レバノン、アルアイン:16日早朝、イランのディーゼル燃料を積載したタンクローリーの車列が、シリアとの国境を越えてレバノンへ入った。この配送は、危機に見舞われたレバノンの壊滅的な燃料不足を緩和しようと、ヒズボラ武装組織が手配したものだ。
配送は、3年前に当時のドナルド・トランプ米大統領がイランと世界列強国との間で締結された核合意を離脱した後、米国がイランに科してきた制裁に違反するものだ。
これは、資金繰りに苦しむレバノン政府が何ヵ月も燃料不足に苦慮してきた一方で、ヒズボラがその後ろ盾となるイランからの燃料供給に乗り出して勝利したという図式になった。
「米国を始めとする外国包囲網を破ったことになり、我々にとって、これは非常に大きなことだ。……我々は神の力と我々の偉大な母であるイランの力を借りて取り組んでいるのだ」と、東部の町アルアインを通ってきたタンクローリーの車列を出迎えるために集まった人々のひとりであるヒズボラ支持者のナビハ・イドリス氏は述べた。
ヒズボラは、2019年10月に始まったレバノンの経済破綻の原因の一端は、レバノンにおける同組織の勢力や影響力を削ぐために米国が課した非公式な包囲網にあるとの見解を示してきた。米国は、政権をまたいでヒズボラに制裁を科している。
レバノンの危機は、何十年にも及ぶ支配層の汚職と失政、そして利益供与と縁故主義を土壌として蔓延る党派ベースの政治システムに根差している。深刻な燃料不足が国を麻痺させ、病院やパン屋の営業を中断させるほどの壊滅的な電力不足を招いている。人々はガソリンを得るためだけに、「屈辱の列」と通称される列に何時間も並ばなければならない。
ヒズボラ指導者サイード・ハッサン・ナスラッラー氏は1ヵ月前に、この危機を緩和するために、イランがレバノンに燃料を送ってくれると発表していた。ヒズボラが発注した最初のイランの石油タンカーが、12日にシリアのバニアス港に到着し、ディーゼル燃料は一旦シリアの貯蔵所に荷下ろしされた後、陸路を通って16日にタンクローリーでレバノンに運ばれた。車列は、シリアのクサイルにある非公式な国境検問所を通過してきた。
ナスラッラー氏は今週初めにテレビのスピーチで、レバノン当局の面目を潰したり、レバノンが制裁を科されたりするリスクを避けるために、タンカーは直接レバノンで積み荷を降ろすことをしなかったと述べた。
反対勢力から度々国家の中に国家を運営していると非難され、シリアの内戦にも政府軍側に協力して参加してきたヒズボラは、レバノンとシリアとの国境沿いに、正式な検問所とは別に独自の検問所を構えている。
イランの燃料が16日に配送されたことについて、これまでのところレバノンや米国の政府関係者は何らコメントを発していない。
AP