
・ガソリンスタンドの外には行列ができ、紛争は物理的暴力に発展
・ガソリンを入れたい車の所有者の代わりに車の中にいることで最大10万ポンドを稼ぐ待機業者も出現
ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノン北部のミニエに住むシリア人難民が土曜、闇市での給油作業中に車からガソリンを吸い上げた際、誤って大量のガソリンを飲み込み死亡した。病院に搬送されたが助からなかったという。
ディニーアの救済団体連合会の代表であるアブドルラフマン・ダルウィーシュ氏によると、この男性は闇市で取引をしていたということだ。
レバノンはここ数ヶ月、深刻な燃料危機に見舞われている。
ダルウィーシュ氏はアラブニュースに対し、「彼はガソリンスタンドに日参し、何時間も並んでは40リットルのガソリンを入手し、それを自分の車から出して、闇市で列に並びたくない人々に高値で売っていた」と述べた。「危機のせいで闇市が活発化している。レバノンは深刻な経済危機に陥っており、若者、レバノン市民、シリア難民は職を失っている。彼らは自分の家族の食料、薬、ミルクなどを入手すべく、何とかして稼ごうとし、闇市を絶好の機会だととらえている。」
ある治安関係者がアラブニュースに語ったところでは、当局はこの数週間で北部の強盗率が低下したことを確認した。闇市は非常に儲かるため、凶悪犯は窃盗よりも闇市に集中しているのだという。
「毎日、何十人もの若者がガソリンスタンドの前に集まり、徒党を組んでガソリンを入手し、闇市場で売りさばいている。失業した若者たちは、違法な手段で金を稼ぐ機会を見つけたのだ」と関係者は語る。
経済省が水曜に発表した価格表によれば、燃料はドル為替レートに応じて販売されており、1ドル=14,000ポンドとなっている。
ガソリンスタンドの外には行列ができ、紛争は物理的暴力や発砲にまで発展している。
燃料が市場に出回り、ガソリン価格が自由化されれば、闇市の活動は下火になるのではないかと考えた人々もいた。
しかし、この混乱に乗じた職業も登場している。ガソリンを入れたい車の所有者の代わりに車の中にいることで、最大10万ポンドを稼ぐ待機業者が出現したのだ。
また、夜の間にガソリンスタンドの外で場所を確保し、朝になったら後ろに並んだ人に場所を売る者も出てきた。
燃料販売業者組合の代表であるファディ・アブ・シャクラ氏によれば、月曜に燃料が入手可能になり、輸入も続いていることから、行列は短くなってきたようだという。
彼はアラブニュースに対し。「我々を手こずらせた闇市商人の活動は下火になりそうだ」と語った。
レバノンの財源は枯渇しており、2019年には経済危機が頂点に達し、数百の企業が閉鎖し数千名の従業員が解雇されるなど、完全な経済破綻に陥った。
中央統計局の最新報告によると、2020年の失業率は非正規雇用者で55%、正規雇用者で45%にまで上昇した。
大学生の失業率は35.7%となり、アッカール、中央ベッカ、アレイでは失業率が最高値を記録した。
国際労働機関は、「2021年に入り、最も恵まれないレバノン市民やシリア難民における危機と非正規雇用の失業率は更に悪化した」と指摘している。
労働省の推計によると、2020年には失業率が約36%にまで上昇しており、更に2021年末には41.4%に達することが予想されている。
国家社会保障基金の2020年始~2021年2月の統計では、同基金に登録されていた4万人が労働市場から姿を消した。
ダルウィーシュ氏は、「レバノンのシリア難民は経済危機の影響を大きく受けた。薬を買い、医者に行くために配給食料を売っている難民もいる」と述べた。