
ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノン人の女の子ザフラ・トレスさんは、7月30日、サソリに刺されて亡くなった。レバノンでは医薬品が不足しており、家族は治療に使う解毒剤を見つけることができなかった。
現在、治療に必要な薬は闇市で販売されているものの、どれもとんでもなく高額だ。
ラフィーク・ハリーリ公立病院のフィラース・アビヤド院長は、薬不足によって患者を亡くすことは今後日常的になるだろうと述べた。
国民保健局のイスマイル・スッカリー局長は、犬の治療薬でさえ棚から無くなっているとアラブニュースに明かした。
「こうした薬剤は病院、特に公立病院では大量にストックしておくべきですが、不注意や医薬品不足の危機によってなくなっています。」
スッカリー局長は、レバノン市民が「当局の無責任さと、度重なる腐敗した醜聞だらけのお粗末な政策の代償を払っているのです」と述べた。
レバノンは2019年から財政危機に直面しており、世界銀行は「1850年代以降最悪レベルの危機の1つ」としている。「現地通貨のリラは、米ドルに対して90%以上下落し、現在人口の半数以上が極貧生活を送っています。」
レバノン中央銀行(BDL)の外貨準備金の減額により、輸入の与信枠の提供が遅れており、保健部門は増加する圧力と燃料不足に直面している。
レバノンの電力会社エレクトリシテ・デュ・リバン(EDL)も燃料不足の影響で電力を供給できない状態だ。いくつかの地域では、1日22時間の電力配給を受けざるを得なかった。また、自家発電機の所有者もディーゼル・燃料危機の影響で、配給に頼っている状態だ。
7月30日、レバノン中央銀行は、7月の売上高が2億9,300万ドルに達し、さらにガソリンとディーゼルの輸入に4億1,500万ドル、レバノン電力への燃料の輸入に1億2,000万ドルの販売を承認し、合計で8億2,800万ドルに達したと発表した。
レバノン中央銀行は声明の中で「(銀行は)あらゆる支援を行い、社会保障を維持しようとしているが、レバノン市民は今もディーゼル不足に直面している」と述べた。
また「レバノン市民は援助物資を入手できなくなっており、現在その物資は闇市場で販売されている。これはレバノン人にとって屈辱的であり、最も基本的な権利が奪われている。闇市場での販売を目的として商品の密輸や保管を行う業者がいるため、保健部門や食料安全保障に深刻な影響を及ぼしている」という。
さらには、レバノンの医薬品や医療用品の輸入業者らは「輸入業者が抱える未払い金の全額を」レバノン中央銀行に要求しているという。同銀行は「浅はかな対策によって75%の企業の輸入が一部または完全に停止している」としている。
エレクトリシテ・デュ・リバンは「この状況が続けば危険なレベルに陥り、電力は完全に停止する恐れがある」と警告した。
経済学者のルイ・オベイカ氏はアラブニュースに次のように語った。「レバノン中央銀行に対して支払準備金を使用させようとする政治的・経済的圧力があります。しかし、これに関しては憲法改正が必要で、このような『罪』は二度と犯してはなりません。」
オベイカ氏は、5月にハッサン・ディアブ暫定首相が述べた「2002年にレバノン銀行の準備金が減少し、10億ドルを下回った」という発言を思い起こしていた。
オベイカ氏は言う。「補助金を廃止すれば密輸はなくなりますが、価格は大幅に上昇するでしょう。代わりに配給カードが配布されることになっていました。このカードはどうなったでしょう?今後の経済の見通しがつかない中、支払い準備金を浪費すれば銀行や預金は今後大損害を受ける恐れがあります。」
「(レバノンの)政治マフィアや経済マフィアは国家よりも強く、彼らに怖いものはありません。レバノン社会は分裂、崩壊しており、マフィアを脅かすことはないでしょう。」
一方、レバノンの政治指導者らは、8月1日の「レバノン軍の日」に先がけて軍を祝福した。
ミシェル・アウン大統領は「レバノン軍を支援するという国際社会の決意とコミットメントには、レバノンとレバノンの憲法上の組織を守るうえで軍が果たす役割に対する信頼が込められている」と述べた。
7月31日、軍はベッカー県ホルターラの麻薬工場を急襲した。
軍司令部は「今回の襲撃で兵士1名が負傷した。また、市民に対する強盗、誘拐、車の窃盗、麻薬取引および使用、(銃所持)など複数の逮捕状が出ていた指名手配犯を殺害した」と発表。他の逃亡者数名も逮捕された。
レバノン陸軍司令官のジョセフ・アウン将軍は「貧困を利用して自分の国や組織への信用を失わせるような人間を許すな」と兵士らに呼びかけた。