退を受けてレバノンポンドは最安値を記録し、ブラックマーケットでは1ドルに対しLBP20,000の値が付いた。

ハリーリ氏の辞職とドル高騰により怒れる民衆の反対デモが発生し、ベイルート、シドン、トリポリ、バアルベクに飛び火した。

レバノン南部ティルスでは、デモ参加者らがレストランやカフェを破壊し、店から客を追い出した。

ベイルートでは道路が閉鎖され、ベイルートアラブ大学に近いエリアでは兵隊との衝突が起き、負傷者が出ている。

トリポリでは、街に繰り出すようメガホンで繰り返し呼びかけが行われた。

アウン大統領が率いる「自由愛国運動」(FPM)と、ハリーリ首相候補率いる「未来運動」の間の政治的不一致や紛争により、アウン大統領とハリーリ首相候補の関係には大きなひずみが生じていた。

政治学者・ライターのハリス・スレイマン博士は、アウン大統領が暫定内閣組閣のための「あらゆる試みを阻害」していたため、今回のレバノンが行き詰まり状態に陥っても驚きはないと述べた。

「アウン大統領はハリーリ氏が政治を率いることを望まず、好きなときに政府を攻撃し阻止できるよう、自身と自身の政党で、拒否権を発動できるいわゆる『妨害する3分の1』の議席を確保したいと考えています」とスレイマン博士はアラブニュースに語った。「ヒズボラなしに自身の党だけで3分の1の議席数を確保したいのです。ヒズボラがFPMの候補ゲブラン・バッシル氏以外の候補を支持した場合に圧力をかけるためです」

「アウン大統領と娘婿のゲブラン・バッシル氏に対抗し、崩壊を阻止できる政府を作れるような、人の尊敬を集めるスンニ派の人物をいま挙げることは難しいです。バッシル氏は自分のために働き、自分の命令を聞く閣僚を求めています」

ベイルートで木曜、サアド・アル・ハリーリ首相候補の組閣断念後、反対デモに配備され盾の後ろに身を潜めるレバノン軍(ロイター、ムハンマド・アザキル)。

外圧によりレバノンが決着に至らなかったことについて、スレイマン博士は「ウィーンでの米・イラン協議が終結するまで、我々は人質のままです。我々が人質にとられているというのに、諸外国はどうして自分で解決しろなどと言えるのでしょう?拉致された者が拉致犯人に対して対抗できるとでも言うのでしょうか?」と付け加えた。

ファレス・スアイド元議員は、アウン大統領がまだ大統領宮殿にいるのは「ヒズボラだけが理由だ」と述べた。

「政治勢力、世論、アラブや国際社会の意思決定者らの間の衝突で、状況は危険どころのレベルでありません」と元議員は付け加えた。

 

米国務省はアントニー・ブリンケン国務長官がレバノンの状況に対応するための取り組みについてフランスのジャン・イブ・ル・ドリアン外相と協議すると述べ、「レバノンの首脳陣は危機を克服するための改革を実行する政府を発足させなければならない」と付け加えた。

ドロシー・シーア米国駐レバノン大使とフランスのアンヌ・グリロ駐レバノン大使は木曜、ブリンケン国務長官とル・ドリアン外相による共同書簡をアウン大統領宛に提出した。書簡では「両国のレバノン問題への関心」および「レバノンが直面する深刻な状況に対応するためすみやかに政府を発足させる必要性」が強調された。

フランスは木曜、レバノンの支援に全力で取り組む姿勢をあらためて表明した一方、情報筋によるとフランスのパトリック・デュレル大統領特使が水曜夜、内閣のヒズボラ派党首のモハメッド・ラアド氏と対談した。

フランス革命記念日の祝賀の最中、グリロ大使はレバノン人に向けて挨拶し、「今年のこの祭典は過去数カ月間にわたり、そして特に2020年8月4日のベイルートの港の爆発事件以降、我々が表明してきた連帯の流れを汲んで開催しています」と述べた。

「私は本日、フランス、フランス国民、そして在レバノンのフランス人は常にみなさんを支援するということを重ねて表明します。現在、非常に緊迫した状況となっています。フランスは常にレバノンへの支持を獲得するよう努めてきました。フランス大統領の主導および国連の支援により、レバノン人民を支援するための第3回国際会議が8月4日に開催されます。フランスからの8千ユーロを含め、レバノンのために2.5億ユーロ(2.9507ドル)の調達を助けた過去2回の会議を経て開催されるこの日の会議は、新たな節目となることでしょう」

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